Iron Rocks
岩鉄城、起動
2021.04.13
UAU ZERO編最終回に登場したムキシバラ星人の決戦兵器「岩鉄城」の作例を紹介。岩鉄城の造形は『ウルトラセブン』に登場した軍艦ロボット「アイアンロックス」をモチーフとしており、4本の脚は『8マン』等の作者、桑田二郎(当時は桑田次郎)氏による『コミカライズ版ウルトラセブン』のオリジナル要素として描かれたものである。
このZERO編最終回を飾る強敵を製作したのは、UAUのほぼすべての作例を製作してきた只野☆慶。戦艦大和のキットを基礎にスクラッチした大作をご覧あれ。
■フル可動アイアンロックス?!
ことの始まりは2020年12月、HJ編集部での担当者との会話からだった。「事前に情報があればUAUの登場メカを作れる、いや作りたい。」そんなニュアンスのことを口走った気がする。そして2021年1月初旬、ハセガワ1/450スケールの戦艦大和が届く。発注内容を要約すると「UAUのZERO編 最終回でアイアンロックス(漫画版の脚付き仕様!)を出したい」とのことだった。こんな面白いモチーフはモデラー人生の中でも滅多にないだろう。「自立は最悪出来なくても大丈夫です」いやいや何を仰るか! 持てるすべてをぶつけてやりますとも! どうやらこの時点でいろんな脳内物質が只野を狂わせていたのだろう。脚部全16ヵ所可動のアイアンロックスを組上げるに至ったプロセスを語ろう。
■岩鉄城立つ
戦艦大和の甲板を仮組みしておもむろに切り刻む。映像的イメージを優先して主砲に外径4.5mmプラパイプを被せ、船体左右に主砲基部を増設移設したり艦橋やレーダーや煙突を大型化、挙句別スケールから砲を改造移植するなど艦船模型のセオリーを全く無視して進める。
甲板のアウトラインが出来たらシャシーをプラ角パイプで組み、その底部に収まるように脚部ユニット基部をプラ板で箱組みする。
以降現物合わせで脚部を構成させるのだが、強度と可動を両立させるため2mm厚のプラ板、レジンブロック、2mm径のキャップボルト、精密ビスを駆使して切った貼ったの連続で試作。え? 大きすぎた! …気を取り直して半分の太さで再構成し同じ作業を脚4本分頑張った。ここで悪い癖が出る。「アクチュエーター組み込んだら造形的にも強度的にも格好良いのでは…?」ハイ、2日間作業追加です。立たせてみるとかなり脳内イメージに近づいた! カール自走臼砲等スケールモデルからパーツを捥いでミキシングビルドの要領で艦要所を構成した。
■塗装
塗装下地はあえて缶スプレーのサーフェイサーを使用して「鉄」の質感を演出。タミヤラッカー塗料LP-12 呉海軍工廠グレイを主体に、艦底色やブラウン系塗料をランダムに吹き重ねている。甲板にはタミヤラッカー塗料LP-17 リノリウム甲板色を筆塗りした。
油彩バーントアンバー、バーントシェンナ、バーミリオンヒューやウェザリングカラー各色で「鉄」のさまざまな錆びを表現、ピグメント、ウェザリングペーストで足周りの汚しを行った。
■総括
ちょうどコロナ禍と並走するようにUAUの進行と寄り添ってきましたが、ZERO編最終話でこんな面白い仕事ができたことは私にとってとてつもない財産になりました。え? まだ纏めるの早い? そうでしょうそうでしょう。長谷川先生はじめ全スタッフの皆様、時代がどう変化したとしても、只野はどんなネタフリでも状況を面白がりますのでこれからもよろしくお願いします! ULTRAMANファンの皆さん、未来に何が待っているのか僕にもわかりませんがともにこれからの展開を楽しみましょう!
ノンスケール スクラッチビルド
岩鉄城
製作・文/只野☆慶
Ⓒ円谷プロ ⒸEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi
只野☆慶(タダノケイ)
各種造形、デザイン、模型製作を生業とする。本誌にてULTRAMAN作例を多数製作。作例はフォトストーリーで活躍中。