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「RG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0」発売を記念して新旧キット開発者にインタビュー! Ver.2.0へ進化する道のりとは

2024.09.05

「RG RX-78-2 ガンダム」新旧キット開発者対談 月刊ホビージャパン2024年10月号(8月23日発売)

——近年のガンプラは、HGであればデザインの再現性と可動性を両立することに力が入っていますが、RGは企画・開発者のアイデアなどが重要になるアイテムになっているという感じでしょうか?

大久保 HGの3〜4倍は大変なアイテムにはなっていますね。HGの場合は、仰られた通り、可動性と形状の再現に加えて、商品としてのポイントを1〜2個入れていくというスタンスですが、RGだとポイントを4〜5個くらい入れ込まなければならない。デザインに関しても、RGオリジナルデザインで商品化することを許可いただいているので、設定画を追いかけて立体化するだけでなく、そこから「モビルスーツに対するリアルというのは何なのか?」を考えて、面白さみたいなところを付加しなければいけない。企画を考えて、それに合ったデザインを考えるというところで、大変な部分は多いです。

——開発期間も当然ながら長くなるわけですね。

大久保 全然長いですね。普通のHGだと1年くらいですが、RGだとさらに半年くらいはもらう形になります。平均で1年半ですね。Ver.2.0に関しては、2年くらいかかっています。HGは設定画と企画書を用意して設計にまわすことで作業を進めることができるのですが、RGは新たに取りかかる要素も多いので、構造試作みたいなものを確実に用意しなければならないですから、手間も多くかかっています。

——そうした基礎要素があって、さらにVer.2.0という部分での苦労も大きかったのでしょうか?

大久保 Ver.1.0がすでにあったので、そこまでの苦労はなかったというのはあります。西澤さんがやっていたVer.1.0は、当時のホビーディビジョンができる技術を全部集約するということで、かなり実験的な作りになっていて、「この構造は初めてやります」みたいなところが多かったと思います。そこから年を重ねて、RGシリーズの作り方が根本から違うものになっていき、進化したなかでさらにその上を目指すというところでVer.2.0を作ったので。苦労という点では、立ち上げとなったVer.1.0のほうが大きかったと思います。

西澤 RGはその時代ごとに見える最高の形を毎回目指してやっている感覚はありますね。毎年、いろんなRGが出てきますが、毎回見える形が新しくなっていって、その時の本物の姿はこうあるべきというのをずっと見せつけられているような感覚があるかなと。だから、Ver.1.0もひとつの正解の形だし、Ver.2.0も正解の形だと思えますね。

——西澤さんから見て、Ver.2.0にはどんな感想を持たれましたか?

西澤 滅茶苦茶格好いいですよ。「僕がやった」と言いたいくらいです(笑)。僕がやった時からは、見せ方が全部新しくなっているとは感じますね。ユーザーの視点もそうですし、企画担当者の構え方というか、気持ちみたいなものも昔とはちょっと変わっているんだと思います。やはり、時代を経てきたというのが大きいでしょうね。当時、今ここにあるものができたかというと、多分できない。仮に出せたとしても、反応としては微妙だったかもしれない。だから、やっぱり今あるべき形なんだと思いますね。

——アプローチは時期に合わせて変化していますが、RGというブランドの根本的な考え方は変わらずという感じなのでしょうか?

大久保 そうですね。「ガンプラのリアルとは何か?」というものを考えるところは変わっておらず、ちゃんと現実感のあるモビルスーツであり、プラモデルというよりも遠い未来に作られたらきっとこういうものができるだろうという考えは、ずっと根底に持ち続けているかなと思います。

——RGシリーズ上の変化で一番大きいのは、アドヴァンスドMSジョイントが、フレーム構造として使われなくなったことにあると思います。これに対しては、企画的な制約などの影響もあったからでしょうか?

