戦艦「金剛」3つの変遷期を分かりやすいイラスト図で解説!【日本海軍艦艇カラーガイド1 日本の戦艦12隻】
2024.08.29戦艦金剛の変遷
新造時 大正2(1913)年8月~
全長 214.58m
基準排水量 26,330t
英国産の巡洋戦艦だが日本海軍の要望も取り入れる
英国で建造され日本に回航された時点の金剛の姿。国内で建造された姉妹艦との一番の相違は主砲上に装備した子砲(ねほう)で、水雷艇撃退用の速射砲である。
原設計はヴィッカース社の輸出戦艦案であるが、艦首形状は日本海軍の主力艦で標準となっていたクリッパーバウで、英国主力艦などとは微妙にセンスが異なるあたり、最終設計に参加した日本側技術者の意向も反映しているのだろう。
砲塔上に装備された子砲。そんな装備位置で大丈夫なのか、とも思うが、主たる用途は水雷艇撃退用なため主砲砲戦中に使用することはない。砲塔上の装備は射界が広く取れるから有利ということだったのだろう。金剛だけの装備である。
金剛の主砲塔は側面が角ばっているが(ナックル)、これは英国建造の金剛と輸入部材を組み上げた比叡だけの特徴。完全ではないものの国内で部材製造された姉妹艦の榛名、霧島は側面にナックルのない湾曲した形状の砲塔となっており、容易に見分けが付く。
金剛の艦首形状は、欧州海軍の軍艦に多い垂直艦首ではなくクリッパーバウ。こちらの方が波切が良好だが、欧州海軍なりの美意識というものらしい。金剛の発注に際しては日本向けに設計変更も実施している。
第二次改装時 昭和12(1937)年1月~
全長 222.05m
基準排水量 32,720t
巡洋艦隊と随伴できる高速性を誇った
二度目の大改装によって速力30ノットの高速戦艦化した金剛。艦上構造物は複雑になり、艦尾延長と機関換装によって巡洋艦戦隊と協同できる速力を得た。艦種は依然として「戦艦」であるが、日本海軍は空母や巡洋艦と協同できる戦艦を非公式に「高速戦艦」として水上砲戦部隊の中核である「戦艦」と区別していた。
艦尾延長は大改装後の日本戦艦の特徴で、速力の維持、向上に寄与しているが、艦尾浮力が大きくなり、前後のツリムバランスが崩れ気味であったことも事実。一度完成した船体のバランスを弄るのは難しいことなのだろう。
大改装によって追加された大型バルジ。新造時より防御力は格段に改善された。気層を拡張し魚雷命中による膨張ガスや衝撃波の威力を弱める効果を持つが、弾片の威力を効果的に減少させるにはもう少し幅が必要で効果は限定的。
艦橋構造物は第一次改装時よりもさらに複雑で重厚になり、背面に補強用のガーターが追加された。艦橋頂部の露天の防空指揮所は第二次改装直後にはなく、太平洋戦争開戦前に追加された。
レイテ沖海戦時 昭和19(1944)年10月~
全長 222.05m
基準排水量 32,720t
対空兵装を強化する金剛
レイテ沖海戦時の金剛は高角砲を増備、甲板上に機銃多数を追加する一方で、代償重量として副砲の一部を降ろした。副砲の砲廓は兵員の居住空間も兼ねており、増加した機銃員の収容スペースにもなったはずである。電探も、水上、対空見張り用を一通り装備しており、サマール沖海戦では、米護衛空母に電探射撃も実施した。金剛はこの姿でレイテ沖海戦の戦いの帰路に潜水艦の攻撃で沈没した。
船体の舷窓の多くは閉鎖されている。これは被弾、至近弾によって艦内に海水が浸入することを防ぐためで、戦局の悪化もあってレイテ沖海戦の時期には下部の舷窓はほぼ塞がれている。
増備された高角砲。従来からの八九式12.7cm連装高角砲だが、片弦1基が増備された。高射装置は追加されていないので対応可能目標数は1機のまま。高速化で射撃機会の減る敵機に単位時間あたりの門数を増やし、素早い撃破を図った。
甲板上に追加された25mm機銃。日本側の記録では威力不足を指摘する評価があるが、このうちいくらかは米軍の艦上攻撃機TBFアベンジャーが翼内に装備した機銃の発射炎を命中の閃光と誤認した結果かもしれない。
今回はここまで! 次回は戦艦金剛の戦跡を美麗カラー写真とともにとともにお届けいたします!!
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公開は明日(2023年8月30日)の11時から!
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■「日本海軍艦艇カラーガイド1 日本の戦艦12隻」
終戦から79年。現在もなお、研究家たちの手で太平洋戦争当時の艦艇の研究が続けられており、日々多くの資料が発見されています。また、新たな知見とコンピュータによるフルカラー彩色が施された写真など、さまざまな表現手段も登場してきています。
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