HOME記事キャラクターモデル谷明造型の真髄とガレージキットスピリッツをARTPLA「機甲界ガリアン 鉄の紋章 鉄巨神vs邪神兵」で実現

谷明造型の真髄とガレージキットスピリッツをARTPLA「機甲界ガリアン 鉄の紋章 鉄巨神vs邪神兵」で実現

2024.06.21

 一方で、谷造型をしっかりと味わいながら、精緻な部位が組み上がるようなパーツ分割をするにあたっては、造形を残すか組み立ての面白さを残すか取捨選択の連続であった。「鉄巨神vs邪神兵」は、形状イメージをそのままにインジェクションキットとして表現しようとすると、その複雑な形状によって金型から離型することができない「アンダーカット」と呼ばれる箇所が大変多い。原型のディテールを保ったまま。一方で、離型し易いような構成にしようとすると、どんどんパーツ分割が細かくなり、形状のニュアンスを味わうという当初から標榜していたキットのイメージからも離れていってしまう。そうしたジレンマを解消することも、「鉄巨神vs邪神兵」の設計の大きなテーマとなった。

「形のニュアンスを捉えたまま、ギリギリ離型できように金型を彫るためには、微妙なデータの調整が必要であり、通常は金型用のデータは設計ソフトのCADで調整を行いますが、より精度を高めるために造型用のソフトであるZbrush上で調整を行いました」(塩入)

実際にキットを組み上げてみるとわかるが、多層構造によって組み上げられ、形となっていく鉄巨神と邪神兵を手にした感想は、インジェクションプラスチックキットというよりも、レジン製ガレージキットのような塊感と重量感を味わうことができる。

「成型はとにかくパーツを厚く、ガッチリと組めるようにしています。手にした時の質感はレジンキットを持ったようなイメージに近い、硬いような柔らかいような雰囲気になっていると思います。ちなみに、素材は今までのARTPLAと同じHIPSという耐衝撃性プラスチックを使用しています」(塩入)

鉄巨神vs邪神兵の素組み画像
▲ 「鉄巨神vs邪神兵」を組み上げただけの“素組み”状態。多層構造によって表現された、インジェクションキットながらも硬質な塊感を伝わる仕上がりであることがわかる
▲ ARTPLAの企画・開発担当の海洋堂の塩入(中央)と中国の金型工場「一拓漫画有限公司」のスタッフによる記念撮影

 1980年代、海洋堂が造型メーカーとしてその名を馳せるきっかけとなったのは、原型師の造型センスをそのまま味わうことができる、レジン製ガレージキットの発売にあった。ホビー業界に新風を巻き起こした、造型至上主義的なスタイルはその後の海洋堂のアイテムにも引き継がれ続けて来た。「ガレージキットスピリッツ」とも呼ばれた、造型作品本位の立ち位置を示すアイテムは、これまでも時代に合わせて海洋堂からいくつも世に送り出されてきたが、ARTPLA「鉄巨神vs邪神兵」はインジェクションプラスチックキットを用いた「ガレージキットスピリッツ」の顕現であり、今後のARTPLAの展開においても重要なアイテムとなっていくことは間違いない。


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TEXT/構成:石井 誠

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