HOME記事特撮【ネタバレ有】映画『仮面ライダーガッチャード』プロデューサー 湊 陽祐×松浦大悟インタビュー リピーター歓迎!映画をもう一度楽しむためのポイントを、1万字超のロングインタビューで解説

【ネタバレ有】映画『仮面ライダーガッチャード』プロデューサー 湊 陽祐×松浦大悟インタビュー リピーター歓迎!映画をもう一度楽しむためのポイントを、1万字超のロングインタビューで解説

2024.08.01

映画『仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク』
東映プロデューサー
湊 陽祐
×
松浦大悟

 大ヒット上映中の映画『仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク』は『仮面ライダーガッチャード』第16~18話に登場した仮面ライダーガッチャードデイブレイクの生きる未来を救う物語だ。話題を呼んでいる本作から、今回は東映の湊 陽祐プロデューサーと松浦大悟プロデューサー補の対談をお届け! 映画の見どころや裏話を、ネタバレありでたっぷり語っていただいた。これを読めば映画が300万倍面白くなること間違いなし!


――まず、夏の映画をデイブレイクの話にしようと考えられた経緯をお教えください。

 発端はデイブレイクのキャスティングからでした。『仮面ライダーガッチャード』はケミーの声で豪華な声優陣を揃えてきたのですが、そんな中で年末~年始の物語の起爆剤となるデイブレイクを際立たせるためには声優さんではなく俳優さんやタレントさんを起用したいと考えていました。せっかくならまずは高望みをしてみるところから始めて、そのときの候補だったDAIGOさんがどうやら好感触だという話になったんですが……ここでやっぱり数話、声の出演だけのキャラクターとして起用するのは贅沢すぎるのではないかと不安になりまして(笑)。じゃあ映画にも出てもらえばいいんだ! と思いついたのが始まりです。

松浦 なので、DAIGOさんに声で出演していただくことが決まった段階から映画はデイブレイクの話にしようという形で進めていましたね。余談ですが、じつは最初のアイデアではデイブレイクの変身者は未来の宝太郎じゃない可能性もありました。「強くてカッコイイもうひとりのガッチャード」が出てくる、ということだけが先に決まったんです。ただ、それだとデイブレイクが宝太郎を食ってしまわないかという話になって。一番大事なのは、主人公である宝太郎。だからデイブレイクの魅力と宝太郎の主人公性を両立させるためにはどうしたらいいか考えた結果、《未来》の宝太郎=デイブレイクというアイデアが出てきました。

――未来の宝太郎にDAIGOさんというのは絶妙な配役でしたね。キャスティングの決め手は?

 この人が宝太郎の20年後だと言われたときに納得感があるかと考えて、DAIGOさんの普段テレビに出ているときの明るくて天真爛漫なキャラクターがまんま宝太郎だなと思ったんです。デイブレイクの性格は全然違うものなんですけど、それも普段宝太郎まんまのDAIGOさんがあえてトーンを落として演じたらかっこいいんじゃないかと。

――ついに顔出しの出演となった映画では眼帯も印象的でした。

松浦 眼帯を付けることになったのは、ストーリーを作っている段階で田﨑(竜太)監督から「DAIGOさんが演じる未来宝太郎と本島くんが演じる回想の宝太郎が同一人物だとわからないんじゃないか」と指摘が入ったことがきっかけです。同じ人物であるという記号としてウィッグで髪色にオレンジを入れたりする案もあったのですが、最終的に監督の案として「眼帯」が出て、長谷川さんもそれに乗っかった形です。不思議なことに、眼帯を付けると途端に顔が似てくるんですよ。釣り目の本島くんと垂れ目のDAIGOさんで顔のパーツは全然違うのに、「眼帯付けたらなんか似てきてない?」って。

 台詞の言い方もどこか似てたし、映像で見ると不思議と同一人物だなと分かるんですよね。

――デイブレイクの登場によって過去、未来に別の時間軸とすごく『仮面ライダーガッチャード』の世界が広がりましたよね。その結果映画も未来を旅するというお話に。

松浦 タイムロードのおかげですね。作っておいてよかった、タイムロード(笑)。

 最初は「こいつ強すぎるんじゃない?」と思ったけどいい使い方ができましたね。代わりに負荷がデカいということにして。

松浦 まあそれで言ったらケスゾーとかもめちゃくちゃ強いんですけどね。

――今回の映画の脚本を長谷川圭一さんが担当されることになったのは?

 まず『仮面ライダーガッチャード』は内田(裕基)さんと始めた番組で、長谷川さんは助っ人で入ってくださったという経緯があったので、長谷川さん自身が「後半は自分の担当回を減らそう」と最初におっしゃっていたんです。であれば長谷川さんにはぜひ夏の映画をお願いしたいと番組初期から考えていました。

――内容についてはどのくらい長谷川さんのアイデアを採用されたのでしょうか?

