【サンライズ・メカニック列伝】
ドラグナー2型(『機甲戦記ドラグナー』より)
2022.01.17
サンライズ・メカニック列伝 ドラグナー2型【BANDAI SPIRITS】 月刊ホビージャパン2022年2月号(12月25日発売)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回はBlu-ray BOX化に続いてHG D-1の発売も決定し、俄然盛り上がりを見せる『機甲戦記ドラグナー』から、試作攻撃型メタルアーマー(MA)「ドラグナー2型」の1/144作例をお届けしよう!
ドラグナー2型、通称D-2は、中長距離砲戦用のMAである。2門の280mmレールキャノンを中心とした強大な火力と、最大450mm厚の重装甲を誇り、専用フライトユニット「リフター2」を装備することで大気圏内の飛行も可能。燃焼剤と冷却剤の積載量が多いことからD-1、D-3の約2倍の航続距離を持ち、その戦闘行動範囲は極めて広いものとなっている。
作例は田仲正樹が私物のキット4セットと、さらに武器セットも投入して製作。重量級の機体らしさを表現すべくキットのフォルムを根本から見直し、部品の形状を可能な限り活かしながら全身のバランスを調整。文字どおりの徹底工作作例をご覧いただこう。
[製作途中状態]
キットは他のD兵器と同型のムーバブル・フレームである設定を重視したのか、設定画のD-1と同様の、脚が長くスマートなフォルムとなっている。また発売後35年を経た目で見ると可動機構の古さやモールドの甘さも気になるところだ。作例は可動機構の刷新、パーツのシャープ化を行うとともに、「重戦車的な設計思想による、重装甲支援機体」であるD-2ならではのフォルムを再現すべく、普段の倍近い製作期間を費やして全身のバランスを調整し続けたもの。一方で特に脚部や背部ユニット等においては、キットに敬意を表して部品形状を最大限に活かしていることが、製作途中状態から確認できるだろう
[頭部]
ブロックごとに分割してそれぞれを少しずつ削り込み、微妙に小型化。フェイス部を後ハメ化した。カメラカバーはHGジムのゴーグルを加工してクリアー化している。「目つきを細くすると、タップのイメージと離れた悪人顔になってしまうので、そうならないように注意しています」とのこと
[腕部]
肩装甲は十字に幅増しして大型化。胴体との接続部には30 MINUTES MISSIONSアルトの同部位パーツを仕込んでいる。上腕外装はエポパテを盛りつけ、前腕はキット2セットを使って一体成型の予備弾倉を別パーツ化しつつ1.5mm延長し、それぞれボリュームアップ。ヒジ関節はHGジェガンのものに交換。手首関節はボールジョイント化し、拳はHGBC次元ビルドナックルズ(丸)およびHGムーンガンダムの拳と、キットのパーツを組み合わせて加工したものに交換した
[脚部]
やや細く感じたため、太モモは1.5mm、スネは0.5mm接着面で幅増し。これを基準に全身のバランスを変更した。太モモ上部は横ロール機構を追加。ヒザ関節と足首関節にはHGザク(THE ORIGIN版)のものを加工して組み込み、保持力と接地性能を向上させている。スネ装甲はヒザと足首のカバー、アサルトナイフの束をいったん切り離し、整形後に再接着してシャープ化。足首はつま先、甲、かかとに分割し、靴裏ディテールの再現、シリンダーの作り直し、面出しを行った後に再接着。「かかとだけでも後ハメ化しておくと塗装が多少は楽になります」とのこと。脚部ロケット弾ランチャーは「機甲戦記ドラグナー武器セット」から。ふくらはぎ内部とランチャー側にそれぞれネオジム磁石を内蔵させ、脱着可能とした
[リフター2]
キットの基本形状を活かして製作。フチは削り込んで薄く加工。翼を折り畳むヒンジはポリ部品を入れて保持力を上げつつ翼を後ハメ化。インテーク部の裏面にはブロック玩具を接着、ノズルは分割位置を変更して、それぞれ後ハメ化している
[胴体]
胸部は横幅を2mm広げてボリュームアップ。首と肩関節には、頭部位置の微調整とレールガンの両手持ちができるようにHG(UC)ガンダムEz-8のものを移植。コックピットは適当な円筒パーツ、側面パイプはスプリングで作り直し。腰部は胸部から切り離し、適当なボールジョイントで接続。股関節にEz-8のものを組み込みつつ、前面と側面にプラ板を積層して削り込みボリュームアップ。側面の装甲は切り離してポリキャップで接続し、プラ板とエポパテで面構成を変更しつつ大型化した
[背部ユニット]
