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【『境界戦機』特集】HG メイレスケンブを簡単フィニッシュで完成させる!【哀川和彦】

2021.10.25

成型色を活かした簡単フィニッシュで完成させる!/メイレスケンブ【BANDAI SPIRITS 1/72】 月刊ホビージャパン2021年12月号(10月25日発売)

成型色を活かした簡単フィニッシュで完成させる!

「HG 1/72 メイレスケンブ」を使用して成型色を活かした簡単フィニッシュによる製作法を紹介。短時間でワンランクアップして完成させたい方にオススメだ。月刊ホビージャパン11月号で付録キット「1/144 メイレスケンブ」の全塗装製作を担当した哀川和彦による丁寧な解説をご覧いただこう。

HGケンブ簡単フィニッシュ

主に使用するツール・マテリアル

工作ツール

工具ツール

匠TOOLS極薄ニッパー(グッドスマイルカンパニー)/タミヤセメント(流し込みタイプ)速乾(タミヤ)/Mr.ラインチゼル用替刃(GSIクレオス)/精密ピンバイスD(タミヤ)/L-2ピンバイス+ドリル刃(ミネシマ)/自作ヤスリ(タミヤプラ角棒、またはタミヤ調色スティックにタミヤフィニッシングペーパーを貼り付けたもの)

塗装ツール

塗装ツール

プロコンBOY WAプラチナ0.3 Ver.2 ダブルアクション(GSIクレオス)/Mr.ドレン&ダストキャッチーライト(GSIクレオス)/マスキングテープ各種(タミヤ)/モデルクリーニングブラシ(静電気防止タイプ)(タミヤ)/ピンセット(メーカー不明)/モデリングブラシHG 面相筆 超極細(タミヤ)/エナメル塗料ダークグレイ(タミヤ)/水性ホビーカラー つや消しクリアー(GSIクレオス)/クラフト綿棒各種(タミヤ)

①パーツの切り出し&ゲート処理

ゲート切り離し
▲パーツを切り出すとき1回で切り出すとパーツを傷つけてしまうことがあるので2回に分けて切り出します。まずゲートの根元2~3mmくらい外側をニッパーで切り出します
0.5mmくらい残した
▲二度切りして0.5mmくらい残した状態です。もっと根元まで切ることもできますが、成型色仕上げなので白化や切り過ぎてえぐってしまうことを考えて余裕を持って切り出します
切り出したゲート部をヤスリ掛け
▲切り出したゲート部をヤスリ掛けします。最初に紙ヤスリの600番で残っているゲートを落としたら800→1000(場合によって1200番まで)と少しずつヤスる面積を広げ、周辺との質感をなじませるようにヤスっていきます。極力ゲート部のみをヤスリたいときは3mmプラ棒に紙ヤスリを貼り付けて使用すると便利です
ゲート跡がきれいに消えた
▲ゲート跡がきれいに消えて面も平らになりました。ヤスリ掛けをしていない箇所と若干質感が変わりますが、最後にトップコートで質感を整えるので大丈夫です。これをすべてのパーツに施していきます。作業量は多く大変ですが見た目の印象が段違いになります

②パーティングラインを消してみよう

パーティングライン
▲プラモデルは金型で成型されているため金型の分割ラインに沿って段差や凸部ができてしまいます。これをパーティングラインと言います。写真の上腕部中央にラインがあるので消していきます
3mmプラ棒の600番ヤスリ
調色スティックに紙ヤスリを貼り付けたもの

▲先程のゲート処理と同様に3mmプラ棒の600番ヤスリでラインを消していきます。その後番手とヤスる幅を広げて周辺となじませながら整形していきます。ヤスる幅を広げた際は調色スティックに紙ヤスリを貼り付けたもの使用しました。この辺りは創意工夫なので自分のやりやすい方法を見つけ出してみましょう

パーティングライン処理後
▲きれいにパーティングラインを処理することができました
太モモ付け根とつま先のパ-ティングラインも処理
▲同様に太モモ付け根とつま先のパ-ティングラインも目に付いたので処理しました。最近のプラキットは目立たないところにラインがくるように設計されていますが、処理すると完成度が上がるのでまずは気になった箇所から初めてみましょう

