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「トップガン」の仮想敵機としても使われた傑作機「A-4スカイホーク」を点検中のビネット仕立てで製作!

2025.10.20

A-4M スカイホーク【トランペッター 1/32】 月刊ホビージャパン2025年11月号(9月25日発売)

A-4M スカイホーク 特撮

赤い工具箱と黒羊

第214海兵攻撃飛行隊の勇士をビネットで……

 1950年代のアメリカ海軍が導入したダグラスA-4スカイホーク艦上攻撃機は、小型軽量ながら頑丈で、高い信頼性と汎用性でベトナム戦争で活躍。その後も改良を加えられ、「スクーター」と呼ばれるほどの軽快な運動性でアクロチームのブルーエンジェルスや「トップガン」の仮想敵機としても使われた傑作機だ。シリーズ最終型となるM型を1/32スケールで唯一モデル化しているトランペッターのキットをビネットでモデリング!

A-4M スカイホーク
上側1
A-4M スカイホーク
上側2(ディオラマなし)
▲非常に長い運用期間を持つA-4スカイホークはさまざまな型式が存在するが、最終型となるM型は1970年に海兵隊向けに開発した性能向上型。「スカイホークII」とも呼ばれ、その後のイスラエル向けA-4N 、クウェート向けA-4KU 、アルゼンチン向けA-4ARのベース機ともなっている
A-4M スカイホーク
左主翼上面
▲左主翼上面。ボー テックスジェネレーターはアルミ板で作り替え。前縁スラットはそのまま取り付けると主翼から離れすぎるので、スラットの端と翼端をもっとも外側のレールをつめて調整した
キャノピー 開状態
▲キャノピーは開状態を選択。コクピットはカラープリント済みエッチングパーツとレジン製操縦席を使用。M型以降の特徴となるバブル形状の第2風防には内張りやリアビュー・ミラーなどを自作。後部にもプラ板でディテールを加え、配線もリード線などで追加した
スカイホークの特徴である非常に長い前脚
▲スカイホークの特徴である非常に長い前脚。サスペンション部には携帯ラジオのアンテナを切って埋め込み、ステアリング機構に徹底して手を入れた。M型の脚柱には特徴的な黒いコードカバーもコの字型のスライド補助具とともにアルミ板で自作し追加した
胴体側面 エアインテーク直後に描かれた部隊エンブレムの「ブラックシープ」
▲胴体側面、エアインテーク直後に描かれた部隊エンブレムの「ブラックシープ」は第二次大戦の太平洋戦線で戦った伝統のマーキング。発売当初のキットでは実際とは異なるマーキングとなっていたため自作デカールで対応。現在販売中のキットでは改修済み

整備兵を主翼にのせ、点検中のビネット仕立てに

乗降用ラダー
▲乗降用ラダーはキット付属のものをディテールアップ。塗装とウェザリングで使い込まれた状態を表現
整備員
▲整備員はエアフィックスのマルチポーズフィギュアから改造。赤い工具箱は5mmプラ棒やプラ板などで製作
射出座席などコクピット内部
▲射出座席などコクピット内部にはクイックブースト社のレジン製パーツと、エデュアルド社製の計器盤カラープリント済みエッチングパーツを使用している
収納庫内部もディテールアップ
▲前脚柱とともに収納庫内部もディテールアップ。プラ材や金属戦などで細かなパイピングを追加し、断熱材はアルミ箔を貼り付けて再現している
パイロン
▲パイロンは下面にプラ板でディテールを追加し振れ止めも薄く削った。ウェポン類は各種爆弾やミサイルなど豊富に用意し、さまざまな搭載パターンを選択可能
コクピット内部の各種パーツ
▲コクピット内部の各種パーツ。計器盤やサイドコンソールのスイッチ類や操縦桿のヘッド部には伸ばしランナーを切り出したものを追加し立体感を出している
20mm機関砲庫
▲主脚収納庫の横には主翼付け根の20mm機関砲庫も再現されている。ディテールアップを施しホワイトや機内色で塗り分けた後にスミ入れし、細部を強調した
動翼
▲各動翼は後縁が厚いので削り込んでシャープに。前縁スラットの整流板やボーテックスジェネレーターはモールドが厚いので、アルミ板で薄く作り替えた

機体について
 “スクーター”の愛称をもつ傑作軽量攻撃機A-4。このシリーズの最高峰は、海兵隊へ供給されたM型である。エンジンはパワーアップされ、速度、運動性、上昇率、加速性が一段と向上しキャノピーは視界の良い大型のものに改められ、ドラッグシュートを装備した。内部装備品も近代化され、コンピュータや慣性航法装置等が装備され大幅な性能向上をみている。

