史上初のGTMプラキット、VSMSダッカス塗装作例!「ツインスイング」機構など斬新な設計のレビューや組み立てのワンポイントを解説【ファイブスター物語】
2024.12.05クリアー外装のゲート処理と接着&整形
ついにGTM初のインジェクションキットが発売になりました。複雑な形状と直立時の絶妙なバランス、外部装甲の“手が触れるほど近づいて初めてわかる透明装甲”という特性からも、レジンキットでしか立体化は不可能と誰もが考えていました。それ以前にMHも含め『F.S.S.』に登場する立体物は、可動を楽しむものではなく、独自の立ち姿をもっとも理想的なバランスで固定し展示することが主流でした。しかしGTMで採用された“ツインスイング”という独特な関節機構を楽しみたいという欲求があったと思います。いや、むしろこの“ツインスイング”を実際に可動させて、この関節が考案されたその真意をより理解したいという願望が誰の胸にもあったはずです。しかしこの独創的で合理的な機構は、ムクのレジンパーツ+ポリキャップなどという構造では再現することは不可能で、パーツブロック内部にスライド可動のユニットを組み込む以外には不可能でした。それを現実のものとするためにインジェクションGTMが企画されたのだと思っています。もちろん入手しやすい価格帯という魅力もあるでしょう。しかし、実際にスライド可動させ、従来の関節とは全く異なるベクトルに曲がるヒザやヒジを目撃することが、本キットのテーマであり、最大の楽しみ方だと信じています。
さて前置きが長くなりましたが、実際に組んでみましょう。ボークスがこれまで培ってきた技術で成型されたパーツは、想像していた以上にGTMらしさを再現しています。組み立て工程はさほど難しいものではなく、むしろ構造を楽しみながら手を動かしているうちに、あっという間に完成してしまいます。注意点としては透明のダークグリーン樹脂で成型された装甲などのパーツです。これは先に発売されたL.E.D.ミラージュのような、乳白色半透明プラスチックとは異なり、柔らかさや粘りが全くない完全なクリアー樹脂です。そのため割れ・折れといったリスクがあるので、ランナーからの切り離しとパーツどうしの接合時などは特に注意して作業を行ってください。もちろんパーツの白化にも注意が必要です。しかしこの点のみを注意すれば、自由なポージングが可能なGTMを入手することができます。今回はフレームのみ塗装を行い、ほとんどの外装パーツは成型色を活かしてフィニッシュしています。
これからもF.S.S.造形の主戦場はレジンキットであることには間違いありません。それはディテールの再現性や展示した際の佇まい、造形物から滲み出るオーラなどの点でレジンキットがF.S.S.造形にはもっとも適した素材だからです。しかし、どちらに軍配が…という問題ではなく、目的が全く異なるシリーズであるインジェクション製GTM。レジンキット派の方も、一度は体験する“意味”があるシリーズだと感じています。
VSMS ダッカス・ザ・ブラックナイト
●発売元/ボークス●8470円、発売中●1/100、約24.4cm●プラキット●原型/造形村F.S.S.プロジェクトチーム
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桜井信之(サクライノブユキ)
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