メーカー×モデラーエアブラシ放談 月刊ホビージャパン2025年5月号(3月25日発売)
ガイアノーツは水性塗料に挑むのか
矢 こうやっていろいろ話してきて思うんですけど、今後ラッカー塗料で何が塗られるんだろう……という、疑問というか心配があるんですよね。ウチはラッカーがメインなんで。ひとつは、3Dプリンターの出力品というのがあるのかなと思っているんです。
—出力品をそのまま販売するパターンの商品もすでに存在していますからね。
矢 でも、3Dプリンター専用塗料ってないじゃないですか。もしこの先3Dプリンターが家にあるのがあたりまえになったら、それに対する専用塗料の需要ってあるんじゃないかなと思うんですよね。
コ それもラッカーなんですかね。というか、ちょっとお聞きしたかったんですが、ガイアさんって水性塗料はやらないんですか? 今後のトレンドってそっちに傾いていくと思うんですけども。
矢 やりたいのはやりたいんです! ただ、コロナ禍以降ウチの商品に対する引き合いもたくさんあって、正直商品が足りてないんですよ。それでも従業員も商品の置き場所も増えているわけじゃないので、情けない話なんですが「余力がなくて難しい」という状態ですね……。
け 今あるラッカーの生産環境を、そっくりそのまま水性に転用するっていうのは、やっぱり難しいんですよね?
矢 そうなんです。同じ原料を使って、今ラッカーで出ている色をそのまま水性にできるかといったら、そうはならないんですよね。工場からまったく違いますから。出すにしても現状のラインナップカラーに似せなくちゃいけないだろうから、調整に時間がかかる。残念ながら、それをやっている人も場所もないというのが、ウチが水性塗料をやれない一番大きい理由ですね。
エアブラシの導入は
一番手軽なステップアップ方法だ
—なんだかんだでもう2時間半くらい喋ってるので、最後に締めといいますか、この特集を読んでこれからエアブラシを使ってみたいと思った読者の方に対して、背中を押すようなコメントをいただければと思うのですが……。
矢 そうですね……。やっぱり、模型作りにおいて一番単純なステップアップの方法って、道具を買うことだと思うんですよ。自分も吸い上げ式でエア缶をつなぐやつからスタートしてるんで。そこからひとつずつステップアップすることで、プラモデルってもっと面白くなるはずなんです。で、そのためにいろいろ調べたり、自分から動いてみるっていうのは、その先全部プラスになることだと思うんですよ。だから手間を惜しまず、楽しんでください……としか言えないっすね!
R 僕としては「趣味って、一歩踏み出せばさらに楽しいですよ!」ということだけですね。小難しい「こうしなきゃいけない」っていうルールがあるように見えているかもしれないですけど、そんなものは実際にはないし、やってみれば楽しいことだらけですから。つまずくこともあるかもしれないですが、メーカーとして製品に関するサポートや使い方に関するコンテンツの発信も頑張りますし、なんらかの方法で質問してもらえればなんでも答えますんで、とにかく飛び込んで、楽しんでみてください!
け とにかく、自分の好きな色を好きなものに気軽にぶっかけることができる遊びって、プラモデルくらいなんですよ。だからもう、好きな色をバーッとかけて、それが形になる醍醐味を今すぐ味わってください。とにかく、下地が透けようが指紋が付こうがどうでもいいんで、まずは目の前にある模型を好きな色に塗るところから始めるのをおすすめしたいですね。あとね~、これはおじさんとしては非常に羨ましいんですけど、始めるためのコストが今ってすごく安いんですよ。僕の頃は一式揃えるのにウン万円かかったんだから! それに比べたら今って金銭的ハードルも低いんで、とにかくどんな状態でもいいからやってみてほしいです。
コ え、俺がオチ担当(笑)? う~ん、例えばひとつ作品を作るとして、塗装の機会って1回ですよね。だから、2~3年かけて1作作ったら、その年数のなかで塗装をするのは1回だけになっちゃう。それでもいいんだけど、塗装の機会が多い人に比べると研鑽の機会は減っちゃうと思うんですよ。そうなると、伸び方とか技術を体得するスピードが絶対違ってくる。だから、もしさらに上手くなりたいんだったら、回数をこなすということにも注目してもらってもいいかもしれない。そのための便利なツールは、昔と違ってものすごくたくさんあるんですよ。だから、たくさん手を動かして上手くなってください! ……あと声を大にして言いたいんやけど、なんで俺が今日呼ばれたん!? もっとエアブラシ上手いモデラーおるやろ!
—いやいや、まあまあ、いいじゃないですか! ということで、皆さん今日はありがとうございました!
(2025年2月、ホビージャパンにて収録)
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