HOME記事ガンダム【0083特集】解説:戦後抹消された「最強のMS」開発プロジェクト ガンダム開発計画とは?

【0083特集】解説:戦後抹消された「最強のMS」開発プロジェクト
ガンダム開発計画とは?

2022.01.08

ガンダム開発計画とは? 月刊ホビージャパン2022年2月号(12月25日発売)

ガンダム0083 星屑 アニメカット

 もっとも高性能なMS開発を目指しながらも、歴史の闇へと葬り去られた「ガンダム開発計画」。最強のMSをコンセプトに掲げ、さまざまなアプローチで開発されたガンダムたちは、直接的な系譜こそ残すことはできなかったが、のちのMS開発に大きな影響を与えた。あらためてガンダム開発計画の目的と、同プロジェクトが残した機体たちを振り返ってみよう。(解説/河合宏之)

●ガンダム開発計画の起こり

 一年戦争後、地球連邦軍がジオン公国との戦闘において被った損害や戦力の増強、軍組織の改編は急務であった。それらの山積みとなった問題点を解決すべく、U.C.0081年10月13日、「連邦軍再建計画」が連邦議会において可決される。その中に組み込まれていたのが「ガンダム開発計画」であり、計画の目的は「最強のMS(モビルスーツ)」の開発と、それを軸とした戦略の確立にあった。
 「ガンダム」とは、言うまでもなく一年戦争において伝説となったRX-78-2ガンダムの機体名である。だが単一機種の名称という枠組みを超えて、すでに「ガンダム」とは高性能MSを表す言葉となり、その後の宇宙世紀においてもこの風潮は変わることなかった。

●ジオンとの技術格差

 言うまでもなく一年戦争は「MSの戦争」であった。ジオン公国が開発した初の戦闘用MSザクとミノフスキー粒子の登場によって、それまでの戦争のスタイルは一変したといってよい。実際に一年戦争の勝敗を左右したのもMSの力であり、地球連邦軍もジムの開発があと数ヵ月遅れていれば、さらなる被害の拡大を生んだ可能性もある。そして一年戦争後も、MSが兵器としてのスタンダードとなることは明らかといえ、兵器開発の流れが「優秀なMSが戦場を制する」という結論に至ったとしても不思議ではなかった。
 だが戦後、ジオン公国が有していた技術が明らかになると、その技術格差は連邦軍上層部に衝撃を与えることになる。ただちにジオン公国軍が保有していた研究施設の接収や、実際にザク等の機体を使用した作戦行動を実施することによって、ジオン系MS技術を解析。ここで得られたデータが「ガンダム開発計画」の礎となった。

●アナハイム・エレクトロニクス社の台頭

 U.C.0081年10月20日、「ガンダム開発計画」は連邦軍内部の工廠ではなく、アナハイム・エレクトロニクス社(アナハイム社)が正式に担当することとなった。MSを中心とした新時代の戦術体系の核となるガンダムの開発を、外部に委託することは異例中の異例だ。
 その背景としては、連邦軍がいまだに戦後の混乱から脱しきれておらず、組織的にも設備的にも円滑に新型機の開発を進められる状況にはなかったこと。また民間企業であるアナハイム社は一年戦争においても致命的なダメージを負うことなく、さらにジオン公国の最大MS開発メーカーであるジオニック社のスタッフ、施設を吸収していたことも後押しした。
 つまりアナハイム社は、連邦系技術とジオン系技術の融合、そして最高性能のMSの開発をスムーズに行う場として、うってつけだったのである。一説に外部委託を推進したのはガンダム開発計画の責任者であるジョン・コーウェン中将とされているのが、真実かは定かではない。

●異なる技術によるガンダムへのアプローチ

 実際にガンダムの開発を担当することになったのは、アナハイム社内部のMS開発チームである先進開発事業部、通称「クラブ・ワークス」と、旧ジオニック社のMS開発者から構成される「第2研究事業部」であった。
 両部署は協力して1機を作り上げるのではなく、それぞれが異なる「最強のMS」の答えを、GPシリーズとして送り出した。まずクラブ・ワークスが担当したのは、一年戦争最強のMS、RX-78-2ガンダムの正常進化型といえるRX-78GP01ガンダム試作1号機。優れた汎用性を持つガンダム・連邦軍機体を受け継ぎ、次世代の主力MSへの発展をも考慮されたと考えられる機体といえる。空間戦闘用装備を排除し、換装用オプションに置き換えることで、RX-78-2よりも汎用性は低下したものの、逆に割り切った設計を行うことで、地上・宇宙の両エリアで優れた性能を発揮した。
 一方、第2研究事業部が送り出したRX-78GP02Aガンダム試作2号機は、ジオン系MSドムの重装甲と突破力を発展させたような重MSで、敵陣深く進攻して拠点を破壊するというMSであった。重装甲タイプとして送り出されたのは、核弾頭を使用するための逆算であり、もっとも強い武器を使える機体=最強のMSという観点から導き出されたコンセプト。すでに南極条約で核弾頭は禁止されていたが、戦後の連邦軍の優位性を維持する意味でも、条約破りの機体は半ば織り込み済みで開発が進められた。

