HOME記事スケールモデル【ROAD to RALLY JAPAN】introduction 1 MG メトロ 6R4

【ROAD to RALLY JAPAN】introduction 1 
MG メトロ 6R4

2021.04.03

ROAD to RALLY JAPAN【BELKITS 1/24】 月刊ホビージャパン2021年5月号(3月25日発売)

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 新連載!「ROAD to RALLY JAPAN』。11月11日〜14日に愛知と岐阜で開催される10年振りの復活となる『Rally Japan 2021』応援連載の企画。それならば、現在ラリーディオラマの連載を進行中の小池徹弥がそれと絡めて、『Rally Japan 2021』までの毎月連載にしてしまおうとスタート。とはいえ、さすがに毎月ディオラマ製作は無理なので、私小池が本誌カーモデラーに適材適所依頼。ラリーやラリードライバーの多彩さを模型を通して紹介していきたいと思います。
 また、加藤雅彦による「Commentary on the RALLY」ではラリーのことをわかりやすく解説していくので合わせてご覧ください。(小池徹弥)

saturday night fever!

 さて、連載第一弾に選んだ車種は「MG METROR 6R4」。実はラリーディオラマ連載「to B continued」のひとつとして進めていたもので、新企画立ち上げにより、両連載となりました。キットはBELKITS製で、今一番新しいラリーキットになります。キットは伝統の「RAC Rally」。毎年最終戦として行われてきたこのラリーの特徴は「天候」。英国の雨や雪により車体は泥まみれ。私の中ではベスト3に入る汚し甲斐のある好きなラリーです。ウェールズの森と公園(サットンパーク)、市街地とロケーションの多彩さも魅力のひとつ。ディオラマ的にもシチュエーション選びがおいしいイベントです。

▲全景。夜の森林地帯ということで、湿度の高さを表現している。ツヤのある地面と奥側に配置された積み上げられた木材の部分も色濃く仕上げている

▲ドライバーとナビゲーターはタミヤ製のものを流用。ボディはエポパテで製作した

▲車体の汚れは湿気のある土がへばりつくような雰囲気で施されている。タイヤ周辺は特にハードに仕上げて真っ黒
▲リア側の地面に施した塗装には蛍光塗料をまぜておいて、ブラックライトを当てることでバックファイアの照り返しを表現。テールランプやマフラーに仕込んだLEDの光量補助にもひと役買っている

▲フロント側の地面は白く、リア側は赤にしてライトアップ表現の補助とした

▲ドールハウス作家シック・スカート氏の方法を参考に100円ショップで販売されているLEDライトグッズを分解・流用して作ったお手軽ライトアップギミック。肉眼ではそこそこ光量もあるように見えるので、車模型のデコレーションに積極的に取り入れたい

■小池、電飾やるってよ

 とにかく電気や電波に疎い私。カズレーザーと違い電気、電波、見えない物がわからない。ではなぜ電飾してみようと思ったか、それには2つの理由がありました。
 まず1つめはメトロの特徴でもあり、このキットにも付属しているライトポッドの存在。本当はライトポッドカバーが付いてるほうが好みなのですが、とある理由によりライト点灯に挑戦してみることにしたのです。それは、知人のドールハウス作家でディオラマビルダーでもあるシック・スカート氏のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCY5csWUwNObEVd9wfnK9D5Q)の存在。注目したのはハンダを使わない電飾。100円ショップのLEDを使った電飾の製作例を見ていて、これならできるかもと電飾してみたわけです。
 氏のYouTubeは製作方法をかみ砕いてわかりやすく目からウロコ的なことも多くてものすご〜く参考になるので、一度覗いてみては!?

■ナイトシーンを考える

 上記の理由で今回は夜のSS(スペシャルステージ)で。毎回考える(想像、妄想)のはそのラリーの特徴や特異性の抽出。そんな中でもRACラリーは特徴の多いラリーのひとつで、シーン選びも楽で割と演出しやすいです。
 今回選んだのは山側のSSの伐採林の貯木林道。いつものように市販の額にスタイロフォームでベース製作。伐採された木材は庭で採取。そしてもうひとつの試作である、以前からやってみたかった動画の再現で、漆黒の林道と強烈なライトポッドの光。電飾だけではなくベース自体に直接イラストや絵画などの表現方法を3Dに落とし込んでみました。
 最初はフロントの光源とテールランプの電飾のみを考えていたのですが、動画を見ていると、コーナーではバックファイアの光源はフロントのライトに負けず明るい。結果、前後とも派手にするために闇の部分は黒く塗り潰してみました。そして、to B continuedシリーズの共通点(縛り)である走行シーン。ベースには市販の額縁を使用し枠にはそのラリーやドライバーなどに関連した国旗のカラーリングに塗装。これはMOOK『カーモデリングマニュアル』掲載の「BOX THEATER」シリーズからの流れです。今回はユニオンジャック色ではなく、ウェールズの旗からの白、緑、ドラゴンの茶の色調です。
 さて、始まった新連載。立ち上げの準備の関係から、次回も小池のディオラマの予定。その後からは、小池が考えたライターの特徴を捉えたシリーズになると思います。遊軍的に小池も登場するかも。

BELKITS 1/24スケール プラスチックキット
MG METRO 6R4 LOMBARD RAC RALLYE
1986 Jimmy McRae/Ian Grindrod 使用

saturday night fever!

