マクロスシリーズの原作、監督、メカニックデザインを手掛ける河森監督に「マクロスモデラーズ」の舞台裏とこれからの展望をインタビュー!
2024.06.21── 今でこそガールズプラモデルは盛況ですが、アオシマさんは素晴らしい着眼点でしたね。
河森 イメージ的には、ブルーインパルスジュニア(ブルーインパルスを模した改造バイクによる演技チーム)です。「マクロス」世界のなかのエアショーに、女の子が乗ってデモンストレーションを演じるミニバルキリーが存在し、いろいろなメーカーが参入し始めて、ついには競争になってしまう……という想定でした。「これでアニメができるじゃないか!」と思って提案しているのですが、なかなかOKが出ないんですよ。バルキリー娘、アリだと思うんですけどね(笑)。真剣勝負でスピードを競う熱血物語として、バイク的なモータースポーツ作品に近い感覚で描けると思うんです。
── それは期待したいですね(笑)。何度か話題に上がっていますが、マックスファクトリーさんは毎回変化球といいますか、魔球が多い印象です。
河森 そうですね。振り返ってみると1/20ガウォークも驚きましたが、キャラクターや王道的なモデルもある。機首コレクションも最初こそ冗談かと思いましたが、実際に見るとすごい説得力で驚きました。
── 一方、ウェーブさんはVF-171やVF-4、デストロイドなど、一線を画しているラインナップも魅力です。
河森 なかなか他メーカーさんが手を出しにくいような機体も作ってもらえるのは、とてもありがたいです。どの機体も同じレベルで開発には手間がかかりますから、レアな機体といっても大変なことに変わりはありません。そういう意味では、ウェーブさんには世界観全体の広がりを助けてもらっているような感覚があります。やっぱり主役機だけで成り立っている世界ではありませんし、「マクロス」シリーズは特にそれが顕著ですから。ぜひVF-9 カットラスも手掛けてほしいですね(笑)。
── 今年は新たにフジミ模型さんがマクロスモデラーズに参加しました。どんなアイテムを期待していますか?
河森 バラエティに富んだプラモデルを手掛けているメーカーさんなので、どんな面白い企画を提案してくださるのか期待しています。昆虫のプラモデル(自由研究シリーズ)も発売されているので、ぜひバジュラに挑戦してほしいですね! 可能であれば「マクロス」世界の生物シリーズを実現したいところです。銀河クジラに竜鳥もいますし、世界観が広がります。また、フジミさんのラインナップを見ていると、ディオラマ系や艦船系にも期待してしまうんです。ディオラマと艦船を融合したような、アイランド1のプラモデルなんて面白そうじゃないですか?
── 今後のフジミ模型さんの動向に期待したいですね。
世界観に入り込むための
体感装置として
── さて、マクロスモデラーズプラモデルフォトコンテストも、今回で8回目となります。これまでの歴史を振り返ると、どのような印象をお持ちになりますか?
河森 モデラーの皆さんが作り上げる作品のクオリティとアイデアに驚かされます。本編のシーン再現もあれば、オリジナルのアプローチや表現方法で作られる方もいて、毎回楽しみですね。よかったと思う点は、決してメカ限定ではないところです。キャラクターもセットで楽しんでもらえているので、作品のイメージが広がりますからね。異なるメーカー同士の組み合わせで、ひとつの物語やシチュエーションを再現できるのも、マクロスモデラーズならではの魅力だと感じています。
── 河森さんはどのような点に着目して審査しているのでしょうか?
河森 やっぱり意表を突かれた作品でしょうね。劇中再現に限らず、モデラーさんのオリジナルアイデアでも、変わったアイデアの作例を選ぶことが多いです。ただ、先に他の審査員に選ばれちゃっていることも多いんですよ(笑)。
── 応募作品を拝見すると、普通のプラモデルコンテストとは違って「河森さんや審査員をアッと言わせてやろう!」という思いを感じますね。
河森 たしかにプラモデルコンテストというよりも、シチュエーションコンテストやアイデアコンテストに近い印象がありますね。参加するモデラーの皆さんの意識のなかに、「マクロスモデラーズはこういう感じ」という意識が、積み上げられていった感じがします。
── 今後、マクロスモデラーズの展開で期待していることはありますか?
河森 まず、これまでに立体化していない機体は増えてほしいですね。先ほど申し上げたVF-9や『マクロス7』のVF-14など、まだまだたくさんありますから(笑)。あとはコレクションシリーズでしょうか。小さいサイズでも構わないので、マクロス艦シリーズやデストロイドシリーズは欲しいですね。新旧のマクロス艦をずらっと並べたら壮観だと思います。
── シーン再現やディオラマには可能性がありそうですね。
河森 そうですね。たとえば艦船のカタパルトは、いろいろな機体が乗せられるので、遊び方の幅が広がりそうです。歴代マクロス艦のブリッジコレクションも面白そうじゃないですか? そこに歌姫たちをディスプレイしたら楽しいでしょうね。
── これまでのマクロスモデラーズを振り返ってみると、ここまで豊富なラインナップになったことは驚きますね。
河森 そうですね。特に番組を配信し続けてきたのが大きいと思います。最新の情報が絶えず流れ続けるわけですから。
── 同じ機体でも、アプローチが変われば基本的にバッティングしない、という考え方はマクロスモデラーズならではですね。
河森 メーカーさんが自分の得意な領域を理解して、独自の企画を提案しているからこそ成り立っていると思いますね。ヒロイックな方向でその世界で活躍するのか、よりリアルな航空機のパイロットとして飛ぶのか……。BANDAI SPIRITSさんの商品なら、可変戦闘機を存分に変形させて活躍するイメージがあり、かたやハセガワさんの商品なら、自分が航空機のパイロットになって、その世界観に入り込む力がある。それぞれのメーカーさんのアイテムが、二次元の平面から抜け出してきて、三次元の空間のなかで本物の巨大メカを見ているかのような気分を味わわせてくれる……。作り手であるメーカー側も、受け取るファン側も、そんなイメージを求めていると思うんです。今後もさまざまな商品を通じて、そんな感覚をお伝えできるといいですね。
――本日はありがとうございました。
(2024年4月、Vector Visionにて収録)
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