基本形状はほぼキットのまま。リフター2はブロック玩具で接続した75mm連装自動砲を外して装着する。この交換作業をしやすくするためにネオジム磁石で本体より取り外し可能としている。レールキャノン基部は市販のロールスイングジョイントに交換して砲身を後ハメ化。砲身は肉抜きを埋めてディテールを追加し、最後部にはジョイント隠しのパーツを接着した。各推進器には適当なバーニアパーツを埋め込み、深さを出している
[武装]
88mmハンドレールガンLPS7型は薄さが気になるため、2挺を貼り合わせて元の1.5倍に幅増し。銃口部は市販の角型バーニアパーツでディテールアップ。グリップはHGザク・マリナーのサブロック・ガンのものを加工し取り付けた。さらに背部ユニット下部のクレーンに懸架した状態を再現するために、ネオジム磁石を使い脱着できるものを同様にもう1挺製作している。2連ガトリング砲はBB弾発射ギミックをオミット。不要となる穴やスリット類をふさぎ、銃身をHG(UC)グフ・カスタムのものと交換した。銃口が7つあるのに対し銃身は6本(キットの元のモールドは8本)だが、それほど気にしなくてもいいだろう
■当たると痛いが敢えて当たりに行こう
CDプレーヤーを65年後までタイマーとして使い続けようと思っているサンライズメカファンのみなさんは、HGドラグナー1発売の報を聞いて狂喜乱舞したことと思います。「待望のキャバリアー0のプラキット化があるかも!」「フレームを流用したD-1カスタムや、D兵器3体の揃い踏みも、ひょっとしたら…!」等と夢想しているのも楽しいのですが、じつはこの「新キットが出るかもしれないし出ないかもしれない」瞬間というのは、いつか形にしてやろうと積んでおいた旧キットに決着をつける、大変良い機会でもあるのです。
さて、そんなわけで今回製作するのはドラグナー2型。『機動戦士ガンダム』のガンキャノンのポジションにあたる、大砲を背負った重装甲の機体です。搭乗者であるタップの「気は優しくて力持ちの、頼れるヤツ」という印象(改めて観直すと実際はそうでもなかったりしますが)も相まって、私はどちらかというとガッシリとした力強い体型をイメージするのですが、キットはD-1に似た脚が長くスマートな体型。これは「各D兵器のフレームは同一のもので、外装だけ違う」という設定を踏まえて設計されたためと思われます。決して悪くはないのですが、本作例では各部にボリュームがある、力強いD-2に変えてみようと思います。
まず脚部の形状が(少し細いけど)なかなか良いので、幅増しした太モモとスネを基準として、これに合わせて機体各部の形状を調整していくことにします。特に胴体のボリュームが不足気味に思えるので、胸部と腰部に分割したのちにそれぞれを大型化し、これに合わせて腕部もボリュームアップ。…文章にするとこれだけですが、「一応できたが気に入らなくて壊し、作り直してはまた壊す」を2ヵ月間繰り返していました。いわゆる腹部がないデザインということもあり、バランス良く作るのが難しいのです。ポイントとなるのは肩幅の広さと胸部の体積を増やす際のさじ加減でしょう。これと同時に各部品を「ブロックごとに分割し、整形後に再接着」をしてシャープ化。可動部はほぼすべてを近年のHGキットの関節に交換して、保持力を向上させています。
■1機だけ青いのがいいのです
バンダイ刊「METAL ARMOR DRAGONARモデル&デザイン集」に掲載のカラー画稿を参考に塗装。他のD兵器のような白(明るいグレー)をメインにしたオリジナルの配色で塗るのも面白そうですが、『ガンダムZZ』における百式のようにちょっと違う感じの機体が混ざることでチ-ムにメリハリがつくので、並べて飾る場合はおなじみの色にするのが良いんでしょうね。
本体色=コバルトブルー+純色バイオレットに本体赤、クールホワイト、フレームのグレー、黒を各少量入れた自作青紫系グレー
赤=モンザレッド+ハーマンレッドにピンク少量
ムーバブル・フレーム=自作の青緑系グレー
ハンドレールガンは自作の緑系グレー。レールキャノン砲身は自作の紫系グレー。エナメル塗料でスミ入れ後に「2」のテトロンシールを貼り(裏面にゴミがついて1枚がダメになっていたので左側面だけ)、半光沢とツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートして終了です。
次回も第1話から登場した大砲メカの作例でお会いしましょう。
BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット
XD-02「ドラグナー2型」リフター装備タイプ
製作・文/田仲正樹
ⓒ創通・サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
大砲を背負ったアンキロサウルス型ゾイドのデザインで「第5回X-DAY」に参加し、横山宏先生に賞をいただきました。