HOME記事キャラクターモデル徹底改修でよりTVシリーズの初号機の印象に近づける PG エヴァンゲリオン初号機

徹底改修でよりTVシリーズの初号機の印象に近づける
PG エヴァンゲリオン初号機

2021.07.21

汎用人型決戦兵器人造人間 エヴァンゲリオン初号機【BANDAI SPIRITS】 月刊ホビージャパン2021年9月号(7月21日発売)

徹底改修でよりTVシリーズの初号機の印象に近づける

 特集最初のプロモデラー作例は、TVシリーズよりパーフェクトグレード(以下PG)「エヴァンゲリオン初号機」をお届けしよう。キットは1997年発売のものでバンダイPGシリーズの記念すべき第1弾。2021年6月に再販されたので入手された方もいることだろう。背骨を模したような形状の胴体内部フレームにラバーパーツ、アンビリカルケーブルを介して発光する肩の「EVA-01」マーク、素体頭部やバッテリーコンテナ、そしてキットオリジナル武装である、メカニックデザイナー山下いくと氏デザインによるマゴロク・エクスターミネートソード/カウンター・ソードの付属など、随所に本作に対する情熱がひしひしと伝わる力作である。作例はTV放映当時からのファンである只野☆慶。キットを徹底的に改修し、さらにTVシリーズの初号機のイメージに近づけている。

▲TVシリーズのエヴァンゲリオン初号機は、より猫背で腕をぶらんと前へ、そしてアゴも前に突き出したようなポージングが印象的。今回の作例はこのポージングの徹底再現を主眼に置いた工作を行っている
▲エントリープラグ挿入ギミックはキットのまま。ハッチを開けると内蔵したスプリングによりエントリープラグが射出されるギミック付き

▲肩部ウェポンラックの大幅な形状修正により、プログレッシブナイフ収納ギミックはオミットしたが、カバー開閉ギミックは残し、鞘を開口部に刺すことでナイフの取り出しギミックを差し替えで再現できるようにした

▲マゴロク・エクスターミネート・ソードとカウンターソードは、肩部ウェポンラックの形状を変えてしまったのでソードパレットが取りつかない。鞘を左手に持たせたいところだが幅が広くて断念。バッテリーコンテナは使わないので碍子部分とステーを組み合わせてオリジナルのサブグリップを製作。これで抜刀アクションもできるようになった。刀身はシャープ化して黒グロス塗装⇒ガイアカラープレミアムメッキシルバー⇒こすって銀SUNの3段構えで仕上げた

▲頭部は頭頂部や後方にマジックスカルプ、エポパテ、光硬化パテを盛って形状変更。頭頂部や後方下部をなだらかな曲線で繋げ、ディテールを加えている。目は彫り直し、白目をシンロイヒの蓄光性夜光塗料にて筆塗りで仕上げた

▲肩関節を限界まで前に振り出す改造を加えたうえで、首、胸部外装の形状を変え再構成。ラバーは首から胸まで使用、肩や下半身は不使用。腹部はマジックスカルプで太く、かつ立体的に形状変更。股間の張り出しもより立体的に作り直した
▲肩と股間の関節ボールジョイント基部にはドーナツ状に裁断したスポンジゴムを装着している
▲肩部ウェポンラックは2cmほど短くして再接着。角張った面やディテールを廃して曲面主体の形状に纏めた。肩後方フィン(紫の部分)下部は切り離して上腕側へ移植
▲肩発光ギミックはオミット。クリアーパーツを廃しマーキングは自作のデカールを貼付。フレームのヒジに相当する部分に張り出しを付けたり筋肉に相当する部分にウレタンゴムを加えたりしている。肩の形状が決まってから上腕パーツとラバーパーツを接着し強度を保った
▲握り手各種は彫り直して形を整え、差し替えが必要なものは1mm真鍮線で軸打ち。さらに指の付け根関節部をエポパテで延長している
▲後方の背骨に相当するパーツも一回り大型化し、フレームが隙間から少し見える程度に改修した

▲アンビリカルケーブル取り付け端子はそのまま使用したが、ケーブル内部には2mmアルミワイヤーを通し好みの状態でケーブルの形状を保持できるようにした

▲太モモ外装は前後パーツ単位で作業。マジックスカルプを裏打ちし、硬化後外装同士を合わせた状態で切削している
▲太モモフレームは外装に合わせて削り込んでスリムに。股関節ボールジョイント周りにはジャンクパーツによるカバーを追加した
▲ヒザパーツは可動を廃しプラ板によるスペーサーをかませ10度ほど傾斜させてヒザ装甲基部(緑色の部分)に接着、裏から1.4mm×8mmの精密ビスを打ち込んで強度を得た
▲アンクルガードは新劇場版寄りの形状に変更。可動部の取り付けピンを前方に向け可動域を広げた
▲スネはフクラハギの張り出しが大きいので、左右を入れ替えたうえで削り込み若干スリム化している
▲パレットライフル、プログレッシブナイフ、エントリープラグなどは丁寧に塗り分けている

