蔵出しレポート「トリビュート展 60+40=100」の思い出を語る【コモリプロジェクト】
2024.06.20 コモリプロジェクトHP
Youichi Komori Official Web(y-komori.net)
横山宏をトリビュートする
皆さん、こんにちは。コモリプロジェクト代表の小森です。この記事を書いている今、南青山のビリケンギャラリーでは『横山宏 from 1982』と題して、横山先生の個展が開催されています(※5月12日に終了)。すでにたくさんの方が足を運ばれたことでしょう。HJを愛読している皆さんに今さら先生のことを語るのもヤボというもの。今回は蔵出しとしまして、2016年に開催された『トリビュート展 60+40=100』の記録をお話ししたいと思います。
ある日のこと。唐突に横山先生から連絡がきて、「トリビュート展用に小森さんも作品創ってね」と。「考えてください」とか「検討してください」じゃなく「創ってね」です。ほんとに先生ってこうですからね(苦笑)。当初は展示会場で読めるショートストーリーをオファーされたんですが、そこに集うメンバーを尋ねてみると立体世界の錚々たるメンバーじゃないですか。う~ん、こんな中で文字なんか書いても埋もれるだけだ……とお馴染みのマスターJ、土井眞一氏に相談を持ち込みました。するとアッサリ、「分かりました。等身大のマシーネンを造りましょう」って。これはこれで「はぁ?」ですよ。そこから本当にデカマシーネン造りが始まりました。当時は『風招きの空士 天神外伝』という小説の執筆真っ只中。沖縄の那覇基地や石川の小松基地に取材に入ったり、編集と打ち合わせをしたりとバタバタしておりました。その合間を縫ってマスターJの工房通いです。大きなスチロールを貼り合わせ、熱したニクロム線で切断して大まかな形を出します。刻んだり磨いたりしながら次第に形を整えていき、天気の良い日を選んで屋上で塗装します。
なんてね、サラッと書きましたがここまででもエライことですよ。やったことない作業の連続であり、しかも対する相手は1m40~50cmはあるかというデカマシーネン。太陽の照り付ける屋外でシンナーを吹きまくるところを想像してみてください。例えマスクをしていてもイイ感じにフラフラしてくるってもんです。さらに困ったことには、作業が進むにつれてマスターJのテンションがどんどん爆上がりしたこと。市販のオモチャを解体し、パーツを組み合わせて新たな部品造ったり、大小さまざまなデザインのデカールを作ったり、専用の土台を作ったり、全体に汚し塗装を加えたりともう荒業――いや、荒行です。マスターJの片腕、加織さんがいなかったら作業はもっと大変なことになっていたと思います。
完成したデカマシーネンを会場で組み立てた時、「何、これ~」と先生の甲高い声が響き渡りました。「頭おかしいんじゃないの」という最高の誉め言葉付で。
とんでもなく楽しかった想い出のひとつです。さぁ、次のトリビュート展まであと数年。いかなることになりますやら。
文/小森陽一
撮影・構成/土井眞一
「Monster Theater 素晴らしき怪獣ガレージキットの世界」発売中!
怪獣ガレージキットを大迫力の特撮写真で小森陽一が解説
小説・文筆家であり怪獣ガレージキットメーカーも立ち上げた小森陽一氏セレクトの怪獣ガレージキット。熱い怪獣愛で怪獣ファンも認める小森氏が、各メーカーの怪獣ガレージキットを塗装完成品と大迫力の特撮写真で解説していく作品集です。
さまざまなガレージキットメーカーの怪獣ガレージキットを円谷特撮作品から厳選して50体、新規撮り下ろしにて掲載。その魅力を小森陽一氏による解説で紹介していきます。
\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/
夢想の人
小森陽一の「夢想の産物」~竹谷隆之酔い語り~【コモリプロジェクト】
それはほとんどの場合、夜の九時を回ったくらいから始まる。曜日はバラバラだ。普通の日もあれば週末もある。机の上にはメモと走り書きしたキャンパスのノートとお気に入りの[…]
© Kow Yokoyama 2024
小森陽一(コモリヨウイチ)
●1967年生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、東映に入社。その後、コラムや小説、漫画原作や映画の原作脚本を手がける。大阪芸術大学映像学科客員教授。『海猿』『トッキュー!!』『S-最後の警官-』『BORDER66』『ジャイガンティス』など著作多数。