■ヤスリでのゲート処理
ゲート跡と周囲の面を確実にならすため、周辺まで少し削って整える方法。今回は価格も含めてお手軽な紙ヤスリを使ってのゲート処理を説明します。
▲ 紙ヤスリはシートの表面に砥粒を定着させた研磨材。手頃な大きさに切ったり、当て木に巻くなどして使います。数字が小さいと粗く削れ、数字が大きいと細かなキズとなります。ゲート処理では400~800番が主に使われます。使いやすように初めから細い当て木や弾力のある基材に貼られているものもあります
▲ 基本的な使い方から。まず手頃な大きさに切り出し、硬いモノ(例は替え芯のケースや厚めのプラ板)に巻いています。ヤスリの番手は400番で、ゲートの残りならドンドン削れます。キズも深くなるので、なるべくナイフでゲートを削いでからより細かい番手にするのもオススメです
▲ 曲面のフチにあるゲート跡を削って仕上げてみます。紙ヤスリを当て木(例はプラ板)に巻くことで、平らな硬いヤスリとして扱え、出っ張ったゲートだけを削れるようになります
▲ ヤスリが当たっているところは隠れてしまいますが、そこに当たる角度に注意して削っていきましょう。ゲート部分だけ平らにするのではなく、周囲の面とスムーズにつながるようにします。基本的にヤスリ掛けは押して削りますが、紙ヤスリはどの方向でも削れるもので、場合によっては削る方向を変えて使います
▲ ゲート跡の出っ張りがなくなりました。周囲とならすためにゲート跡のまわりにもキズがついています。このヤスリキズはさらに目の細かい紙ヤスリで消していきます
▲ 400番の紙ヤスリでついたキズをならすため、次は800番の紙ヤスリで表面をならしています。今度は出っ張りを削るのではないので、パーツの形状を崩さないように曲面に沿ってヤスリを動かします。パーツの角を削り過ぎないように注意しましょう
▲ 800番のヤスリでキズをならした仕上がり。ゲート跡がなめらかになり、ヤスリのキズもツヤの違い程度になってきました。このあと塗装する場合はこの程度のツヤの違いはなくなります。成型色のまま仕上げる場合、ツヤを整えるにはいくつかの方法があります
▲ 汚れ落としなどでつかうメラミンスポンジで表面を擦ることで、キメの細かなツヤ消し状態にできます。これでヤスリキズが目立たず見た目が整いました。成形色仕上げとしてはこうなれば充分でしょう
▲ さらに数千番のヤスリで磨いて光沢を取り戻すこともできます。ゲートのあった箇所も滑らかな面に整っているのがわかります。ゲート跡が少し濃くみえるのは素材によるものです
■ゲート跡が凹みになった場合の処理
ささくれたり凹んだゲート跡を整えるには何かで“埋める”ことになります。ここではプラパテで埋めた例を紹介します。
▲ ゲート周辺にプラパテ(タミヤパテのホワイト)を塗っています。プラパテはパーツ表面に馴染みやすく、ヤスリ掛けもしやすいもの。少しの凹みやキズに向いている素材です
▲ 充分に乾燥したら紙ヤスリで表面を整えます。ヤスリが目詰まりしないよう耐水ペーパーを使って、水を付けながらヤスリ掛けしましょう。盛ったところをしっかり削れるよう紙ヤスリは板に当てて使っています。その後の仕上げは先の例と同様です
■マーカーで簡単ゲート処理
もっと手軽な方法でゲート跡を目立たなくしてみましょう。それにはパーツと似た色のマーカーを用意します。
▲ 模型用の各種マーカー。左の2本(タミヤペイントマーカー、ガンダムマーカー)はしっかり着色するペン。右のリアルタッチマーカーは汚しなど透けのある色味を重ねるもの
▲ ニッパーで切ったゲート跡。少し白っぽい所があるので、リアルタッチマーカーのピンクを使ってそれを目立たなくしてみます
▲ 細いペン先を使ってゲートの白っぽいところに色味を重ねています。白っぽいところがおさえられ、違和感が少なくなります
▲ こちらはしっかり着色するペンでゲートの切り口を塗っています。ランナーなどに試し塗りをして、色味を確かめてから使いましょう
今回のまとめ
「ゲート跡の処理」はプラモデルをただ組み立てるだけから、見た目を気にする組み方の第一歩といえます。慣れてしまえばゲートカットから一連の流れでそれに対処するようになるでしょう。塗装前提か成型色仕上げかで程度の違いはありますが、あとから整えるのはやはり手間なので、そうならない切り方から身につけましょう。
記事中の模型用語をピックアップ簡単解説!
■成型色
プラモデルのパーツ自体の色のこと。通常はランナー毎にそのモデルやパーツ群にあわせて調色された樹脂で成型されています。
■耐水ペーパー
耐水性の紙ヤスリ(サンドペーパー)のこと。水をつけながら切削することで、削りカスでヤスリが目詰まりするのを防ぎ、長持ちします。プラモデル工作での「紙ヤスリ」は概ねこれを指しています。
■番手
紙ヤスリの砥粒の粗さを示す数字。「400番」や「#400」と表示されます。数字が少ないほど砥粒が大きくて削れやすく、数字が多いほど細かな砥粒で小さなキズとなります。凸凹をならすには粗め、粗めで付いたキズをならすためにより細かい番手、といった順に使います。
■磨き
パーツ表面のキズを消しや塗装面の光沢を増すためなどに、番手の細かなヤスリや研磨材を使って表面をならすことです。
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解説・文/野本憲一
多くのユーザーから愛される模型製作ガイド「NOMOKEN 野本憲一モデリング研究所」の著者・プロモデラー。当連載『いまさら聞けないプラモデルの基礎』では、令和最新版“プラモデル製作の基礎”を解説します。現在では数多くの選択肢があるプラモデル製作の道具やテクニック。「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもなぁ…」と思うものもあるはず。そんな“ギモン”を改めて学んでみましょう。
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