HOME記事キャラクターモデルマクロスシリーズの原作、監督、メカニックデザインを手掛ける河森監督に「マクロスモデラーズ」の舞台裏とこれからの展望をインタビュー!

マクロスシリーズの原作、監督、メカニックデザインを手掛ける河森監督に「マクロスモデラーズ」の舞台裏とこれからの展望をインタビュー!

2024.06.21

マクロスモデラーズ 河森正治インタビュー 月刊ホビージャパン2024年7月号(5月24日発売)

マクロスモデラーズ

河森正治
interview

河森正治インタビュー写真1

 2015年、「マクロス」シリーズプラモデルの幅広い展開を実現するため、各プラモデルメーカーが共闘することで立ち上げられたブランド「マクロスモデラーズ」。“共闘”も9年目を迎えた現在、各メーカーはバラエティに富んだアイテムを送り出し、「マクロス」プラモデルシーンはかつてない活況を見せている。これまでにないプラモデル展開に際し、シリーズの原作、監督、メカニックデザインを手掛ける河森正治氏はどのように取り組んできたのだろうか。マクロスモデラーズの舞台裏と、これからの展望をお聞きする。

(聞き手/河合宏之)


忠実であることよりも
作り手の想像力を活かす

── マクロスモデラーズの展開もさらなる広がりを見せてきましたが、河森さんはどのようなスタンスで立体物の監修を行われているのでしょうか?

河森 「マクロス」シリーズの世界観は、本当の歴史が別に存在するうえで、映像や商品はすべて想像で再現されたものというスタンスです。たとえば昔の映画でいえば、MiGといいながらタイガーIIが登場しているじゃないですか? あの感覚に近いんですよ。「アニメの画面や設定が正解です」という気持ちはさらさらなく、「世に出ているものは誰かの意図でデフォルメされたもの」というイメージなんです。

── ある程度、作り手のイマジネーションが入る余地を残すということでしょうか?

河森 そうですね。監修するときはもちろん作品の世界観レベルに合わせたリアル感は大切にしますが、そのうえでメーカーさんの個性を半分残して、極力作り手の意図を尊重する方針です。正確さを求めているだけでは、みんな設定画と同じになってしまうじゃないですか? 作り手の個性や思考のプロセスを感じ取れることが面白いのであって、正しいか、間違っているかはあまり考えていません。考古学ではありませんが、メーカーさんが研究して、想像して、「どのように表現するのだろうか?」ということを期待しているんです。

── 一方で作品として守らなければいけない部分もあるわけですね。

河森 ええ、残りの半分の監修については、まず明らかに航空機や空力的におかしいポイントがないかをチェックします。あとは機体ごとのデザインやスタイリング。「ここだけは外せない」というキャラクター性の根幹になるポイントを見ていきます。この2点に関しては監修しつつ、解釈とデフォルメに関しては、メーカーさんが想像する余地を残すという考え方ですね。

── 昨今でいえばBANDAI SPIRITSさんのHG YF-19があり、ハセガワさんもYF-19バトロイドを短いスパンでリリースされましたが、その考え方だからこそ競合しないわけですね。

河森 たとえばSR-71も「実はステルス構造を使っていた」ということがのちに判明するわけですが、それを知らずにプラモデルを設計していた時代と、取り入れている時代との違いがあると面白いじゃないですか? 特にテクノロジーの変化や新しい事実が発覚したとき、「マクロス」シリーズの世界の場合は、書き換えてもOKという考え方なんです。(テクノロジーが判明する)以前でも以後でも楽しみたい。そういう考え方ですね。

── メーカーごとに、監修の方向性や基準は意識していますか?

河森 分かりやすいところでいえば、ハセガワさんは航空機的なニュアンスを再現できているかという方向性ですし、BANDAI SPIRITSさんはキャラクターとしてのデフォルメが魅力的にアレンジされているか、という点がポイントになるでしょう。ウェーブさんは「痒いところに手が届く」ような機体を作ってもらえるありがたさがあります。アオシマさんやマックスファクトリーさんは、「我が道を行く」という感じですよね(笑)。

── たとえばマックスファクトリーさんとハセガワさんのバトロイド形態では、アプローチがまったく異なるのが興味深いですね。

河森 ハセガワさんのバトロイドは、全体的に細身で航空機テイストを残しています。逆にマックスファクトリーさんは「アニメのシーンやポーズ再現を優先する」という方法論ですね。バトロイド形態は、パイロットも含めたキャラクター性を出しやすい形態で、そこにこだわったアプローチでもOKですし、逆に徹底的にクールにこだわった航空機的なバトロイドでもいいわけです。

共闘のなかで確立された
メーカーごとの独自色

── ハセガワさんは長く関わられていることもあり、リアル感を追求する方向性でポジションが確立していますね。

河森 「マクロス」シリーズのプラモデルに、リアルな戦闘機的な要素が取り込めたのは、ハセガワさんのおかげでしょう。実際に監修で考えることが変化したのも、ハセガワさんのモデルからです。最初の頃は、どこまでディテールを加えるのかは悩みました。キャラクター性の強いモデルにリアル感のあるディテールを入れすぎると、らしくなる一方で個性は減ってしまう。そのあたりのバランスは難しかったですね。ただ、飛行機のプラモデルを手掛けているメーカーさんだけに、こちらが考えている意図が伝わりやすいのは助かりました。たとえば翼はできるだけ「薄くしたい」というチェックだけでも、何をすべきかを理解してもらえるんです。

── 一方でBANDAI SPIRITSさんは「マクロス」シリーズのキャラクターモデルとしての面白さを追求してきたメーカーです。

河森 そうですね。特に変形プラモデルを出せるのはBANDAI SPIRITSさんの技術力があってのことだと思いますし、アイデンティティだったと思うんです。ですが、HGでは「作りやすさとフォルムを優先した差し替えを採用する」という判断をされました。この選択は大きな賭けだったと思うのですが、とても受け入れられていると感じます。「マクロス」シリーズという作品自体、リアルな戦闘アニメではなく、爽快感のあるシミュレーターなんです。その延長として立体物やプラモデルで遊ぶと考えたとき、作品と同じように爽快に作って楽しめる、ということは大切だと思います。

── アオシマさんは「マクロス」シリーズのプラモデルに、新機軸を打ち出しました。

河森 アオシマさんからV.F.G.(ヴァリアブルファイターガールズ)を提案されたときは驚きました(笑)。でも、「それならキッチリとした構造でやりたい」と思い、逆提案させてもらったんです。たとえばキャラクターが機体を装着するときには、エンジンを横に出して冷却する、といった具合に、破綻のない構造で作ってもらっています。これは企画段階から関われているからこそ、盛り込めたアイデアですね。

©1982,1984,1992,1994,2002,2015 BIGWEST ©2007 BIGWEST/MACROSS F PROJECT・MBS

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