いまさら聞けない「ドイツ Ⅳ号戦車」の性能を解説! ホビーシーンでは知名度抜群の本車両はどのような戦車だったのか?【いまさら聞けないすごいヤツ】
2024.10.21いまさら聞けないすごいヤツ!!
ドイツ IV 号戦車
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
前回の「ドイツIII号戦車」に続いて、「IV号戦車」をご紹介します。アニメ『ガールズ&パンツァー』によって、ホビーシーンではガンダム並みの知名度となったIV号戦車。日本のホビーシーンにおける戦車の象徴に成長した本車両は一体どのような戦車だったのか? 早速見ていきましょう。
ドイツ IV 号戦車
全長約/7.02m
全幅/2.88m
全高/2.68m
重量/25t
最高速度/38㎞/h
エンジン/マイバッハHL120TRM V型12気筒液冷ガソリン
懸架方式/リーフスプリング方式ボギー型
武装/主砲 75mm KwK40 L/48、7.92mm MG34×2
乗員/5名
IV 号戦車
解説/宮永忠将
火力支援用戦車として開発
第一次世界大戦の敗戦国から一転して再軍備に踏み切ったドイツ陸軍は、1930年代半ばからI号戦車とII号戦車で開発、量産技術を確立した。その後、本格的な主力戦車としてIII号戦車を開発したけど、同時に火力支援用の戦車として開発していたのが、今回紹介するIV号戦車である。
III号戦車は速力、攻撃力、防御力がハイレベルでまとまった傑作なのだけど、貫通力重視の戦車砲には、火力が足りないという泣き所があった。ここで言う「火力」とは爆発力のこと、相手が戦車なら欲しいのは貫通力。だけど戦車の天敵、対戦車砲と撃ち合いになったときに欲しいのは爆発力のほう。だから火力担当となったIV号戦車は、最初から口径75mmという大口径砲を積んでいた。一方で24口径長というかなり短い砲身を採用したのは、使用する砲弾は爆発力重視の榴弾だったからだ。最初のIV号戦車A型の車体重量は約18.3tで、15t級として開発されたIII号戦車より一回り大きかった。以降、装甲強化を中心に性能を改善しながら少数ずつ改修型が製造されて、F型では重量が21tに達していた。
ところが1941年6月に始まったソ連との戦争で、ソ連のT-34中戦車やKV-1重戦車に遭遇すると、III号戦車の5cm戦車砲では歯が立たない。そこで急遽、IV号戦車F型の車体に43口径長の長砲身7.5cm戦車砲を搭載することになった。敢えて大型の車体で作ってあったことで、III号戦車には搭載できない長砲身の大口径砲が搭載できたことで、ドイツ軍は助かった。これがIV号戦車F2型、後にG型と呼ばれるタイプとなる。
限界性能に挑戦したH型
G型以降、事実上ドイツの主力戦車となったIV号戦車について本気で性能強化を狙ったのがH型である。まず戦車砲を43口径長から48口径長の7.5cmKwK 40に強化。また装甲もG型では従来の車体に30mmの増加装甲を盛っていたところ、H型では車体前面装甲を80mmの一枚板にして強靱にしている。
もっとも、装甲強化によって重量は25tを超えてしまい、量産型主力戦車の上限値に迫っていた。というのも、ドイツの鉄道で使用する通常型平床貨車の過重上限が26tなので、これ以上重くなると鉄道輸送のハードルが上がってしまうのだ。戦車は動かすだけで壊れていく精密機械だし、とにかく燃費が悪いので、戦場の近くまで鉄道で運び、自走距離はなるべく少なくしなければならない。これは現代の戦車でも基本は同じ。確かにドイツにはティーガーやパンターなどヘビー級の車両を輸送できる鉄道貨車もあるけれど、これはあくまで例外設備。数が多い主力戦車の移動に手間がかかりすぎるのはとても受け入れられない。
なお、H型の生産は1944年2月で終了して、以降、IV号戦車は最終型のJ型に切り替わる。ただしこちらは砲塔旋回モーターと発電機用補助エンジンを廃止した生産簡略型というのが基本なので、外見はH型とほとんど同じである。もっともH型以降のIV号戦車は常にあちこちと細部の改造が続けられている。そうした差異を読み解くマニアもいたりするのがIV号戦車の奥深さ、そして面白さだったりする。
ゲルハルト・フィッシャー少佐
1934年に陸軍に入隊したフィッシャーは、ポーランド戦、フランス戦など、開戦直後からIV号戦車に搭乗していた数少ない戦車兵であった。第23装甲師団に転属してしばらくは前線から離れていたが、1942年3月から師団は東部戦線に参加。スターリングラード救出作戦など厳しい戦いで、フィッシャーは長砲身型となったIV号戦車を駆使して、戦場の火消し役として戦った。部隊の再編成時、フィッシャーは新型のパンター戦車に乗り換えている。優秀な戦車兵に新型が与えられるのは自然なこと。それでもフィッシャーはかなり長くIV号戦車に乗って武勲を上げ続けたベテラン戦車兵であった。
何個でも作りたい傑作戦車模型
1996年の発売以来、多くのモデラーに戦車模型の楽しさを伝えて続けてきた傑作プラモ。『ガルパン』の影響もあって、普段戦車を作らないモデラーにまで届いたという伝説的プラモです。車両のボリュームもちょうど良く、組むだけなら週末でも充分完成するほど。戦車模型を初めて作ってみたいという人にも本当にオススメできるプラモです。
1/35 ドイツ Ⅳ号戦車(初期型)
●発売元/タミヤ●4290円、発売中●1/35、約20cm ●プラキット
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