■エヴァンゲリオンによせて
 作例のお話をいただいたのが『シン・エヴァンゲリオン劇場版』封切り直後であり、この記事をしたためているのがラストラン『 EVANGELION:3.0+1.01』上映中というタイミング(薄い本も頂きました!)、公私双方の意味でエヴァンゲリオンと向き合うには絶妙な期間でした。昭和のSFオタクとしては数々のオマージュを噛みしめながらも、自らも救済されたような心持になっているのです。この時代、数多くの考察動画などが公開されていますが、真偽のほどはさておき何度も噛みしめられること自体が作品の膨大な熱量を示しているのだと感じます。
 さて、今回のお題はパーフェクトグレードシリーズ第1弾であるPGエヴァンゲリオン初号機です。1997年発売、今から24年前の劇場版2作の公開年度なのですが、フレキシブルジョイントを模した腹部やそれらを覆うラバースーツ、バッテリーボックスからアンビリカルケーブルを介して肩マークが発光するギミックといった、当時としては意欲的な開発が成されています。組み立て説明書はまるで映画のパンフレットのような作りで、こちらもただならぬ熱量を感じます。
 2021年現在に向き合うPGエヴァですから、受け止めた熱量を形に還元しなければなりません。時間の許すギリギリまで攻めてみましょうか。造形は存分に、配色はTVシリーズ準拠を基本として進めます。

■切り刻み、削ぎ取る
 仮組みして課題を整理、まるで水泳選手のような上半身に競輪選手のような太モモ、角ばった頭部や肥大な肩、ラバーとフレーム部の取捨選択、発光および武装展開ギミックのオミット、うむ、手ごわい!
 マジックスカルプを購入、太モモや肩パーツの内側に裏打ちを施し硬化後にかなり筋肉を削ぎ落した。初号機の立ち姿は「力石徹のノーガード戦法」的な猫背がデフォルトなのだから、肩関節や頭部の可動域を限界まで前に傾ける改造を施す。腹部装甲は造形的によりボリューミーで回り込みの激しい曲面に変え、肩の装甲はトップを2cm短くし全体を小型化、曲面主体にデチューン。取り付け角度も左右各3mm程度外向きにしてバランスを取る。肩や腰、股の関節はラバーを廃し、フレームを露出しても違和感がないように造形し直す。頭部は角ばった部分をなだらかに繋げ頭頂部の造形をかなり直した。
 各所造形直しが整ったら脚部、腕部外装はラバーを着せてから接着整形、成型色に捉われず造形優先、塗り分け前提で進める。前腕と肩のマーキングはデカールを製作、97年当時に山下いくと氏が描いたマゴロク・エクスターミネート・ソードを抜きかけた初号機のイラストを参考にフォントデザインを模写、illustratorで版下を製作しました。

■塗装
 マジックスカルプやエポパテを多用し、ラバー部も一部接着しているので、まずはラバー部をマスキング。素材が重複した箇所はマルチプライマーサーフェイサーを塗布。続いてすべてのパーツにEx-ホワイト、ブラック調合のグレーを吹き付け、明度の高い色から塗装⇒マスキング⇒次の色を繰り返します。赤部は白を塗ってから重ねますが、口左右のダクト奥は塗装前にエポパテで雄型を作り、それをガイドにマスキングテープを切り出しています。主要機体色のバイオレットですが、クールホワイトにシアン、マゼンタを適量加えて調色しています。好みの分れるところですがシアン寄りにしました。色味の調整でアメジストパープディープクリアレッドを吹き重ねています。緑はルマングリーン×蛍光イエロー、黄色はガイアカラーエヴァオレンジイエローを使用しています。基本色完了後にフラットベースなめらかスムースを添加したクリアーを吹いてツヤ調整、Mr.ウェザリングカラーグランドブラウンなどでスミ入れを施し完成です。

■まとめ
 造形的な改修を最優先にした作例となりましたが、いかがだったでしょうか? エヴァンゲリオンのプラモデルにスケール表記はありません。映像作品の演出上決められていなかったようですが、これは構図や絵的な構成も含め面白さの極限をつねに刷新し続ける制作者サイドの姿勢の一端なのでしょう。只野的に本作例は、作品シーンごとにエヴァンゲリオンのイメージが形作られてきた事実を再確認する機会となりました。あなたのエヴァンゲリオンはどんな姿でしょうか? 本特集を機会に形にしてみるのも面白がり方のひとつかも。

BANDAI SPIRITS ノンスケール プラスチックキット “パーフェクトグレード”

汎用ヒト型決戦兵器 人造人間 エヴァンゲリオン初号機

製作・文/只野☆慶

ⓒカラー ⓒカラー/Project Eva. ⓒカラー/EVA製作委員会

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只野☆慶(タダノケイ)

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