③干渉部を調整しよう

胸部にあるシリンダーは可動式
▲胸部にあるシリンダーは可動式です。今回はシリンダーを部分塗装するのですが、塗装後に可動させると塗膜の厚みぶんパーツ同士が干渉して塗装が剥がれてしまうので干渉部を調整していきます
内側をヤスリで0.1〜0.2mmヤスる
▲シリンダー受け側パーツの内側をヤスリで0.1〜0.2mmヤスってクリアランスを作っていきます。表からは見えないのでヤスリは320〜400番を使用して大丈夫です。ある程度ヤスったらシリンダーを可動させて干渉しないか確認しながら調整していきましょう
クリアランスを確保
▲可動させても干渉しないクリアランスを確保できました。このように塗装するとパーツ同士が干渉してしまう箇所、特にヒジやヒザ関節などを塗装する際は干渉しないか塗膜の厚みを考慮して製作しましょう

④武器持ち手を握り拳に

武器持ち手を使用して握り拳に
▲キット付属のハンドパーツは握り拳がないので武器持ち手を使用して握り拳に差し替えができるようにしていきます
ハンドパーツが付いていたランナータグ
▲ハンドパーツが付いていたランナータグを使用します
タグを切り出し表面にある数字や文字はヤスリで削り取り
▲ランナーからタグを切り出し表面にある数字や文字はヤスリで削り取ります。そうするとハンドパーツと同系色のプラ板になります

切り出したランナータグを接着剤で積層
▲切り出したランナータグを接着剤で積層してヤスリで形を整えると、取り外しができるパーツができ上がります。パーツと同系色なので違和感のない印象になります

素組み

腕部のビフォー

作例

腕部のアフター

▲腕部のビフォーアフター。上腕のパーティングラインを削り落として本来の形状になりました。ハンドパーツは中が埋まったことで、力強く握っているように見えます

⑤丸モールドを開けてみよう

ピンバイスを使用して開口
▲60mm携行機関砲のハンドガードにある丸モールドは設定画では開口しているので、ピンバイスを使用して開口していきます
内側から見ると接続のためのピンとダボがある
穴が開けづらいので取り除いてしまいます

▲丸モールドを内側から見ると接続のためのピンとダボがあります。開口すると見えてしまうのと穴が開けづらいので取り除いてしまいます。穴を開けた際に見えなくなればよいので跡が残っていても大丈夫です

ニードルで中心にアタリを付けピンバイスがずれないようにする
▲丸モールドのサイズは約1.8mmですが、いきなり同サイズのピンバイスで穴を開けようとすると負荷が大きく周辺が白化してしまったり、穴位置がずれてしまうこともあるので慎重に作業をしていきます。まずニードルで中心にアタリを付けピンバイスがずれないようにします
最初は0.7mmのピンバイス

▲パーツに対する負荷が小さく穴位置がずれてしまっても修正できるように、最初は0.7mmのピンバイスで穴を開けていき、少しずつピンバイスのサイズを大きくしていきましょう。もし穴がずれてしまったらピンバイスでずれた方向と逆方向に少し力を入れながら回して修正するか、棒ヤスリなどを使用して修正していきます

穴を開け終わったらヤスリ掛け
穴を開けるだけですがかなり見映えが変わる

▲穴を開け終わったらヤスリ掛けをしてバリを取っていきましょう。モールドは全部で18個あるのでひとつずつ集中して開けていきましょう。同様に銃口も穴を開け直しました。穴を開けるだけですがかなり見映えが変わりますのでオススメの工作です

⑥合わせ目を消してみよう

合わせ目消し
▲携行機関砲の底面と後部中央に合わせ目があります。また、先ほど丸モールドを開けた際に内部接続部を取り除いたので接続が緩くなっていることもあり、接着補強も兼ねて合わせ目消しをしていきます
0.1mmくらいの隙間を開け流し込み接着剤速乾タイプを3回くらい流し込み
2日程度乾燥

▲パーツに0.1mmくらいの隙間を開け流し込み接着剤速乾タイプを3回くらい流し込み、ギュっとパーツ同士を押さえつけます。パーツの側面が溶けたことでムニュっとプラ樹脂が盛り上がってくるのでこの状態で2日程度乾燥させます

プラ樹脂が盛り上がった箇所をヤスリ掛け
▲プラ樹脂が盛り上がった箇所をヤスリ掛けした状態です。今回使用した接着剤は溶剤系接着剤でプラを溶かして溶着させるので、合わせ目をより目立たなくすることができます。接着剤の種類はいろいろあるので用途別に使い分けるとよいでしょう