キットについて
 キットは、垂直尾翼上端にGCBSアンテナフェアリングを、機首にLST、ALR-45(V)、ALQ-12アンテナを追加したA-4M後期型で、外形をよくとらえている。燃料タンクや各種爆弾、ミサイルなどのアクセサリーも豊富。エアブレーキの内側にはエッチングパーツが用意され、両主脚柱は金属製だ。デカールは有名な第311海兵攻撃飛行隊VMA-311と第214海兵攻撃飛行隊VMA-214のものが用意される。薄いが貼りやすく、上からフラットクリアーを吹けば段差はほとんど目立たない。
 私の手元にあるこのキットは、友人が断捨離したものでクイックブースト社のレジン製の操縦席と、エデュアルド社製の計器盤カラープリント済みエッチングパーツ入りだった。ただ受け継いだキットは初期のものだったらしくVMA-214の黒羊マークが実際のものと異なっていた(現在は改訂されている)ので、ここは自作デカールを使用した。
 製作にあたっては次の2点に注意した。ひとつは、各パーツは徹底した擦り合わせをする。ふたつ目は、モールドにE型とM型が混在している箇所があるので、実機写真や図面を見ながらM型に修正する。

製作について
 コクピットはカラープリント済みエッチングパーツとレジン製操縦席を使用。計器盤やサイドコンソールのスイッチ類には、伸ばしランナーを切り出したものを貼り付けて立体感を出した。操縦桿のヘッド部にはトリムスイッチ等のボタンを追加。第2風防には内張やリアビュー・ミラー等を自作して取り付けた。操縦席後部にプラ板でディテールを加え、配線もリード線等で追加した。
 前脚サスペンション部には携帯ラジオのアンテナを切って埋め込み、ステアリング機構に徹底して手を入れた。M型の脚柱には特徴的な黒いコードカバーがある。これをコの字型のスライド補助具とともにアルミ板で自作。両主脚にはトルクリンクを0.4mmステンレス線で追加。脚庫も各種金属線で配管を行った。主翼と前縁スラットとの間に段差があるので、いったん切り離して接着し段差をなくした。分厚い整流板やボーテックスジェネレーターはアルミ板で作り替えた。機首左上の空気取り入れ口が省略されているので、胴体左側の空気取り入れ口を移植。胴体のエアインテークにある凸状の変形6角形のモールドは、E型のAFC429改修ハンプバック型にあるものでM型にはないので削り落として整形した。パイロン下面にプラ板でディテールを追加。振れ止めも薄く削った。第1風防右側前方の温度プロープを0.8mmと0.6mmアルミ管で製作。ハンプバック左右にある冷却空気排出ルーバーをプラ板の箱組みで製作。エンジン整備用ドアの内側をディテールアップした。
 機首には、電子機器整備用ドアを閉じ内部ディテールを省略して18gの釣り用の錘を入れた。垂直尾翼後縁の各種アンテナはプラ板から自作しシャープにした。
 動翼は後縁が厚いので削り込んでシャープにした。主翼の前縁スラットはそのまま取り付けると主翼から離れすぎるので、スラットの端と翼端がぎりぎりまで近づくようにもっとも外側のレールをつめて調整した。

塗装について
 機体のマーキングは、小さな文字以外はエアブラシの塗装で再現。上面はGSIクレオスMr.カラーC315グレー、下面はMr.カラーC316ホワイトを使用。退色表現には、上面色に下面色を少し加えて吹き付けた。ウォークウエイには塩マスキング法で塗装して激しい退色を表現。全体にタミヤのスミ入れ塗料のダークブラウンでウォッシングをした。
 ビネットは「エンジン整備口に頭を突っ込んで仕事をしている整備兵の写真」からイメージした。整備兵の素体は、エアフィックス1/32マルチポーズのドイツ・アフリカ軍団を使用して製作した。塗装はタミヤカラーエナメルである。赤い工具箱は5mmプラ棒とプラ板、銅線で製作。赤い工具箱を横に置いて働く整備兵の真剣な雰囲気が伝われば幸いである。
 このキット製作期間中に、近郷の新田原基地の二人の飛行士が殉職した。哀悼の意を込めこの作品をお二人に捧げます。

トランペッター 1/32スケール プラスチックキット

A-4M スカイホーク

製作・文/高橋祐二

A-4Mスカイホーク
●発売元/トランペッター、発売元/インターアライド●15180円、店頭在庫のみ●1/32、約38cm●プラキット


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高橋祐二(タカハシユウジ)

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