HOME記事キャラクターモデル『ジュラシックワールド』等で話題の「スピノサウルス」を最新復元!! 実物大の復元骨格にも負けない「リアル」な佇まいに注目【プラノサウルス復元プロジェクト】

『ジュラシックワールド』等で話題の「スピノサウルス」を最新復元!! 実物大の復元骨格にも負けない「リアル」な佇まいに注目【プラノサウルス復元プロジェクト】

2025.08.22

プラノサウルス復元プロジェクト/スピノサウルス【BANDAI SPIRITS】●ウラベヒロト(アーミック)、G.Masukawa(GET AWAY TRIKE!) 月刊ホビージャパン2025年9月号(7月25日発売)

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■改造

骨格図

スピノサウルス骨格図

 映画「ジュラシック・パークIII」で大きな人気を集めるようになったスピノサウルスだが、命名から110年となる現在でも謎の多い恐竜である。
 1912年に発見されたホロタイプは下あごや歯、背びれ以外の部位がほぼ残っておらず、第二次世界大戦で破壊されてしまった。しかし1980年代に入るとスピノサウルスの近縁種のまとまった骨格が見つかるようになり、スピノサウルスの頭蓋の化石もいくつか報告されるようになったのである。こうして全身の骨格が復元されるようになったスピノサウルスだが、2014年になってほぼ完全な後肢や尾の残ったネオタイプ*が報告され、新たな復元が提示されるようになった。
 プラノサウルスのスピノサウルスは、このネオタイプに基づく2020年版の復元をキット化している。「骨格ビルド」は2020年版としては申し分のない出来で、歩行姿勢についても「二足復元」と「四足復元」のコンバーチブルという意欲作。今回はその後5年間で蓄積された研究成果を反映した「2025年版」として作り込んでいく。復元としては2020年版のマイナーアップデートだが、細部の作り込みなどもぜひ参考としてほしい。

*ネオタイプ:分類の基準となる「タイプ標本(模式標本)」のうち、ホロタイプ(完模式標本)などが失われたり機能しなくなった場合に新たに指定されるもの。

「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作
▲キットの頭骨や頸椎は2020年の論文で発表された骨格復元の形状をよくとらえているが、この5年間でさらに研究が進み、額のクレストの形状や頸椎の順番について新たな復元が示されている。「骨格ビルド」の都合で形状の甘い部分を作り込みつつ、最新復元も追っていく
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中頭部
▲外鼻孔や前眼窩窓、眼窩を開口する。まずはピンバイスでいくつか穴を開け、カッターなどで整形していく。半ば一体化している歯はエッチングソーで切り離し、ヤスって尖らせよう。スピノサウルスの歯は獣脚類としては珍しく、円錐形になっているのが大きな特徴だ
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中アゴ
▲スピノサウルスの頭骨の後半部は化石が少なく、詳しい研究も進んでいない。しかし、額のクレストは従来の説よりも大きかったようだ。各部にパテを盛ってラインを修正し、クレストを大型化する。頭骨の後半部がきれいに保存されている、近縁属のイリタトルもよい参考になるだろう
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中首
▲スピノサウルスの首は大型獣脚類としては非常に長く、強いS字カーブを描くのが特徴だ。頸椎をひとつずつエッチングソーで切り離し、1.5mmの金属線を通してカーブを再現すると同時に可動化する。2020年版の復元とは頸椎の並び順が変わっているので、忘れずに入れ替えておこう
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中前肢
▲スピノサウルスの前肢はまとまって発見された例がなく、全体の長さはわかっていない。キットの「二足復元」バージョンの前肢は2025年版の骨格図と比べてもちょうど良い長さ。一体化した指先をエッチングソーなどで削り込み、末節骨はプラ板で新造した
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中背びれ
▲ホロタイプの発見当初からわかっていた特徴で、属名の由来ともなった大きな背びれだが、実際のアウトラインはおろか胴椎の正確な順番すらよくわかっていない。今回は2025年版の骨格図に合わせて、M字型のアウトラインを描くように改造していく
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中胴椎
▲スピノサウルスの胴椎の神経棘は、ティラノサウルスとは異なり単純かつ薄い板状になっているのが特徴だ。実際の骨の薄さを再現するために0.5mmのプラ板を使用する。骨格図をプラ板に貼り付け、ハサミで切り出す。実際の化石と同様に、先端をよれた状態にするのも面白いだろう
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中脊椎調整
▲スピノサウルスの胴椎が完全に揃った化石は見つかっていないが、部分的な骨格から考えると、椎体がやや猫背ぎみのカーブを描いていた可能性がある。キットのままだと姿勢がよすぎるので、エッチングソーで脊椎の要所要所に切れ込みを入れて曲げよう(模型はパワーだぜ)
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中背びれと胴椎接着
▲カットした胴椎の棘突起(背びれ)と胴椎を接着。背びれのアウトラインは前述のとおりはっきりせず、単純なアーチ形を描いていた可能性もある。スピノサウルス属の中でも種によってアウトラインが異なる可能性が指摘されており、もしかすると雌雄差もあったかもしれない
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中尾っぽ
▲スピノサウルスの尾はネオタイプでほぼ完全に発見されている。ここ数年でネオタイプのクリーニング作業がさらに進んだ結果、2020年の論文で示された復元よりも尾椎が数個分長くなるようだ。キットのままでは少々長さが足りないので、2キット分を尾の真ん中でつなげて延長する
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中尾っぽ2
▲スピノサウルスやその近縁種の尾は棘突起が非常に細長く、ヒレのようになっているのが特徴だ。また、尾の付け根付近の横突起はかなり長いが、キットでは「恐竜ビルド」の都合で短めになっている。論文の図版や3Dモデルを参考に、真鍮線を使ってキットの横突起を延長していく
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中尾っぽ3
▲キットパーツに真鍮線を埋め込み、その上にエポパテを盛ってそれらしい形状に整形する。細部は金ヤスリやデザインナイフ、紙ヤスリで整えていこう。横突起を延長することで、付け根はマッシブだが途中から薄いヒレ状になるスピノサウルス科独特の尾を表現することができる
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中肋骨
▲肋骨は1本ずつ切り離し、デザインナイフで削り込んで胴椎に再接着する。胴椎の棘突起はプラ板の切りっ放しだとあっさりしているので、溶きパテで表面にテクスチャを作ってやろう。
上腕はボールジョイントの受けが目立つので、胸側に受けが来るように改造した
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作途中
▲頸肋骨も切り分けて再接着し、足の末節骨はプラ板を貼り込んで先端を尖らせる

