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ドイツ陸軍の本命「Ⅲ号戦車」その改良と進化の歴史とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

2024.09.15

いまさら聞けないすごいヤツ!!/ドイツⅢ号戦車●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2024年10月号(8月23日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 ドイツ III 号戦車 

イラスト/大森記詩

 「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は、前回の「ドイツII号戦車」に続いて、「III号戦車」をご紹介します。ドイツ陸軍本命の戦車として開発されたもので、他国の戦車と比べて優秀で先進的なものでした。しかし、必要な場所に間に合わず、その能力に見合った評価をなかなか得ることができなかったという側面も持っています。早速プラモデルとしてもとても人気のある戦車「III号戦車」の物語をみていきましょう!


ドイツ III 号戦車

全長約/6.41m
全幅/2.95m
全高/2.51m
重量/22.7t
最高速度/40㎞/h
エンジン/HL108TR(初期型)HL120TRM(量産型)4ストロークV型12気筒ガソリン


懸架方式/トーションバー方式(D/B ではリーフスプリング)
武装/主砲 A-F型 6.5口径3.7cm KwK 36、G-J型 42口径5cm KwK 38、L-M型 60口径5cm KwK 39、N型 24口径7.5cm KwK 37、7.92mm 機関銃MG34 ×2
乗員/5名


ドイツIII号戦車左側面イラスト
III号戦車L型 第10戦車師団 1943年2月 チュニジア
ドイツIII号戦車N型砲塔イラスト
III号戦車N型 砲塔
▲火力支援車輌の不足に対処するため、III号戦車の主砲を高性能榴弾や成形炸薬弾も発射可能な短砲身7.5cm砲に換装した最終生産タイプのN型の砲塔
ドイツIII号戦車正面イラスト
ドイツIII号戦車背面イラスト

III号戦車L型 第502重戦車大隊 第1中隊133号車 1942年9月 ロシア


III 号戦車

解説/宮永忠将

ドイツIII号戦車上面イラスト
III号戦車L型 ヘルマンゲーリング戦車連隊 1942年ドイツ国内

 ドイツ陸軍本命の戦車 

 第一次世界大戦の責任を負ったドイツは、戦車など新兵器の開発を禁じられたが、その分、熱心に新兵器を研究した。ドイツ軍での再軍備が可能になった将来に備えて、新兵器をいかに活用するかという研究をしていたのである。
 ドイツ陸軍のIII号戦車は、そうした研究の蓄積の末に開発された。戦車の可能性を実証し、訓練に使用するためにI号戦車とII号戦車を開発、量産する一方で、本格的な研究が重ねられたのがIII号戦車なのだ。
 最初に開発されたIII号A型は、戦車砲こそ3.7cmと口径は小さかったけど、砲身の長さは46.5口径長、つまり砲弾の直径の46.5倍もあって、これはかなり長い。一般に砲身が長いほど、射撃時に砲弾が受け取るエネルギーが大きくなって、貫通力が上がる。III号戦車は敵戦車との戦闘を想定していたので、貫通力は重要であった。また将来、強力な戦車が出現する可能性に備えて、大型の砲塔が搭載できるように、砲塔リングをあらかじめ大きめに作ってあった。
 乗員の多さも、III号戦車の優れた点だ。複雑な戦車の操作を効率よくこなすため、乗員は、車長、操縦手、砲手、装填手、無線手の5名とされた。当時、各国の戦車の乗員は3~4人であったので、これは見えない戦力の差となって現れた。

 絶え間ない改良と進化の歴史 

 ドイツ軍の主力戦車となるIII号戦車は、まず試作を兼ねた改造タイプとなるA~D型を、不具合を修正しながら少量ずつ生産してから、本格的量産型のE型に移行した。
 ところが、1939年9月に第二次世界大戦が始まったとき、III号E型はまだ100両も完成していなくて、全体としては主力戦車の働きができなかった。次いでドイツ軍は戦車砲を5cmに強化したG型の生産を急いだが、これもライバル国のフランスとの戦いには間に合わなかった。
 このように、III号戦車は同時代の他国の戦車と比べて優秀で先進的であったのだけど、必要な場所に間に合わず、その能力に見合った評価を得られる機会を逃し続けていた。
 これが一変したのが北アフリカ戦線。苦境にある同盟国イタリアを救うために派遣されたエルヴィン・ロンメル将軍の戦車部隊には、数多くのIII号戦車が配備されていたのだ。北アフリカはサハラ砂漠に繋がる礫砂漠の戦場で、環境は過酷であるが、まさに戦車戦の舞台にふさわしく、数々の名勝負が繰り広げられる。そのような戦いの中で、III号戦車の強化改造が絶え間なく続き、戦車砲も従来の42口径長から60口径長の長砲身型5cm砲に換装された。キットにもなっているIII号戦車L型は、III号戦車の限界まで装甲を強化した最終バージョンである。この戦車を量産型GMに例えるなら、フルアーマータイプとなるのだろうけど、宇宙世紀にさえそのようなバージョンのGMは存在しないのだから、III号戦車L型は開発時には想像もされていなかった魔改造車両ということになる。
 以降、渡河能力を向上させたM型や、IV号戦車の余剰戦車砲をポン付けしたN型も製造されたけど、III号戦車としての正統進化はL型で完了。ただ世界大戦も後半戦に入る頃には、L型でも非力となってしまい、後継戦車にその座を明け渡すことになった。


ハインツ・グデーリアン 上級大将


 軍備制限時代、保有兵力を抑えられたドイツの国防に機械化は不可欠であり、その火力の中核になるのが戦車だと確信して、ドイツ軍の装甲部隊創設に活躍した中心的人物。初期のドイツ戦車はグデーリアンの着想から形になったもの。特に当時は高額装備だった無線機を戦車の標準装備にして、戦車兵が充分に連携訓練を積んでいたことは、戦争前半におけるドイツ戦車部隊の戦術的なアドバンテージとなった。また戦車部隊を率いる前線指揮官としても極めて有能で、配下部隊の常識外れの進撃速度から「韋駄天ハインツ」の異名でも知られる。


戦車模型のかっこよさがバランスよく詰まっている「III号戦車L型」

 III号戦車は砲塔や足回りのかっこよさをちょうど良いサイズ感で楽しめるモチーフ。タミヤの1/35スケール III号戦車L型は、そんなIII号戦車を初めて作ってみるのにちょうど良い傑作プラモです。

タミヤ1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型
▲L型の特徴ともいえる操縦手席前面や主砲防盾部の増加装甲板などによって迫力あるスタイルを楽しめます
タミヤ1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型砲塔アップ
▲砲塔内部も主砲装填部や車長用シートまで再現
タミヤ1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型ランナー
▲車体はシンプルなパーツ構成。足周りも的確なパーツ分割でストレス無く組み立てられます
タミヤ1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型履帯製作途中写真
▲履帯はベルト履帯なので、プラ用接着剤で両端を接着するだけで完成します
タミヤ1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型戦車長フィギュア
▲戦車長のフィギュア1体が付属

1/35 ドイツ Ⅲ号戦車 L 型

●発売元/タミヤ●3630円、発売中●1/35、約17.6cm●プラキット


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