PORCHE 935 MARTINI

2021.05.14

ポルシェ 935 マルティーニ【タミヤ 1/12】 月刊ホビージャパン2021年6月号(4月24日発売)

 エッチングパーツとカルトグラフ社製デカール付属で、昨年末に待望の復活を果たした、タミヤの名作キット「1/12 ポルシェ935 マルティーニ」。グループ5マシンらしい、アグレッシブなスタイリングと内部構造を実車さながらのパーツ分割で再現した、タミヤの「1/12 ビッグスケールシリーズ」を代表する1台である。製作は一昨年に「1/12 ポルシェ 934 イェーガーマイスター」、昨年は「1/12 ポルシェ 934 ヴァイラント」を製作した竹内陽亮。竹内氏にとっても1/12スケールポルシェの集大成的作例、じっくりご覧いただきたい。

丁寧なパーツ処理とポイントを絞ったディテールアップが名作キットを引き立てる!

▲ベースとなるキットは40年選手のベテランキットだが、各パーツの合いやパーティングラインの処理、面出しなどの調整を丁寧に行うことで、キット本来の高いポテンシャルを引き出すことができる
▲リアオーバーフェンダーのインテークは実車資料を参考にプラ材で開口部の形状変更を行った
▲フロントカウル上部のスリットは、0.5㎜のプラ材に置き換えることで、薄さとシャープさをアップ
▲ボディを一体で組み上げることで、完成後の取り外しを容易にしたため、見ごたえある内部構造もじっくりと楽しむことができる

▲密度感たっぷりのインテリアもビッグスケールキットの醍醐味。作例では配線の追加や助手席側に取り付けられていた補器類の追加などを行っている

▲キットでは、ヒンジによる開閉が再現されているリアカウルのエンジンフードはヒンジがエンジンに干渉するのを避けるため、ピンによる取り外し式に変更した
▲乳白色の成型色が雰囲気抜群なタンク類を収めたフロント部。タンクの内側から塗装することによる液体表現と、バッテリーなどへの配線を追加している

▲助手席側に設置されていた補器類はプラ材の箱組みで自作したもの

▲シャシーに取り付け前のエンジン。各部の塗り分けや配線などの参考にしていただきたい

▲竹内氏撮影による、圧巻の1/12ポルシェ揃い踏み! 過去作については「934 ヴァイラント」(左)は本誌2020年12月号、「934 イェーガーマイスター」(中央)は本誌2020年4月号掲載の記事をご覧いただきたい

■キットについて
 ご存じの方も多いであろうタミヤの名作「1/12 ポルシェ 935 マルティーニ」。実車同様に、前作キットであるポルシェ934をベースとし、大幅なパーツ変更された内容であります。シャシーやエンジン基部、ボディの基本的な部分は流用されていますが、その他の大部分で形状は変更されており、徹底的なリサーチが伺えます。初版は1977年頃で、何度かの再販がありましたが、再販の度に内容が見直され、デカールの品質やタイヤゴムの質感向上、エッチングパーツの追加等、全体的なパッケージはとても進化しています。今回は前作例である934に続き、実車資料等を元に細部ディテールを見直しつつ製作を進めます。

■ボディ製作
 まずはボディの調整から始めます。フロントカウルにあるスリットは、そのままでは厚みが目立つため、中央の縦軸以外を0.5㎜プラ板に置き換えて薄く表現しておきます。ドア後方の両サイドにあるインテーク部は、さまざまな実車画像を見る限りやや開口が大きく感じたため、プラ材にてわずかに小さく表現。リアウィングと一体となったエンジンフードは、ヒンジがエンジン上部にやや干渉します。そのため今回はヒンジパーツは使わず、接合部にピンを設けることで取り外し式としています。ボディ全体は塗装のことも考慮して、出来る限り一体として接着しておきますが、接着箇所は補強等も考慮して頑丈にしておくこと。これは大型なボディゆえに各所にかかる負担を考えると大切なポイントであります。ドアの調整はボディ製作の最終段階で行います。ドアパーツはヒンジ部分を挟み込むように本体へ接着しますが、この時の位置調整は入念に行うこと。可動はシンプルな構成ですが、歪みやすいので注意が必要ですね。

■シャシー側の製作
 次にシャシー側の製作ですが、すべてのパーツはシャシー本体に設置されるため、まずはこの大型パーツであるシャシー本体を、基本塗装まで仕上げる必要があります。そして、とにかく膨大なパーツ点数を誇る名作キットであることから、製作時のパーツ管理が何より重要。仕上げ段階に応じて各種トレイを用意しておき、パーツの紛失に注意しながら作業を進めます。エンジン関係や内装、足周り、フロント内部等、各ブロックに分け、パーツを確認しては調整、塗装を繰り返すこととなります。今回は各所コード類の追加と助手席側に設置された補器類等を自作して再現しています。

■塗装 デカール
 基本的にMr.カラーを使用して塗装します。サーフェイサーで下地調整のあと、ボディ塗装を開始します。本体色は重みのある#69グランプリホワイトを選択。瓶入りの物と缶スプレータイプの物を併用して塗装します。次に大判のストライプデカールから貼り進めますが、側面からリアフェンダーにかけての部分は分割が複雑であり、接合部の流れが合いません。ここは一度クリアーコートのあと、マスキングしてタッチアップで修正します。濃い青は#322フタロシアニンブルー。赤はガイアカラーの#003ブライトレッド。水色はホワイトをベースに調色した物を使用し、それぞれのラインをマスキングして接合部を修正しています。また、今回の再販ではDUNLOPとShellのロゴデカールが省略されています。ここは別売りの、TABUデザイン製の追加デカールを使用しました。すべてのデカールを貼り終えたらクリアーコートと研磨を数回繰り返して、コンパウンドで磨き上げて仕上げます。コンパウンドは基本的にタミヤ製の3種類「粗目、細目、仕上げ目」を順番に使用しますが、状況によっては、その他のさまざまなコンパウンドも併用しつつ研磨を繰り返します。仕上げ段階で一番大変に感じたのが、ボディ研磨後の窓枠塗装。ここは慎重にマスキングして塗装するのですが、キットのモールドがやや甘いため、事前にスジ彫りをより深く処理しておくことで仕上がりも格段によくなるかと思われます。

■あとがき
 ゴールまでの道のりはとても長く感じますが、ひとつひとつ楽しむ様に続けることが肝心。精密なパーツを順次仕上げて行くのは車体の構造を知る上で、製作を経験した者にしか分からない楽しみでもあります。このあたりは模型製作においての、最上の醍醐味と言えましょう。毎日2~3時間程度の作業として、約5ヵ月。これくらいが、このキットと楽しく向き合える範囲かと思われます。時には忍耐強く続けることも必要ですが、仕上がりは進むほどに感動する場面も多く、手を加えるほどに答えてくれる。この様なキットには、なかなか目にかかることはありません。現在、外出等を控える風潮ではありますが、模型趣味を愛好する者にとっては、さほど困ることはありません。ぜひこの機会にでも、時間をかけて没頭できるキットに、スキルアップも兼ねてチャレンジするのはいかがでしょうか。

タミヤ 1/12スケール プラスチックキット

ポルシェ 935 マルティーニ

製作・文/竹内陽亮

1/12 ポルシェ 935 マルティー二
●発売元/タミヤ●18480円、発売中●1/12、約39.5cm●プラキット

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竹内陽亮(タケウチヨウスケ)

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