⑦パーツを洗浄しよう

洗浄
▲今回は部分塗装と最後にトップコートをかけるので、まずパーツに付いた削りカスや手から付着した油分などを洗浄していきます。洗面器など適当な容器に水と食器洗い用の中性洗剤を入れます
歯ブラシで擦り洗い
▲容器に入れたパーツを歯ブラシで擦り洗いしていきます。特にヤスリ掛けをした箇所やパネルラインの溝や凹モールドなどは、削りカスが入り込んでいるので入念に洗いましょう
すすぎ洗い
▲洗浄が終わったら新しい水に入れ替えてすすぎ洗いをします(ザルがあると便利です)。水を捨てる際は小さいパーツを紛失しやすいので注意しましょう
キッチンペーパーで拭く
▲すすぎ洗いが終わったらキッチンペーパーなどでパーツに付着した水をひとつずつ拭き取っていきます。濡れたまま自然乾燥させるとパーツに水跡が残るので、必ずきれいに拭き取りましょう

⑧マスキング塗装をしてみよう

胸部シリンダー塗装
▲胸部シリンダーはカラーリングシールが付属していますが、今回は塗装で仕上げていきます。このパーツは2色で構成されているので、不要な箇所をマスキングテープで覆って塗装していきます
テープが浮き上がってこないように少しずつ巻く
▲マスキングをする境の箇所は斜めになっているため幅広のテープではなく幅の細いテープ(写真は幅3mm)を使用し、テープが浮き上がってこないように少しずつ巻いていきます。小さいテープを貼る際はピンセットを使うと便利です
貼り逃しはないか確認してから塗装
事前に塗装部分が干渉しないように調整

▲塗装直前に再度テープが浮いていないか貼り逃しはないか確認してから塗装していきます。きれいに塗装できました。事前に塗装部分が干渉しないように調整していたので可動させても塗膜が擦れることはありません。他にもシールを貼る箇所があるので、できそうな箇所からチャレンジしてみましょう

⑨カメラの裏を塗装しよう

カメラ部分はクリアーパーツ
カメラ部分はクリアーパーツ

▲カメラ部分はクリアーパーツになっています。このままでもよいのですが、今回は裏側をシルバーで塗装して光を反射するようにしてみます

裏側をシルバーで塗装
▲エアブラシの圧は弱めでフワッと塗料を乗せるようなイメージで塗装していきます。塗料が表側に回らないように吹けば、マスキングしなくても塗装可能です。もし表側に塗料がかかっても綿棒に少量のうすめ液をつけて拭き取ることができます
キラっと光るように
▲裏面を塗装した状態です。透過していた光が裏面のシルバーに反射して見る角度によってキラっと光るようになりました。エアブラシがなければペンタイプのマーカーなどを使用しても同じことができるので試してみてください

⑩直刀を塗装してみよう

超熱振式戦闘直刀
刃以外の部分をマスキングテープでマスキング

▲超熱振式戦闘直刀は成型色の状態では待機時になっていますが、今回は刃を塗装して戦闘時用を再現していきます。まず刃以外の部分をマスキングテープでマスキングします

シルバーを刃全体に均一に吹きつけ
クリアーオレンジを上掛け

▲まずシルバーを刃全体に均一に吹きつけていきます。シルバーが乾いたらクリアーオレンジを上掛けしていきますが、均一ではなく濃淡をつけて吹き重ねていきます。そうすることで温度感を表現できます。クリアーカラーは吹き重ねるほど色が濃くなって透明感がなくなっていくので吹き過ぎに注意しましょう

⑪スミ入れをしてみよう

スミ入れ
エナメル塗料1に対してうすめ液2

▲キットは全身にパネルラインやモールドが施されていますが、そのままでは目立たないのでスミ入れをすることで際立たせていきます。エナメル塗料1に対してうすめ液2くらいで希釈して筆の穂先をパネルラインに乗せていきます。筆はできるだけ細いものを使用するとやりやすいです

はみ出た塗料を拭き取る
▲スミ入れした塗料が乾いたら、筆を置いた際にはみ出た塗料をエナメル塗料用うすめ液を付けた綿棒で拭き取っていきます。拭き取る際は綿棒を一定方向に動かして拭き取っていきます。模型用綿棒は毛羽立ちがなく種類も豊富なので場所によって使い分けるとよいでしょう
ディテールがハッキリして情報量が増えた
▲スミ入れをしたことでディテールがハッキリして情報量が増えました。エナメル塗料は色も豊富で調色もできます。自分好みの色を調色して使用するのもよいでしょう

素組み

脚部のビフォー

作例

脚部のアフター

▲脚部のビフォーアフター。スミ入れによって各部のモールドがよりはっきりと認識できるようになりました。また、ヒジやヒザ、足首など関節部にあるスイッチのような独特なモールドはこの機体のアイコンのようなものとなっており、丁寧に塗り分けることでより『境界戦機』らしいイメージになります

