伝説的キット “海洋堂の邪神兵” がプラキット版として凱旋。生物的、機械的と異なる魅力を大森記詩が筆塗りで表現
2025.05.16ラッカー塗料の筆塗りで邪神兵に命を吹き込む
生物的な印象と機械的なディテールを合わせ持つ邪神兵。今回はその魅力的な造形の抑揚と合わせて作品世界のファンタジーテイストをより強調した仕上がりを目指しました。機体の多くを占める鎧部分と、その接続部である関節などのメカ部分で質感の違いを出したかったので、まずは塗装前の下準備として溶きパテで鎧部分にテクスチャーを加えています。筆塗りのタッチを重ねていく過程でテクスチャーは馴染んでいくので、これを前提にして数回に分けてしっかりとした凹凸となるようにしました。この時に使い古しやナイロン系で毛質の硬めな筆先を使うと施しやすいです。
塗装の下地は、もっとも面積の広い色である赤茶の発色を考慮して缶サーフェイサーのオキサイドレッドを選びました。漆工のような鎧の赤茶は81番 あずき色をベースに、まずはGX121番 GXクリアルージュとGX2番 ウイノーブラックを適宜混ぜ合わせながら塗っていきます。はじめは暗色めに混ぜて立ち上げていくイメージで。クリアー色が入っていることで隠蔽力が下がり、下地のオキサイドレッドがより透過し、合わせて筆目からも覗ける状態になりますが、これも効いてきます。この効果を活かすために塗り潰さないようにしながら塗っていきます。
段階的にあずき色の割合を増やしつつ塗り進めながら、ラッカー特有のツヤ感を出しつつ、これに171番 蛍光レッドも加えて明るく鮮やかな表情も重ねます。ここで下地としていたオキサイドレッドのおかげで蛍光レッドが加わった明るい色味も馴染んでくれます。この段階になってくると塗装前に施したテクスチャーも一層浮かび上がってくるので、密度感がグッと増してきて楽しいポイントです。
さらに、仕上げ段階でもうひと押しアクセントを加えたいところ、ここで上半身の鎧やメカ部分に使っているゴールド系で、主に鎧の頂点やフチに擦れ・剥がれ表現を施しています。劇中の舞台が架空の惑星アーストで、その超古代文明が遺した戦闘兵器という設定でもあるので、鎧の材質も金属質であってもいわゆる鉄系金属による装甲とは異なっているという解釈をしてみました。皆さんも名作ガレージキット由来の魅力的なフォルムをいろいろな質感を想像しながら筆塗りしてみてください!

海洋堂 ノンスケール プラスチックキット “ARTPLA SCULPTURE WORKS”
邪神兵
製作・文/大森記詩
ARTPLA SCULPTURE WORKS 邪神兵
●発売元/海洋堂●14300円、発売中●約22cm●プラキット
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ⓒ サンライズ
大森記詩(オオモリキシ)
1990年生。彫刻家。作品製作と並行しながら、模型誌や映像作品・イベント用造形物の製作に携わる。月刊ホビージャパンでは「MIXINGSCAPE」も連載中。HP:「kishiomori.com」