<クラブ・ワークス>

伝説の「最強MS」の継承

・RX-78GP01 ガンダム試作1号機 “ゼフィランサス”

RX-78GP01 ガンダム試作1号機 “ゼフィランサス”
RX-78GP01 ガンダム試作1号機 “ゼフィランサス” アニメカット
RX-78GP01 ガンダム試作1号機 “ゼフィランサス” アニメカット2

 ガンダム開発計画によって誕生した試作型MS。コア・ブロックシステム、教育型コンピュータの搭載など、かつてのRX-78の系譜をダイレクトに受け継ぐ。その性能はガンダムよりも3割近く向上したが、空間戦闘装備を排除していることで、宇宙での運用は空間戦闘用装備への換装が必要である。だが本仕様のまま暗礁宙域付近で出撃し、機体は大破、フォン・ブラウン市でフルバーニアンへとアップデートされた。

・RX-78GP01-Fb ガンダム試作1号機 “フルバーニアン”

RX-78GP01-Fb ガンダム試作1号機 “フルバーニアン”
RX-78GP01-Fb ガンダム試作1号機 “フルバーニアン” アニメカット

 ガンダム試作1号機は、コア・ファイターの変更やパーツ換装で、地上戦・宇宙戦の両仕様に適応する機体だったが、フルバーニアンでは今後の作戦展開を想定し、完全な宇宙戦仕様に改修されている。ブースト・ポッドの装備や各部スラスターの装備により、宇宙空間での機動性や運動性が大幅に向上している。

「最強の機動兵器」を生み出す

・RX-78GP03 ガンダム試作3号機 “デンドロビウム”

RX-78GP03 ガンダム試作3号機 “デンドロビウム”

 ガンダム開発計画で誕生したMAタイプの試作機。コンセプトは最強の機動兵器であり、MSユニットのステイメンとMAタイプのアームドベース・オーキスによるという構造をもち、MSとMAのメリットを併せ持つ機体となった。アームドベース・オーキスは移動型の武器庫といえ、大型のメガ・ビーム砲、大型クロー・アームとビーム・サーベル、ビーム兵器を無効化するIフィールド・ジェネレーター、大型集束ミサイルや各種バズーカを内包したウェポンコンテナを搭載する。

・RX-78GP03S ガンダム試作3号機 “ステイメン”

RX-78GP03S ガンダム試作3号機 “ステイメン”

 オーキスとセットで運用される試作機。オーキスとの合体時には、腕部のアームを展開してフォールディング・バズーカを使用して戦闘に対応。また本機単体でも優れたMSとして運用可能であり、対MS戦が想定される際にはオーキスから分離して戦闘に参加することが可能である。全天周モニター+リニアシートを装備するなど、次世代のMSへつながる技術を感じさせる機体となった。

<第2研究事業部>

コンセプトは「最強の武装」

・RX-78GP02A ガンダム試作2号機 “サイサリス”

RX-78GP02A ガンダム試作2号機 “サイサリス”
RX-78GP02A ガンダム試作2号機 “サイサリス” アニメカット

 ガンダム開発計画によって誕生した試作型MS。最強の武装=核弾頭というコンセプトから、折りたたみ式のアトミック・バズーカを装備。核に耐えうる機体を目指して、重装甲の耐熱・対爆処理が施され、冷却機能装備の大型シールドが用意された。肩部の大型スラスターは、確実に敵陣深く忍び込むための機動力の源となった。要害攻略に特化したため、対MS戦の装備はバルカンとビーム・サーベル程度と貧弱さは否めない。コンペイトウにおいて観艦式の襲撃に成功したが、ガンダム試作1号機フルバーニアンと交戦の末、相討ちとなった。

