──ザクのバリエーションに関してはどのように発展していったんですか？

山根　無識別型ザクの盾の、マゼラ・アタックのスカートを二重装甲にするとか、そういうアイデアは出しているけど、バリエーションに関しては監督やSAFEHOUSEのデザイン提案をチェックして仕上がっていきました。隊長機のアンテナが耳のように両側に付くのはブロスダウ監督のアイデアです。

鈴木　狼みたいなイメージなんですよね。

山根　珍しいアンテナの付け方で、最初の頃は違和感があったんだけど、今までやったことがないことをどんどん取り入れていったほうが新しいものが見えてくるんじゃないかとそのままにしましたが、アンテナは左右対称にすると可愛くなってしまうので、長さ、バランスを変えてメカっぽくさせてもらいました。

──無識別型ザクの現地改修感もメカ好きとしては惹き付けられます。

山根　「ビーム兵器はどうやったら防げるんですか？」って笠岡君から相談があって。実際に防ぐのは難しいけど、ジオン側も現地で一生懸命考えていますよというのが出ればいいかなと。ワイヤーネットや鎖はSAFEHOUSE側の提案ですが、追加装甲の取り付けポイントや熱の分散効果かなと。盾が重なっているというのは、二重装甲であり、隠し武器のミサイル用の演出のためなんだけど、ガンダムがGアーマーになる際に盾が重なる描写の踏襲でもあります。他にオマージュとしては、EXのヘルメットのチンガードは頬のディテールのデザインの流れ上で取り付けたところではあるんですけど、グフも登場することですし、Ez-8ぽさもあると『第08MS小隊』ファンへのサービスにもなるかなという気分もありました。

──他のモビルスーツデザインはどのように行われたのでしょうか？

鈴木　グフカスタムはSAFEHOUSEで今作用にデザインを手掛けています。顔周りのモデリングが難しかったですね。鼻の長さでイメージが変わってしまうのでどこを落とし所にするか悩みました。

山根　上がってきたものをチェックして意見を言ったりしています。グフはCG制作の手間を省くためにザクを基本にSAFEHOUSEでデザイン画が作られていました。それに対して肩のツノに金属感が出せないかとか、ザクの動力パイプは細めだけどグフは太めにしてパワーアップしている感じを出してほしい等、細かい所を。最終的なフォルムはCGモデルで調整されました。

──劇中ではザクタンクの活躍も印象的ですね。

山根　ザクタンクとザク・マシンガンはデザインを草彅琢仁さんにお願いしました。草彅さんは『MS IGLOO』のデザインに関わられているけど、モビルスーツを描いたことがないと仰られていたので、今回ザクタンクをお願いすることにしました。腰周りの細さや腕がいい感じで、やっぱり面白いものを上げてくださいました。車体にベランダが付いているのも機能的ですよね。しかしCGで作るにあたって今回のマゼラ・アタックのボディにザクの上半身を載せると車体が小さくアンバランスでした。それでブロスダウ監督から提案のモデルが来たんです。それは、履帯の幅がスペースシャトルの移動用クローラーみたいな感じで、ボリュームがあって安定感はあるんだけど、鈍重に見える。そこで、アメリカ試作重戦車のT28みたく、マゼラ・アタックの足周りブロックをふたつ横につなげて車体の幅を広くしたらどうかという提案をしました。

──ジムのデザインについてもお聞かせください。

山根　ジムもガンダムもカメラ周りで表情を付けられないかなという思いがあって。ジムのカメラ回転はスマート爆弾の誘導レーザーの発信装置が元ネタです。CGで回転がきれいに動かせるから、絶対にやりたいと思っていたんです。ジムの頭部バイザーはなぜあんなにガンダムのデザインと違うのかも気になっていて。だから今回はバイザーをカメラの前にあるヘッドアップディスプレイ的なものにしたかった。その奥にモノアイみたいなものが見えるのはヘッドアップディスプレイの投影用発光部です。一方ガンダムは表情が変化するような感じが演出として必要と考えて、複数のカメラが配置されていてそこの発光の違いで表情が変わって見えるようにしました。ソラリを見るときだけ発光して、感情があるように見える描写を繰り返し入れていたのは効果的でしたね。

鈴木　ジムに関しては、山根さんから「スネ周りは量産型だからシンプルにしてほしい」と言われましたね。

山根　ジムはサブメカだからシンプルな感じとアシンメトリーなのも面白いかなと思って、ヒザは左右でディテールを変えています。「ロボコップ」も左右で脚のディテールが違っていて、その微妙な違いが機能的に何かあるんじゃないかというふうに見えるんです。

鈴木　ガンダムとザクをモデリングするのにすごく時間がかかったので、ジムとグフはできるだけパーツ流用でいきたいとは考えていました。でも、山根さんが描くシンプルな形状だけどアナトミーをしっかり意識してモデリングすることは心掛けましたね。

ジム コンセプトデザイン

──完成した映像に関してはどのような印象をもたれましたか？

山根　予算や時間の都合で出来なかったところももちろんあるんですが、基本的には質感とか動きはかっこいいところがいっぱい詰まっている。特に第2話までのモビルスーツ戦は見物ですよ。今後、もっとこういう形のものを作っていきたいなと思いましたね。今回の経験を活かせば、もっといろいろ出来るんじゃないかと思います。

鈴木　やっぱりいろいろ難しいところが多かったですね。「ガンダム」をアニメの延長として描くのか？　実際の戦争の兵器として描くのか？　アニメーションや質感をどうするか？　など、本当に試行錯誤しながらやっていたので。サンライズさんと山根さんと話し合いながらやっていたんですが、今でもガンダムファンの皆さんが見てどう思うのか不安ではあります。

──では、最後にひとことずつメッセージを。

山根　CGならではの表現に注目していただきつつ、ドラマ的に大きな戦争のなかで、母親を主人公としたドラマになっているので、ソラリが仲間を失っていくごとに、それを自分の子供に重ね合わせる母性的感情とか、そうした映画的側面を観てもらえるとうれしいです。
鈴木　僕らとしては、「ガンダム」をどれだけ現実的でリアルな兵器として見せるかにこだわっているので、映像から「ガンダムって本当にいたらこういう感じの兵器になるんだね」というのを感じてもらえたらすごくうれしいですね。

（2024年10月、バンダイナムコフィルムワークスにて収録）

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