 こちらでやりたいことや冬の映画(『仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦』)を受けての要素だけをお渡しして、物語の軸となる部分はすべて長谷川さんに作っていただきました。

松浦 最初の頃から長谷川さんは「映画はやっぱりドラマだよ!」とおっしゃっていました。ちょうど『ゴジラ-1.0』が大ヒットしていた時期に打ち合わせをしていたこともあって「やっぱりドラマが良ければみんな観てくれるはずだから」と。その頃からこの作品ではデイブレイクの救済という部分が一本軸として通っていて、大きくズレることはありませんでした。

――未来の宝太郎のキャラクターは、始めに内田さんが書かれたものを長谷川さんが引き継いだという形でしょうか?

 そうですね。長谷川さんが本編18話までのデイブレイクを観たうえで膨らませたキャラクターを書いていただいたという形です。

松浦 田﨑監督が作った18話のデイブレイクが未来世界に立っている風のフラッシュ、あの1カットからすべてを膨らませたんじゃないかな。テレビのときのデイブレイクはもう少し今の宝太郎に近い、軽めな感じもあったと思うんですが、そこの解釈の違いも複数ライターによる良さだと思います。

 『仮面ライダーガッチャード』は最初から複数ライターで作ると決めていたので、そのメリットは活かしきることができたのかなと思っています。

――未来に行く組と現代に残る組に分かれての戦いも面白かったです。

松浦 未来に行く話にしようとはなったものの、現代がピンチになっていないとあまり緊迫感がないんじゃないかと長谷川さんからお話が出て。デイブレイクを救いに行くのがメインの話ではあるけれど、未来だけの話になるよりは未来と現代の戦いを二軸で走らせた方がいいと考えて、そのためにスパナたちには残ってもらった感じですね。加治木を未来に連れて行ったのは……遊び心?(笑)

 いやいや、いちばん大事なポジションだから! この番組は加治木で成り立ってるんだから!

松浦 そうですね。加治木がいなければあの「頑張れライダー!」はできませんでしたから。

 最初、長谷川さんの案では未来に行くのは宝太郎とりんねのふたりだったんですよ。それを僕らが「なに日和ってるんですか長谷川さん! 行くでしょ、加治木なら!」って(笑)。

松浦 「ふたりだと真面目になっちゃうじゃないですか! 暗い話にしないために加治木が必要なんですよ!」って言ったんですよね。

――実際、かなり暗い話になってしまいそうなところのバランス調整にも気を使われたのでは?

松浦 そうですね。結果それほど暗澹とした雰囲気にはならずに済んだと思います。

 基本は暗くなりすぎず、ただ劇中で描かれていない20年間になにがあったかはいくらでも想像ができるという余白を残した作りにできました。

松浦 宝太郎たちに何があったのか、なぜミナトの墓標だけローマ字表記なのか……。

 (笑)。全員ローマ字だったらまだ変じゃないのにね。

松浦 宝太郎もフルネーム知らなかったのかな。

――小島よしおさんのキャスティングについては?

 これは原島(果歩プロデューサー補)の手柄です。暗い未来世界を明るくするポジションとして人気のある芸人さんをゲストに入れたいということで、小島さんを原島がキャスティングしてくれました。お忙しい中「この日一日だけならいけます!」とお返事をいただけたので、ぜひお願いします! と。台本の段階で小島さんが演じる想定で作っているので、あれだけストーリーにコミットしたポジションに置くことができました。

松浦 田﨑監督の描き方もよかったですよね。ここはネタパート! という感じではなくて、ちゃんと物語の一部として組み込まれていたのがすごく嬉しかったです。「そんなの関係ねえ」の後のめちゃくちゃやりきった感じで白衣着るところとか(笑)。

 ちゃんとあの世界の中で生きている人って感じがしたね。

松浦 あと小島さんといえば「頑張れライダー」のコールですね。あれは撮影前に小島さんと監督とリモートで打ち合わせをして考えたんです。

 そのときに監督から「小島さんのリズム的センスの力をお借りしたい」というオーダーをさせていただいて、それで小島さんから出てきたのがあのリズムだったんです。小島さんがやっていたネタのリズムらしいんですが、あのシチュエーションにはこれが合うんじゃないかと言ってくださったのでそのまま使わせていただきました。

松浦 あれよかったですよね。TTFCのエキストラのみなさんも朝から来て「がんがんがんがん頑張れ! 頑張れライダー!」ってコールの練習を30分くらいずっとやっていただいて。いまだにあのリズムが脳にこびりついてます(笑)。

