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「スピットファイア mk.Ⅰ 前期型」高品質なキットを追加工作と絵画調筆塗りで仕上げる!【コータリモデルス】

2024.07.10

スピットファイア Mk.I 前期型【コータリモデルス 1/35】●有賀和雄 月刊ホビージャパン2024年8月号(6月25日発売)

スピットファイア Mk.I 前期型

大戦前の初期型スピットファイアを絵画調筆塗りで仕上げる

 コータリモデルスという模型メーカーをご存知だろうか。かつてニュージーランドに本拠地をおいた、映画監督ピーター・ジャクソン指揮の下ハイクオリティな複葉機模型を多数開発していた伝説のメーカー「ウィングナット・ウィングス」の元メンバーが立ち上げた新興メーカーで、その第一弾がこの1/32スピットファイア初期型だ。ニュージーランドで発見された、青いカワセミから名付けられた新メーカーは、果たしてどんなこだわりを持って2024年にスピットファイアをリリースしたのだろうか?

スピットファイア Mk.I 前期型主翼のモールド
▲主翼のモールドは一様なスジ彫りではなくパネルラインの絶妙な段差で再現されているのがわかる。こういったこだわりはパーツ各所にみられる
スピットファイア Mk.I 前期型ラジエーターフェアリング内部のディテール
▲ラジエーターフェアリング内部のディテールなども再現されている。自重変形タイヤも標準でパーツ化されている。「DUNLOP」のロゴに注目
スピットファイア Mk.I 前期型コクピット
▲このキット最大の見せ場がコクピットだ。計器パネルだけでなく足元のラダーペタルやラダーバーまでもがパーツで再現されているという凝りよう
スピットファイア Mk.I 前期型 後方から
▲キットには1938、1939年の第19飛行隊、1940年の第609飛行隊アメリカ人パイロット乗機の三種類のデカールが付属する。今回細かいコーション以外は手書きとした
スピットファイア Mk.I 前期型ワッツ社製木製プロペラ
▲1/32キットで初めて再現されたワッツ社製木製プロペラはその独特なうねりを見事に再現している
スピットファイア Mk.I 前期型ラダーのリブ
▲ラダーのリブはもちろんリベットも凹リベット、凸リベットと場所によって表現が変えられている
スピットファイア Mk.I 前期型初期型キャノピーは新造
▲前作のスピットファイア中期型から変わってバルジのない初期型キャノピーは新造されたものが同梱されている

コータリモデルスのキットについて
 今では伝説となった1/32第一次大戦機シリーズで好評を博したウィングナットウィングスの元メンバーらが立ち上げたニュージーランドの新興メーカーです。2023年春に第一弾としてスピットファイアMk.I中期型を発売しました。今回のタイプ300は先に販売のMk.I中期型キットに初期型用の新規「Fランナー」パーツとキャノピーパーツを追加したものです。これにより1/32で初めてワッツ社製2翅木製固定ピッチプロペラを装備した初期型がキット化されました。
 新規金型パーツは風防(防弾ガラス無し)、バルジ無し初期型キャノピー、リング・アンド・ポスト、金属ガンサイト、機銃フラッシュサプレッサー、初期型ピトー管、初期型排気管、初期型無線機アンテナ、ワッツ社製2翅木製固定ピッチプロペラ、訓練用外付けガンカメラ、スピン防止パラシュート用ラダーガードなど。付属デカールはカルトグラフ製で、1938、1939年の第19飛行隊、1940年の第609飛行隊の3種です。