コンセプト競合に泣いた悲運の機体

・AGX-04 ガーベラ・テトラ

AGX-04 ガーベラ・テトラ
AGX-04 ガーベラ・テトラ アニメカット

 本来はRX-78GP04Gガンダム試作4号機“ガーベラ”として開発されていた試作機。計画から除外されたあとは、ガンダムとしての痕跡を偽装したうえで、シーマ・ガラハウへと譲渡された。ガンダム開発計画から外れた理由としてはガンダム試作1号機とコンセプトが競合することが大きな理由とされている。特に格闘戦能力や白兵戦能力に優れており、オプションとして機動性を高めるシュツルム・ブースターが用意されていた。シーマ・ガラハウの搭乗で「星の屑作戦」に参加した際、ガンダム試作3号機と交戦に陥り、メガ・ビーム砲に貫かれて破壊された。

●デラーズ紛争による機体の消失

 U.C.0083年10月13日、運用試験のため、ガンダム試作1号機、2号機を搭載した強襲揚陸艦アルビオンが連邦軍トリントン基地に到着した。翌日に控えたテストのために、試作2号機にはMk.82核弾頭が搭載される。この運用試験の内容についてはジオン軍残党デラーズ・フリートに筒抜けになっており、スパイの手引きによってアナベル・ガトーが基地に潜入し、2号機の強奪に成功する。偶然、その場に居合わせた連邦軍のテストパイロット、コウ・ウラキは、ガンダム試作1号機で強奪阻止しようとするが、ガトーの逃走を阻止することはできなかった。
 アルビオンは試作1号機を搭載して試作2号機を追撃。だが試作2号機に搭載されていた核弾頭がコンペイトウ(旧宇宙要塞ソロモン)で使用され、連邦軍宇宙艦隊は3分の2以上が航行不能という甚大な被害を受けてしまう。また、核弾頭発射後の2号機を1号機が補足し、交戦状態となった。同じプロジェクトで誕生した兄弟機と呼べる2機は、皮肉にも相打ちとなって爆散した。

●第3のガンダム

 試作1号機、試作2号機に続く第3のGPシリーズ、RX-78GP03ガンダム試作3号機は、前述の2機体とは異なるチーム、プロセスで開発が進められていた。試作3号機が行った最強のMSとしてのアプローチは、一年戦争で猛威を振るった最強の機動兵器、MA(モビルアーマー)の再現である。
 だが、そのままMAの再現を狙ったのではなく、試作3号機は大型武装ユニットであるアームドベース・オーキスと、その内部にMSガンダム試作3号機ステイメンを内包するという、かつてない構造を選択した。
 これは一年戦争でMAの攻撃力を実感しつつも、その反面、汎用性の低さや機動性の問題、運用面のカロリーといったもろさとのトレードオフである、という現実が判明したためだと考えられる。戦況に合わせて不要になった武装ユニットを換装やパージを行う、MS戦ではステイメンで対応するというフレキシブルな運用を目指した試作3号機は、新時代のMAのあるべき姿といえた。
 試作3号機は、デラーズ・フリートが引き起こした「星の屑作戦」のコロニー落としを阻止するため、半ば強引に本機を奪取したアルビオンによって実戦へと投入。コウ・ウラキの搭乗により、アナベル・ガトーの駆るMAノイエ・ジールと激戦を展開した。

ガンダム0083 星屑 アニメカット2
▲アルビオンの独断によるコロニー阻止への作戦行動は、のちに大きな問題を残すことになる

●ガンダム開発計画の抹消

 デラーズ紛争終結後、軍事裁判が開かれ、独断による試作3号機の強奪や命令無視、無断出撃などによって、アルビオン艦長エイパー・シナプスとコウ・ウラキは罪に問われた。だが、デラーズ紛争の要因ともいえる試作2号機の存在が明るみに出ること恐れた地球連邦軍上層部は、ガンダム試作1号機から3号機までのGPシリーズの存在自体を公式記録から抹消。デラーズ・フリートによるコロニー落とし事件も、単なる移送中の事故として処理された。
 戦後もっともハイエンドなMS開発計画といえたガンダム開発計画だが、計画自体の存在が抹消されたことにより、GPシリーズの系譜を受け継ぐ機体は公に存在することはなかった。だが、同計画で培われた技術はムーバブル・フレーム、エネルギーCAP方式のビーム兵器など、以降の時代にも別な形で継承されていくことになる。同計画によって発生した事件の問題点はともかく、MS開発技術の発展という意味において、同計画は確実に重要な役割を果たしたといえる。特にアナハイム・エレクトロニクス社がMS開発のノウハウを蓄積したという点においては、のちのZ計画やUC計画の原点と言っても過言ではないだろう。

ガンダム0083 星屑 アニメカット3
▲デラーズ紛争をきっかけとして、ジオン残党への危険性が再認識され、ジオン残党の掃討を目的としたティターンズの結成へと繋がっていった

ⓒ創通・サンライズ

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