大久保 全身フレームを使っていると毎回同じような体型になってしまって、ちょっと変わった体型のものだとアドヴァンスドMSジョイントを使っても再現しきれず、逆にリアルを追えなくなるという部分があったんです。実は、このVer.2.0ではインサート成型は一切使っていないんです。インサート成型のアドヴァンスドMSジョイントを使うのがRGという考え方があったのですが、それを変えていこうと思っていて。ちゃんと意味があるところに使用する方向に変えていく。今回は、Ver.2.0用の武器セットで、ガンダム・ハンマーのチェーン部分にインサート成型を使っています。RGの開発においてインサート成型が縛りにならないようにしようということです。

西澤 ブランドを進めるうちに「インサート成型が入っているとリアル」みたいな言葉というか、イメージにどこかで変わっていたのかもしれないですね。

大久保 インサート成型がどこか縛りに感じていたところがあったので、今回は使うのをやめることで、より自由に78ガンダムのVer.2.0のあるべき姿を逆に追い込めたかなという感じですね。

——そうした、アドヴァンスドMSジョイントからの脱却も含めて、組み立てやすさも設計的には意識されているのでしょうか?

大久保 すごくみっちりと詰まった感じに見えるのですが、パーツ数はなるべく少なくするようにしています。一方で、腕だったら腕の構造をタイトにしつつも、「きっとガンダムの腕はこういう構造になっているんだ」という部分を理解しながら、「ああ、なるほど」と思いながら各部位を組めるようにはしています。それから、組みやすさに加えて、飽きずに組むことができるという要素も今回は取り入れたところでもあって。腕の動きやディテールを組み立てながら理解できるので、本当に78ガンダムを組み立てているような感覚が持てるようにしています。

——フレームと装甲の裏側のモールドが連動している感じに見えますね。また、頭部バルカン砲の表現もものすごく細かい。

大久保 その辺りはこだわったところです。バルカン砲の内部は組み上げたら見えなくなってしまうところなのですが、組んでいるときに内部の構造に納得して、楽しみながら組むことができる。構造体を組み立てるという部分を意識した結果、開発時にはいつもの倍くらいの時間をかけてディテールをたくさん入れるような感じになっています。

——Ver.2.0の内部構造の表現などは、初期のMGシリーズの考え方にも近いですね。

久保 MGやPGをはじめ、昔の1/72メカニック・モデルなど、今までガンプラがやってきた考え方がベースにはなっています。「ガンダムの中身はこうなっているんだ」というホビーディビジョンが追い続けていたものの最新版がこれですよと。みんなが思っていること、考えていることを改めて掘り直したというところはあります。

——一方で、横浜の動くガンダムなどが実現したことで、ガンプラの可動の見せ方や考え方も変化があったりするのでしょうか?

大久保 そうですね。かなり変わりました。横浜のガンダムで特に思ったのは、ヒジやヒザのマルイチモールドのところで曲がるのが格好いいし、ガンダムらしさのひとつだというところですね。ですので、Ver.2.0もフィールドモーターを中心に曲がるというところは意識しようと思いました。お客さんも横浜でガンダムの動きを見て「これがガンダムの本当の動きだ」と認識したはずなので、そこはちゃんと踏襲しなくちゃいけないと思いました。

——Ver.2.0では、今までのアイテムからフィードバックした技術などはありますか?

大久保 お客さんからはPGUを参考にしたのではないかという質問をされたのですが、PGUからは技術的な面ではあまり参考にせず、むしろコンセプトを参考にしています。技術的な部分でいうと、RG ゴッドガンダムがアクションをウリにしていたので、そこで採用したロック機構などを取り入れて、動かしやすく、またポーズを決めやすくしていますね。

——西澤さんとしては、担当されたVer.1.0の発売から約15年が経過したわけですが、時間的な感慨はありますか?

西澤 ものすごく感慨深いですね。当時、自分の考えていた形があり、そこから時間が経ってまた新しい形が提示されたので、驚きしかないですね。

——RGの進化に関しては、おふたりはそれぞれどこがシリーズ的にはターニングポイントになったと思われていますか?