このキットのここがスゴイ
・外形のプロポーションがきわめてよく、主翼・胴体の形状が実機のイメージに近く再現されている。特に機首周りの形状、主翼前縁から後縁への流れるような美しいラインの再現は見事。ワッツ社製木製プロペラの再現度は素晴らしく、プロペラの捻れがちゃんと再現されている。
・胴体パーツはスジ彫り表現ではなく微妙なパネルラインの段差と、胴体後部は実機同様に微細な凸リベットで再現されている。
・コクピットは実機さながらの完成度で本キットメインの製作パート。リアルな彫刻に数十枚のデカールを貼ることで精密なコクピット内部を再現できるように工夫され、細かな塗装を少なくしている。特にメーター類の印刷は微細で、目盛まで鮮明に印刷されていてとてもリアルな仕上がりになる。
・3種のマーキングの機体ごとにパーツ差し替えを指示しているこだわりがあり、マニア向けキットといえる。
・組み立てやすくパーツ分割が巧妙でパーツ数を少なくしている。胴体・主翼パーツの裏面は骨材であるリブ、スパーの縦横モールドが施され変形を回避している。
・資料を兼ねた豪華フルカラー28頁建ての組立説明書。3種類のマーキングや相違点についての考証や疑問点が写真付きで説明され、この一冊で微妙に異なる3機のスピットが完成できる。この一冊だけでも資料価値は高く、他機種製作の参考になる。
・高品質なカルトグラフ製デカールが付属。レターやステンシルはそれぞれの機種ごとに調査検証しており発色のよいもの。

組み立ての注意点
 パーツは薄く繊細、細かい彫刻で再現されているのですが変形しやすく、接着剤の付けすぎは注意が必要です。プラモデルは射出成型品で実際のデータとのギャップがあり伸縮していますから、すり合わせを必ず行いましょう。コクピットに接するパーツは胴体パーツにくるまれる部分が多く、とくにすり合わせが必要です。

追加工作
 気になる部分のみ追加工作をしました。射出成型方向の関係からラジエーターグリルのモールドが弱いので、若干オーバースケールではあるもののエッチングメッシュとプラ板細切りで製作しました。左右翼端灯・尾灯は透明ランナーで製作しました。右翼上のガンカメラはレンズ部分を透明パーツに置き換えギミックを演出しました。モールドが弱い主脚後部のブレーキパイプをプラ材で追加しました。

塗装はステンシル以外筆塗り、手描きです
 箱絵パッケージイラストのようなリアルなイメージを想像しつつ筆で塗り上げました。今回はハケ目や塗りムラはあえて消さずに油絵風ラフな仕上がりを目指しました。当時の写真では実戦参加前にもかかわらず機首エンジンまわりなど相当のオイル汚れや塗装の剥がれが目立つので、大胆に汚してみました。
 基本的にはラッカー系GSIクレオスMr.カラーで、機体上面2色迷彩塗装をC361ダークグリーン、C369ダークアースで若干色味を変更しています。下面のアルミ塗装は、H8シルバーに若干グレーを足したものを塗装。
 手順としては国籍マーク(ラウンデル)を烏口コンパスで書き込み塗りこみます。並行して機体の迷彩パターンを2色が重ならないように塗り込みます。なぜなら筆塗りでは塗装膜が厚くなるためで、濃いめの塗料を細いセーブル平筆でこすりつけるように塗っていき、塗り重ね回数を少なくしています。これによって細かな筆目が油絵のような雰囲気を醸し出します。機体表面のデカールはステンシルのみ使用し、迷彩塗装とのタッチが変わらないようにラウンデルとラダーの白の19、機体番号は手描きとしました。
 モデルの見映えをよくするためにも、実機写真など参考に0.3mmのリベットを全体に打っていきます。最後の仕上げはタミヤ水性アクリルでオイルなどの汚れ表現をし、タミヤエナメルでスミ入れなどを行います。

価格なりの高品質なキット
 スピットファイアファンの方々にはぜひ作っていただきたいキットです。なぜならこんなに忠実に、実機のイメージを具現化したキットは稀で、この一箱の中にそのすべてが備わっているからです。手軽に組み立てて塗装すれば良きコレクションを手に入れることができるでしょう。これが、作例を終えた感想です。今後のコータリモデルスのシリーズ展開が楽しみでなりません。

製作資料として特に参考になったもの
・「SPITFIRE THE HISTORY」Eric Morgan/Edward Shacklady(ISBN 0-946219-48-6)
・「Wingleader Photo Archive Number 1 Supermarine Spitfire Mk1」Mark Postlethwaite(ISBN 978-1-906592-63-9)

コータリモデルス1/32 スケール プラスチックキット

スピットファイア Mk.I 前期型

製作・文/有賀和雄

スピットファイア Mk.I 前期型
●発売元/コータリモデルス、販売元/ビーバーコーポレーション●25520円、発売中●1/32、約28.5cm●プラキット


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有賀和雄(アリガカズオ)

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