HOME記事スケールモデル造形村SWS最新作 1/48「F-4E(後期型) ファントム II」ロングノーズの真打ちを丁寧に作りこむ!キットの特徴も徹底解説【ボークス】

造形村SWS最新作 1/48「F-4E(後期型) ファントム II」ロングノーズの真打ちを丁寧に作りこむ!キットの特徴も徹底解説【ボークス】

2024.08.07

F-4E(後期型) ファントム Ⅱ【造形村 1/48】 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)

「F-4ロングノーズ」の真打ちを丁寧に作り込む

 造形村SWS最新作、1/48「F-4E(後期型) ファントム II」。これまでF-4 ファントムIIのバリエーションを次々と展開してきた本シリーズにロングノーズの真打ちとも呼べるF-4E後期型が待望のラインナップ。そこで、F-4大好きモデラーであるけんたろうが愛情たっぷりに製作。キットの特徴も踏まえつつじっくりと作り込んでいる。

SWSとは?

 造形村が手掛ける、プラスチックを最大限活用したスケールモデルシリーズ。図面だけに頼らず、取材や現存する写真の徹底的な分析により「真実の姿」を追求。まるで実機が組み上がっていくかのような組み心地も魅力のひとつで、まさに構造体としての航空機を実体験できるものとなっている。これまで1/32、1/48、1/72の3スケールを展開。そのラインナップは30アイテムを優に超える。

▲後期型の特徴は何といってもその延長された機首部分。ここには固定装備としてM61A1 20mmバルカン砲を搭載。また、固定式前縁フラップのハードウイングを採用した前期型よりもさらなる空戦性能の向上を図るため、前縁フラップを可動式スラットに変更。機関砲の砲口にはガンブラスト・ディフューザーを追加。その他、主翼端にAN/ALR-46 RHWRアンテナが取付けられた。一部の後期型では左主翼内翼部前縁の電子光学式目標識別センサー(TISEO)や胴体背面のAN/ARN-101アンテナフェアリングも採用されている
▲シャークマウスのマーキングがチャームポイントの機首部分。下面には6砲身の20mmバルカン砲M61A1を固定武装として搭載。ガンサイトはASG-26に換装されている
▲エアインテーク内部もしっかりと作り込まれている。F-4タイプの特徴でもあるスプリッターベーン(境界層分離板)も実機さながらの細やかな作り込み

▲複座式のコクピット内部も射出座席の細いロープをはじめ、前席の光学照準器、水平儀、戦闘用レーダースコープ、後席のレーダースコープなど見事に作り込まれている。なおキャノピーは専用のマスキングシートが付属し、だれでも簡単に塗り分けが可能。キャノピー自体も一体型と分割型の2種が用意されている(作例は一体型を採用)

▲着陸脚や脚庫内部、増槽に赤外線誘導対空対ミサイル、AIM-9M サイドワインダーなど見どころの多い機体底面
▲エンジンノズル周りの細やかなディテールと色気のあるライン取りが見事。作例では焼け表現などは極力抑えてクリーンな仕上げとしている
▲垂直尾翼のマーキング。前側のエンブレムにかかるアーチは、セントルイスの公園にあるゲートウェイ・アーチを描いたもの。先端の赤い部分のミズーリ、SLはランバート基地の所属を示している。ラダー部分のSPOOKは10を示すギリシア数字のXが3つ並んだ表記の上に立っており、30周年ということがここでも表されている
▲前縁フラップを可動式スラットに変更したF-4E 後期型。キットはその特徴を再現するため翼部分をすべて新規で作り直している
▲胴体側面には1988年7月に現れたファントム30周年を祝う「30 Years of Phabulous Phantoms」の文字とファントムのマスコット、SPOOKくんがあしらわれている

 F-4の数あるカラーのなかで、私が密かに好きなのがこのグレーのスキームです。エジプト1やヒルグレー2と呼ばれるカラーに身を包んだF-4は第4世代戦闘機のような姿で、装備するミサイルも全体的に攻撃力がアップして、一番相手に容赦のない強いF-4の姿を象徴するのがこのカラーだからです。
 好きなグレーのF-4が造形村から出るぞ! という知らせに食べるしかないよねと飛びついたわけです。G型でも体験済みではありますが、やはりパーツの合いがよくどこまでも組みやすい、インテークの合わせまでちゃんと決まる、実にいいキットです。ひとつひとつの作業を丁寧にこなすことで、想像どおりのグレーのF-4Eが立ち上がってきます。デカールもカルトグラフだから、発色もよく余白もほぼありません。またこの機体はこのマーキングが特徴的です。

 いちばん大きいのはF-4の30周年を祝うマーキングで、“ファビュラスファントム”と良いメッセージがついています。これ自体もF-4のドラマですが、インテークベーンにふたつの星がついていることにも注目です。この機体が1972年にMiG-21を2機も撃墜したことを示しています。そして、この機体は引退後もランバート国際空港のゲートガードとして永く展示されていました。2015年にその任も解かれてしまいましたが、この第131爆撃航空団の歴史を展示する施設に展示される予定もあるとか。垂直尾翼にはセントルイスにある大きなアーチが描かれていたり、グレーの静かさを補ってあまりある情報量ですね。じつは胴体横のメッセージとマスコットのSPOOKくん(デカールナンバー3と7)を貼らなければ、通常運用時の姿にもなります。今回は記念機なのでキレイめに作りましたが、派手に汚したい場合はこの量産機としての姿でガンガン攻めるのも楽しそうですね。

 日本でも2021年にすべてのF-4が退役して、今年は韓国もすべてのF-4Eが退役になりました。いよいよF-4の運用国が減って、いまでは後継のF-16が50周年を祝っています。なんともいえない気持ちになりますが、模型というものはもういなくなったモノを蘇らせ、知らないものの姿を鮮やかに想像させることでもあります。今回は強くなったF-4が華やかに30周年をお祝いしつつも、本国ではすでに黄昏を迎えつつある……そんな姿に思いを馳せて完成となったのでした。

けんたろうのここが凄いよSWS F-4E(後期型) ファントム II!

 バリエーションキットと侮るなかれ。そこには徹底した情熱とこだわりが込められているのだ!(解説/けんたろう)

▲デカールはカルトグラフ。SPOOKくんはファントムのマスコット。「II」の主張がファントム“II”ということを強調。左のアーチはセントルイスにあるすごいでかいアーチ、右下のSPOOKくんもギリシャ数字のXXX(30)の上に立って30周年を祝福
▲実機の説明がめっちゃあるし、パーツの実機名称が書いてあるの、マジですごい説明書だと思う
▲こちらは本体部分。スラットを表現するだけで翼作り直しなの、F-4キット道遠すぎ
▲フォーメーションライトはデカールが基本で、立体感が欲しいよ、という人向けにランナーにオマケとしてつけておくサービス心
▲これはG型初出の胴体関係のランナー。胴体関係はG型初出も多いけど、コクピットと左側にある六角形のAN/ARN-101 DMAS、右上のTISEO(光学式目標識別センサー)も新たにパーツ化(今回は未使用パーツ)

▲J79エンジンは入口から出口まで外見も再現。一応、補助エアドアを開くとちらっと見える部分だけど…SWSシリーズって基本エンジンも立体化するポリシーだけど、地味にすごい

造形村 1/48スケール プラスチックキット“スーパーウイングシリーズ”

F-4E(後期型) ファントム II

製作・文/けんたろう

1/48 F-4E(後期型) ファントム II
●発売元/造形村、販売元/ボークス●8580円、発売中●1/48、約40.5cm●プラキット

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けんたろう

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