HOME記事スケールモデルFACTORY YAMAHA YZR500 '01本格指向で仕上げる2001年版・YZR500

FACTORY YAMAHA YZR500 ’01
本格指向で仕上げる2001年版・YZR500

2021.08.13

ファクトリーヤマハ YZR500'01【タミヤ 1/12】●くろすぴー 月刊ホビージャパン2021年9月号(7月21日発売)

 近年のリリース状況からYZR500のプラキットといえばハセガワのイメージが強いが、2000年代のマシンについてはタミヤが手掛けている(ただし現在は発売休止中)。マックス・ビアッジ搭乗車で知られる2001年版のYZR500を製作したのは、月刊ホビージャパン初登場のくろすぴー。実車再現にこだわった徹底したディテールアップを得意とし、今回のYZR500に関しても時間の許す限り手を入れてもらった。
 こだわるとキリがないし、高レベルで真似するのはなかなか難しいが、作例にほどこされたディテールアップの“着目点”に注目するだけでも、自分が目指したい仕上げのイメージへの足掛かりになるはずだ。

YAMAHA YZR500 ’01

文/川上滋人

 GP500カテゴリーはホンダがビッグバンと呼ばれる位相同爆エンジンを1992年に投入し、扱いやすいエンジン特性による圧倒的パフォーマンスを発揮。この年はウェイン・レイニーがチャンピオン獲得を果たしたものの、ヤマハも同様のファイリングシステムを搭載したエンジンをデビューさせ、全メーカーがビッグバンエンジンとなった。YZRはさらにエンジンと車体データをヨーロッパのコンストラクターに提供。ROCやハリスがフレームを作成し、エントリー台数増を図った。
 しかし、タイトルは94年から5年連続でマイケル・ドゥーハンに奪われ、ヤマハもホンダと同じ一軸V4のビッグバンエンジンを製作し、テストで高評価を得ていたようだが、本番の登場はなかった。
 このマシンはそんな苦戦を強いられる2001年モデル(0WL6)。ハンドリング向上を狙ってエンジン搭載位置を変えるため、Vバンクに関して97年は70度から75度へ、98年に75度から70度と再変更された二軸V型4気筒パワーユニットを搭載。車体ディメンションを前年から変更し、2種類のスイングアーム(ロングとショートタイプ)を用意して戦った。

ファクトリーヤマハ YZR500 '01
扉絵
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
パース1
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
フロント
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
リア
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
パース2
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
カウルなし左サイド
ファクトリーヤマハ YZR500 '01
カウルなし右サイド

製作リスト
・付属ビスは使用せず、それに代わる取り付け方法を検討。基本的にはオスをアルミパイプ、メスを真鍮パイプに置き換え。
・エンジンとエアボックスを切り離す。
・前後ブレーキキャリパーの裏側が再現するためにYZR-M1のものを流用。
・フレーム、スイングアームをプラ板で裏打ち。
・前後アクスルシャフト、スイングアームピボッドシャフトを真鍮パイプに置き換え、併せてロックナットを製作。
・キットのフレーム側ピボッド受け部を削り、プラ板で新たに再現。
・カウルステーがビスの受けも兼ねてかなり太いので、真鍮パイプに置き換える。
・フロントのブレーキマスターシリンダーをM1のパーツに交換。
・リアブレーキマスターシリンダーのフィッティングパーツをプラ板、プラ棒で再現。
・エンジンとチャンバーを繋ぐスプリングを付けるため両方にスプリングフックを再現(プラ板と真鍮線)。
・シリンダーに付くYPVSリンクが再現されていないので、ハセガワYZR500のパーツを加工して流用。
・フレーム前方にYPVSサーボ部を追加(キット付属の使用指示のないパーツ)。併せて左側にモールドされているバッテリーを切り取り移設。
・コンピューター周りの電気配線を再現。
・チェーンプラー、リヤディスクローターのエッチングパーツをM1より流用。
・タンク上のエア抜き部をプラ板で再現。
・ボルトが見える箇所は基本的に金属パーツに置き換え。モールドを削り取り下穴を開けておく。
・チェーンの加工。

キットのフレームとの比較
▲キットのフレームとの比較。プラキットの都合でできている部分を極力削ぎ落し、追加できるものは追加して実物に近い形状を追求
レーシングスタンド
▲実車と同じくホイールを貫通させ、レーシングスタンドも自作。タイヤの形状にもこだわり、パーティングラインを消しながら実車と同じ雰囲気の摩耗も施した
極小ボルト再現
▲この極小ボルトまで金属に置き換えるのは狂気の沙汰ではあるが、効果はあるし満足度も高い
チャンバーアップ
▲ 繊細なチタン表現で仕上げられたチャンバー。スーパークロームシルバーを下地に、スーパーチタン+クリヤーブラウンを薄っすら塗布している

 私のバイク模型製作のコンセプトは、できる限り実車に忠実に車体や機関部を再現することです。そのために実車を観察し(なければ雑誌や画像など)、どんな素材でできているのかを確認します。同じ“黒色”で塗装指示がされていても、それが樹脂なのか金属なのかで塗装方法が変わります。金属だけを見ても、素材(鉄・アルミ・チタン・マグネシウム)、さらに鍛造か鋳造かによっても再現方法が異なります。特にバイクは隠れて見えなくなる箇所があまりないので、ほぼすべてを再現しなくてはなりません。よって、カーモデルと違い、外装の仕上がりより車体のウェイトが圧倒的に高くなります。メカ好きにはこれが堪らないのです。
 レーシングマシンを手軽に見られる人は少ないと思いますが、市販のバイクからでもいろいろな観察ができます。素材だけでなく、ボルトやナット類の形状・取り付け方も参考になります。バイク模型は小さなパーツ多数の集合体です。それをリアルに見せるコツは、ひとつひとつのパーツをていねいに作ることにあると思っています。
 このキットが発売されてすでに20年。精度の高いタミヤ製ですが、現在の目でみるとさすがに厳しい箇所があったりして、でも専用のディテールアップパーツは無いので、ほかのキットのパーツを流用するなどして現在のレベルに近づけるよう製作しました。
 ディテールアップする際には、まずパーツをチェックしながら修正箇所をリストアップすることをオススメします(できるできないは置いといて)。リストアップしたメニューに従い、あとは各パーツごとにていねいに製作していくだけです。

ファクトリーヤマハ YZR500 '01

タミヤ 1/12スケール プラスチックキット

ファクトリーヤマハ YZR500 ’01

製作・文/くろすぴー

ファクトリーヤマハ YZR500 ’01
●発売元/タミヤ●2420円、発売休止中●1/12、約17cm●プラキット

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