ディオラマ製作・文/小池徹弥
資料提供/清水正幸(青島文化教材社)

MG METRO 6R4 LOMBARD RAC RALLYE
1986 Jimmy McRae/Ian Grindrod

●発売元/BELKITS、販売元/青島文化教材社●7260円、発売中●1/24、約15cm●プラキット


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Commentary on the RALLY Vol. 001

文/加藤雅彦

「“ラリー”とは何か」

 モータースポーツ界も新型コロナウイルスの影響を受けてしまい、2020年は中止や延期を余儀なくされるイベントが数多くありました。世界選手権のように国から国へと転戦し、また多くの国の人達がかかわっているとなおさら開催が困難だったことでしょう。
 そんな中、2021年の世界ラリー選手権、通称:WRCは無観客など本来の姿ではないものの無事2戦を終え、このまま順調に進めば最終戦の第12戦として11月に愛知県、岐阜県を舞台にラリー・ジャパンが開催されます。2010年以来の開催が今から待ち遠しい方もたくさんいらっしゃることと思います。

▲こちらが「Rally Japan 2021」公式ビジュアル第1弾。今回は愛知と岐阜で行われる

 とは言え日本でのラリーの認知度は一般的には決して高くないのもまた事実だし、興味はあるけど一体どんな世界なんだろうと思われている方も少なくないのではないでしょうか。WRCにしてもレギュレーションの変更もありますし、10年も経てば参戦しているチームも様変わりしていますからね。スバルや三菱が大活躍していた時代も過ぎ去り、今はトヨタとヒュンダイ、それにフォードを使うMスポーツが選手権を争っています。ちょっと油断しているうちに状況は変化してしまうものですが、この機会にラリーの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
 そもそもラリーとは「再び集まる」という語源があるように各地から1ヵ所に集合するというのがイベントの始まりだったようです。中世の騎士達が領主のもとに一番速く馳せ参じるのは誰かという競技をしていたそうで、それが自動車競技へと姿を変えていったのはヨーロッパでは自然な流れだったのかもしれませんね。

▲ヨーロッパではラリーの人気が高くコロナ禍以前は老若男女が観戦に押し寄せた。ラリーに関する書籍も数多く出版されている

 自動車競技としてのラリーは1911年に開催されたラリー・モンテカルロが始まりとされています。ヨーロッパの各都市から1000km以上も自走してモナコに集まるコンサントラシオンと呼ばれるステージがあり、当時は競技の主体だったことからもラリーの起源をうかがい知ることができると思います。このコンサントラシオンはラリー・モンテカルロがWRCに組み込まれてからも1995年まで実施されていたので、例えばタミヤから発売されているカストロール・セリカ(93モンテカルロラリー優勝車)のデカールにもコンサントラシオンの出発都市であるフランスのREIMS、ドイツのBAD HOMBOURGの文字を見ることができます。今日ではルート中に設定されるスペシャルステージ、略して“SS”でのタイムを競うのがラリー競技のメインになっていますが、モンテカルロで開催されるヒストリック・ラリーではコンサントラシオンが設定され往年の雰囲気も楽しめるイベントとなっています。

▲世界3大ラリーのひとつに挙げられるRACラリー。1995年はスバル・インプレッサで出場のコリン・マクレー/デレック・リンガー組が優勝した
▲タミヤのカストロール・セリカのデカール。カーナンバーの上に都市名が表示されている。またラリープレートと言えばこのラリー・モンテカルロのものをイメージされる方も多いだろう

 1932年にはイギリスでRACラリー、現在のウェールズ・ラリーGBが、1953年にはアフリカでサファリ・ラリーも始まりました。この3つのラリーが世界三大ラリーとされています。510型ブルーバード、S30型フェアレディZや初代ランサーなどの活躍もあったので日本ではラリーと言えばサファリ・ラリーを思い浮かべる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 日本車の活躍と言えば三菱パジェロが一躍有名になったパリ-ダカール・ラリーも馴染み深いと思います。現在では名称もダカール・ラリーとなり走る場所も当時とは変わりましたが、その過酷さと冒険の精神は引き継がれています。このダカール・ラリーに代表される冒険的かつ長距離、長時間で行われる競技はラリーレイドやクロスカントリー・ラリーと呼ばれ、WRCなどとは区別されがちですが競技方法はそう大きく変わりません。
 競技方法の違いで言えば2005年までの全日本ラリー選手権でも採用していたアベレージラリーという方式のラリーもあります。簡単に言うと絶対的な速さより時間の正確さを競うスタイルで、一般道を閉鎖してSSを設定することが難しかった日本ならではのラリーと言えるかもしれません。もちろんハイアベレージ区間というタイムトライアル的な区間もあったり見どころはいろいろありましたが、観戦する側からするとちょっと複雑でわかりにくかったと思います。
 2001年には日本でも日本アルペン・ラリー、インターナショナル・ラリー・イン北海道という2つのSS主体のラリーが開催され、フルアタックするラリーカーを見ることができたのはひとつの転機になったと言えるでしょう。WRCで戦っているワールドラリーカー(WRカー)が日本の公道を走る姿にも感動したものです。これでWRCがグッと近くに感じるようになりましたし、実際この3年後の2004年に日本で初めてのWRC、ラリー・ジャパンが北海道で開催されることになるのです。
 ということで、次回はそのWRCについて書きたいと思います。

▲「インターナショナル・ラリー・イン北海道」のスタートシーン。2001年は日本のラリー界にとってターニングポイントとなった年と言えるだろう
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小池徹弥(コイケテツヤ)

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