――あの独特のリズムもあって、応援シーンは特別印象的になっていましたね。

松浦 ケミーの存在や番組自体の雰囲気が明るいことが影響したのか、『仮面ライダーガッチャード』は例年よりも『プリキュア』から続けて観てくれている女の子のお客さんが多いみたいなんです。なので『プリキュア』映画の恒例になっている「ミラクルライト」を使った演出を参考にしたのと、宝太郎の特質は「応援されるヒーロー」というところにあるので、映画のサビの部分は「応援」だと最初から決めていました。

 みなさんぜひ、ご自宅にあるライドケミーカードを持って映画館に行ってガッチャードを応援してあげてください。

松浦 入場者プレゼントのライドケミーカードを開けていただいてもいいですしね。僕はあの「応援」シーンについて、最初はヒーローショーのような、単に倒れたヒーローが応援されて立ち上がるという絵面を想像していました。でも田﨑監督が、映像でやるなら「頑張れ」がちゃんと視覚的に実を結んだ方がいいとおっしゃったんです。湊が列車にこだわっていたのも受けて、みんなの声援で列車が動き出すという画になりました。

 「頑張れ」と言われたときに、頑張ってる人は何を頑張るのか? ということを監督がすごく真摯に考えてくださったことに感動しましたね。

松浦 成果がわかりやすい形で実を結んで、列車が動き出した映像を観たときは気持ちがよかったです。

――列車は湊さんがこだわられた要素だったんですか?

 『仮面ライダーガッチャード』のデザインに蒸気機関車を入れるというのは僕がこだわった部分でした。企画の立ち上げ段階からいろんな人の意見を聞きながら取捨選択する中で、SLだけはデザイン会議の場に僕がSLのおもちゃを持って行って「絶対にこれをやりたいです」と言ったことが始まりです。そこまでこだわっていたので、映画館の大スクリーンで本物のSLを動かしたい、という話は実は冬の映画の際もしていて…そのときは内容的に難しかったので、今回は絶対にやろうと決めていました。そのこだわりを長谷川さんも監督も受け取ってああいうふうに昇華してくださったのでほんとうに感無量です。

松浦 映画企画当初の湊さん、もう変だったんですよ(笑)。どこに行っても『黄金勇者ゴルドラン』のオープニングを見せて「これ! これです!」って(笑)。僕は微妙に世代が違うので汽車はそんなに……と思っていたのですが、結果としてSL、めっちゃよかったですね。負けました(笑)。

 でしょ? めっちゃいいでしょ?

松浦 最初の、未来への旅で本物のSLが動き出すところが特に。秩父鉄道に協力していただいて本物のSLを使ったのですが、映画の始まり感があってよかったです。

 「冒険」なんですよ、やっぱり。子どもたちが映画館に行く、連れてきてもらうというのがすでにひとつの冒険だと思うんです。映画館を選んで来てくれた子どもたちに夏の思い出として乗り物に乗って行くワクワクする冒険を、と思って作りました。よく考えたら同時上映の『爆上戦隊ブンブンジャー』も乗り物なんですけど…(笑)。

松浦 そもそもこっちは仮面ライダーなんだから、乗り物なら本来バイクにこだわるべきなんですよ(笑)。なぜかSLを頑張ったけど!

 バイクも走るしSLも走るということで(笑)。

松浦 でもバイクもけっこう頑張りましたよね。ゴルドダッシュが二台並走して。

 あれは副産物的な側面もあるんです。SLを撮れる場所を探していたなかで、島根出身の制作部が「島根もSL走ってますよ」って教えてくれて、撮影できるか確認してもらったんです。そうしたらSLの撮影は難しいけど市長はぜひ島根でロケを、と言ってくださって。シナリオを固める前にロケハンに行かせてもらったら海岸線が素晴らしいということがわかったので、田﨑監督とこれはぜひ活かしたいと話し合いました。市が協力してくださってるので、東京では難しいような公道での撮影もけっこうさせていただいて、その結果があのゴルドダッシュのシーンでした。

松浦 いい画がいっぱい撮れましたね。海岸で未来宝太郎が佇むシーンとか。

 海に太陽が沈むのは日本海側にしかない光景なんですよね。なので関東近辺では撮れないんです。

松浦 グリオンのドームも出雲ドームというところを使わせていただいたんですが、時空ゲートが下りてくるところも出雲ドームのギミックなんですよ。

 音楽コンサートとかをやるときに反響をよくするために、あの花びらみたいなやつが下りてくる仕掛けが出雲ドームに元々付いてるんです。

松浦 それがうまく合致して時空ゲートになりました。だからSLは撮れなかったけど、結果的に島根だからこそのいい画がたくさん撮れたので、島根のみなさん、出雲市の飯塚市長に感謝です。島根、とてもいいところでした。皆様もぜひ行ってみてください!

映画「ガッチャード・ブンブンジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 ©テレビ朝日・東映AG・東映

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