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思わぬ誤算から陸自最後のヘリに。AH-64D アパッチ・ロングボウを解説【いまさら聞けないすごいヤツ】

2026.10.16

いまさら聞けないすごいヤツ!!/AH-64D アパッチ・ロングボウ●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2026年11月号(9月25日発売)

 陸上自衛隊 
 AH-64D アパッチ・ロングボウ 

イラスト/大森記詩

 「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。今回は最強部族の名を持つ攻撃ヘリ「AH-64D アパッチ・ロングボウ」をご紹介します。


AH-64D

全高/4.95m
全長/15.47m 
最高速度/約365km/h
航続距離/約500km


航空学校明野駐屯地

AH-64D 側面
AH-64D 上部
AH-64D 正面
AH-64D メインローター

アパッチ族


 「アパッチ」の名は、北米南西部の先住民諸集団に由来する。19世紀には米国やメキシコの軍事的進出に抵抗し、コチーズやジェロニモなどに率いられたアパッチ族は、山岳や荒野を利用した奇襲攻撃で恐れられた。米陸軍はヘリに先住民の部族・指導者名を与える伝統があったが、アパッチ族の「神出鬼没で勇猛な戦士」というイメージが任務内容と合致するため、AH-64に採用されたのである。なお先住民との関係性はアメリカ社会でもデリケートな問題であるが、米陸軍では軍用ヘリ命名の伝統を守り、最近でも新型長距離強襲航空機MV-75「シャイアンⅡ」の命名式には、関連部族の代表者を招いて、部族による祝福儀式まで実施している。


AH-64D アパッチ・ロングボウ

解説/宮永忠将

AH-64D 下部

 ベトナム戦争でAH-1コブラが大活躍したことで、1973年、アメリカ陸軍はソ連軍戦車部隊に対峙できる本格的な攻撃ヘリの開発に着手した。ベルとヒューズの二社が競争試作に参加して、ヒューズのYAH-64が採用された。これがAH-64Aアパッチだ。30mm機関砲に70mmロケット、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルを装備し、夜間の低空侵入・攻撃も可能な、まさに大国の正規軍同士の激突を想定した本格的攻撃ヘリであった。1984年から軍に配備が始まり、その威力は1991年の湾岸戦争で遺憾なく発揮された。
 このアパッチを、センサーやレーダーを中心として、大幅に能力向上を図ったのが、AH-64Dアパッチ・ロングボウだ。両者の最大の識別点は、ローターマスト上に据えられた円盤状のレーダードームだ。内部に収容されたAN/APG-78ロングボウ火器管制レーダーは、天候や環境に左右されず、多数の地上目標を捜索し、その分類や攻撃優先順位まで決定できる。さらにミリ波レーダー誘導のAGM-114Lロングボウ・ヘルファイアは「撃ちっぱなし」攻撃も可能なので、発射後すぐ遮蔽物へ退避できる。またマストトップのレーダーだけを丘や稜線の上に出して索敵し、敵防空網の前に機体を晒す時間を短縮できる。
 「先に見つけ、素早く撃ち、すぐ隠れる」能力を獲得することで、敵に存在を気付かれることなく、スナイパーのような戦いができるようになったのだ。汎用攻撃ヘリとしてのAH-64アパッチの基本コンセプトを継承しながら、各種センサーや火器管制能力を高性能化したという意味では、一年戦争時のジムからジム・スナイパーⅡに進化した関係に近い。

 思わぬ誤算から陸自最後のヘリに 

  陸上自衛隊でも、老朽化するAH-1S対戦車ヘリコプターの後継として、2001年にAH-64Dアパッチ・ロングボウを選定した。当初の調達数は62機で、富士重工業(現SUBARU)による国内ライセンス生産とされたのである。
 ところが、この計画は間もなく行き詰まってしまう。日本の調達計画よりも、米軍仕様機の性能進化が速く、これと足並みを揃えるには、約220億円の追加費用が必要となったからだ。結果、防衛省は費用対効果が低いと判断して、2007年に調達を13機で打ち切った。これでは投資分を回収できない富士重工業が国を訴える事態になるほど行き詰まってしまったのである
 13機のアパッチ・ロングボウは目達原駐屯地の第1戦闘ヘリコプター隊に配備された。現実問題、個々の性能はAH-1Sコブラを圧倒するが、この数では予備機を確保しながら作戦を継続するのは困難である。限定的な戦闘部隊としては機能するものの、全国的なAH-1S更新戦力にはなり得なかった。
 また陸自は後継の攻撃ヘリを選ばず、攻撃ヘリに期待される機能を多用途・攻撃用UAVや偵察用UAVなどへ移管し、現用の攻撃ヘリの用途廃止の方針を決めた。したがってAH-64Dは、陸自が運用する最後の有人攻撃ヘリとなる可能性が高い。


 ハセガワの定番キットであり、傑作キットとして多くのモデラーから好評を博しているのが「1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊”」。アンテナやセンサー、前席用ディスプレイ部品、スティンガー空対空ミサイルランチャー部品などが追加されたボリュームあるキットになっています。

1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊”
1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊” ランナー リベット造形
▲ハセガワ 1/48スケール アパッチの最大の特徴は、表面ディテールの美しさ。細かな凸リベットや繊細な彫刻がすべてのパーツにびっしりと刻まれている
1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊” コックピット
▲コックピットも立体感ある仕上がり。フィギュアも2体付属。ローター基部のディテールも素晴らしい
1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊” ランナー
▲武装は豊富。アパッチの迫力あるシルエットを支える大事な部分だ 
1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊” クリアパーツ
▲ クリアーパーツの窓枠のディテールも素晴らしい。非常に細かなリベットが目を惹く
1/48スケール AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊” 火器管制レーダー
▲ 特徴的な火器管制レーダーも細部まで精密に再現されている

AH-64D アパッチ ロングボウ“陸上自衛隊”

●発売元/ハセガワ●3740円、発売中●1/48、約36.7cm●プラキット


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