■塗装

「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作塗装途中
▲近年スピノサウルスが多産しているモロッコのケムケム層群*の化石は、オレンジや黄色の染みが目立つクリーム色が特徴だ。まずクリーム色で塗装した後、Mr.ウェザリングカラーのオキサイドレッドとマルチブラックを混色したもので全体を洗うように塗っていく

*ケムケム層群:モロッコ西部に露出する、白亜紀後期初頭(セノマニアン:約1億50万~9390万年前)に河川や河口域で堆積した地層。スピノサウルスやカルカロドントサウルスの産出が有名で、歯の化石は市場でよく流通している。
「プラノサウルス スピノサウルス」スピノサウルス骨格図と比較しながら製作塗装途中2
▲黒っぽい色を染み込ませたスポンジで軽く叩き、化石に見られる染みを表現する。エッジの部分には明るい色のパステルを擦り付けてやろう
作例「プラノサウルス スピノサウルス」見返り
▲これで完成!
骨格の全容の解明にはまだ遠いスピノサウルスだが、命名から110年を経てわかっていることを詰め込んだ、研究の現在地とも言うべき「骨格ビルド」ができあがった。研究の進展とともに日々復元は更新されていくが、その時々のベストを詰め込んだ復元模型は、マイルストーンとして研究史に刻まれていく。古生物学とはそういうものなのだ
スピノサウルス骨格図
▲1912年の最初の発見以来、スピノサウルス・エジプティアクスの化石は主にエジプトのバハリヤ層から報告されていた。しかし第二次世界大戦によってバハリヤ層産の標本群はすべて焼失し、わずかな写真と論文の図版を残すのみとなってしまった。1970年代になると、バハリヤ層と同様の時代・環境で堆積したモロッコのケムケム層群で多数のスピノサウルスの化石が発掘されるようになっだ。ケムケム層群産の標本の中には長さ1mに達する巨大な吻や、ネオタイプに推挙されている部分骨格など、バハリヤ層産標本で欠けていた部分を補いうるものがいくつも含まれている。一方で、スピノサウルス・エジプティアクスと同時代・同じ場所に別のスピノサウルス科がいた可能性や、そもそもケムケム層群産の標本がバハリヤ層産のものと別種である可能性も指摘されている。命名から110年が過ぎたが、スピノサウルスの前途はまだまだ多難である。

Spinosaurus aegyptiacus

スピノサウルス・エジプティアクス
●獣脚類 スピノサウルス科●全長約14m●白亜紀後期(セノマニアン)約1億50万~9390万年前●北アフリカ

作例「プラノサウルス スピノサウルス」

BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス”

スピノサウルス

製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)

プラノサウルス スピノサウルス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1595円、発売中●約23cm●プラキット


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G. Masukawa

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