大久保 僕が外から見ていた感じだと、最近ではありますが、サザビーあたりだと思いますね。

西澤 僕はRGを担当していたのがΖガンダムやフリーダムガンダムくらいだったので、サザビーの時は担当を外れていて。実際に見て「こんな感じに変えていったんだ」と思いましたね。

大久保 デザインがかなり今風で、凹凸が多いですよね。先ほど言った影の落ち方を意識していて、さらにインサート成型はかなり絞って適材適所で使うようになっていて。ホビーディビジョンのすべてを詰め込むのではなく、サザビーに寄り添ったものの作り方をしているようには感じました。あとは、インサート成型のフレームをやめて一部のみ使うというところでは、トールギスもターニングポイントになっているかもしれないですね。

西澤 その頃から「今のリアルとは何か?」というのをちゃんと考え始めたんじゃないですかね。いろいろと変わりつつも、今もRGというブランドが続いているというのは嬉しいですよね。

——西澤さんがVer.2.0を見て驚いたポイントはありますか?

西澤 やっぱり、「コア・ファイターを曲げる」という発想ですね。なかなかそこにはいかないので。

大久保 僕も企画の段階では、可動性を重視したコア・ファイターがないタイプと、コア・ファイターが入った可動が制限されるタイプの胴体を別売りにするようなことを言っていたのですが、設計が「そんなぬるいことを言うな」と。コア・ファイターが入った状態でも胸が曲げられるようにこちらに任せてほしいと言われて。その後、コア・ファイターを避けながら胸を曲げるような構造を考えたのですが、どうにも自然な曲がりにならないなという話になっていたんです。その2週間後に「コア・ファイターを曲げます」と設計が言ってきたんです。「コア・ファイターは曲がらないだろう」と思っていたのですが、何度か動かす案が出てきて、1ヵ月後には自然な胸の曲げに連動して動くコア・ファイターができ上がったという感じです。

——他のブランドに比べて、RGは各担当ごとのプレッシャーは大きいのでしょうか?

西澤 大きいと思います。自分もブランドを立ち上げましたが、当時でいえばガンプラの最高峰はPGで、1/60スケールということでサイズは違っていたのですが、RGでは「これがガンプラの最高峰であるべき」みたいな立ち位置に持っていこうと思っていましたし、ブランド的なバランスはどこに置くべきか考えていて。結果的には「1/144スケールの最高峰」という方向性を当時決めていきました。

大久保 「最高峰」といわれると、いつも「本当にこれが最高峰なの?」という思いが付きまとって、大体それがプレッシャーになるんですよね。

西澤 開発時にある技術は、とにかく全部使う。ガンプラで過去に使われてきた技術、新しく構築された技術など、その時の最高峰を全部集めてやろうというやり方をしたのが、このブランドの立ち上げの考え方だったのですが、ではそのスタイルでずっと続けられるかといえば、毎年そんなに新しいことは起きないですよ。ガンプラの成長みたいなものと一緒に、都度都度新しくなっていったものを、また新しい形で作ったというイメージに近いかもしれないですね。

大久保 最高峰は、翌年には最高峰じゃなくなってしまうので、常に更新していかないといけない。

西澤 そういう意味では、常に新しいものを追いかけている感じかもしれないですね。

——ちなみに、来年は「ガンプラ45周年」になりますが、その時にVer.2.0を出すという選択肢はなかったのですか?

大久保 僕らのコンセプトというか、ラインナップの組み方に関していうと、周年だから新しい78ガンダムを作らなくちゃいけないというルールは実はなくて。たまたま作っていた企画に近しいものを周年に合わせて出していくというのがほとんどです。今回は、横浜の動くガンダムの展示が「ガンダム45周年」に終わるということで、そこから間を空けて新しいガンダム像としてのVer.2.0を出すよりも、やはり45周年のタイミングがいいだろうということで決まりました。もちろん、来年の「ガンプラ45周年」に関しては、78ガンダムではないですが、それに見合う新しいガンプラをお見せする予定です。

——本日はありがとうございました。

(2024年7月、バンダイホビーセンターにて収録)

RGはその時代ごとに見える最高の形を毎回目指してやっている感覚はありますね

画像を見ただけで新しさやすごさが分かる、お客さんに伝わることを一番の大命題としてやっていました

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