⑫トップコートを吹いてみよう

トップコート
▲全身のツヤを整えるためにトップコートを吹きます。ツヤの種類は光沢・半光沢・ツヤ消しとあります。今回はツヤ消しを使用しますが、カメラのクリアーパーツ・胸部シリンダー・直刀の刃は光沢感を残したいのでマスキングしています
パーツ同士が重なってしまう箇所は分割
ホコリなどを静電気防止ブラシで払い落し

▲パーツ同士が重なってしまう箇所は分割して持ち手に付けていきます。パーツ接続のピンはコート剤がかかると接続がキツくなってしまうのでマスキングしておきましょう。コート剤を吹きつける前にパーツに付着しているホコリなどを静電気防止ブラシで払い落します

1回吹いたら乾かしてツヤの状態を確認
▲コート剤は1回吹いたら乾かしてツヤの状態を確認します。好みにもよりますが、通常2〜3回吹きつけ1時間くらい乾燥させればOKです。トップコートによってプラスチック感がなくなり、全塗装したかのような質感になるのでぜひお試しください

⑬付属のシールを貼ろう

機関砲
▲機関砲のセンサーは付属シールを貼っていきます。トップコート前に貼り付けてコートしてしまうとツヤが消えてしまうので、質感を変えたくない箇所はコート後に貼り付けます
センサーは付属シール
綿棒を押し当ててしっかりと貼り付け

▲傷つけないようピンセットを使い貼り付けていきます。いきなり強く貼り付けるのではなく軽く乗せるように貼り付けて、位置のバランスを確認します。位置がずれていないことを確認したら、綿棒を押し当ててしっかりと貼り付けます

付属シールはサイズもピッタリでメタリック感もある
▲センサーのシールを貼ったことでアクセントにもなり印象が変わりました。付属シールはサイズもピッタリでメタリック感もあるので、ぜひ活用してみてください

完成! HG 1/72 メイレスケンブ!!

 成型色を活かした簡単フィニッシュによる「HG 1/72 メイレスケンブ」が完成。シール再現となっている箇所(一部除く)や成型色でもシールでも再現しきれていない箇所を塗装し、スミ入れを行ったことでキットが本来持っているポテンシャルが引き出されて、より情報密度を高めることができた。

HG 1/72 メイレスケンブ後ろ
HG 1/72 メイレスケンブ
素組み比較後ろ
素組み比較

▲キット素組み(左)との比較。キット形状には手を加えず、部分塗装やスミ入れを行ったことで、元々キットに造形されている各パネルラインやマイナスモールドの存在感が高められているのが確認できる

HG 1/72 メイレスケンブ銃構え
HG 1/72 メイレスケンブ剣構え

▲成型色を活かした製作法なら塗膜剥がれを気にすることなくガシガシとポージングが取れるので、完成後にアクションを楽しみたい方にもオススメだ

素組み/左  作例/右

武器素組み比較
▲武器のビフォーアフター。機関砲の放熱孔開口は精密度が増すのでオススメだ。直刀は待機状態か戦闘時の選択になるので好みで製作しよう

■今回は…
 お手軽に成型色を活かして仕上げていきます。どこに手を加えるとカッコよくなるのだろうというポイントに絞って製作しました。特に握り拳や丸モールドの穴開けはオススメです。一見すると地味な作業が多いですが、大事な基礎でもあるのでぜひチャレンジしてみてください。

■塗装
黄=黄橙色+ホワイト
灰=ジャーマングレー
薄灰=Ex-ホワイト+ニュートラルグレー
 エナメル塗料でスミ入れして、最後に水性ホビーカラー つや消しクリアーでコート。
部分塗装した箇所は付属のセンサーシール以外と太モモ付け根内側や薄灰色部などになります。シールで折り返しのあるものは粘着力が落ちて剥がれてくることもあるので、塗装するとよいでしょう。

■最後に…
 どこまで作り込むか、塗装するかは自由なので自分の気になる箇所から始めてみてください。完成したときは見違える姿になっているはずです!

メイレスケンブ

BANDAI SPIRITS 1/72スケール プラスチックキット“ハイグレード”

メイレスケンブ

製作・解説/哀川和彦

HG 1/72 メイレスケンブ
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●2640円、発売中●1/72、約14cm●プラキット

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🄫2021 SUNRISE BEYOND INC.

哀川和彦(アイカワカズヒコ)

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