HOME記事キャラクターモデル横山宏氏の全未発表作品で構成された個展「横山宏 from 1982」を本人のコメントとともにレポート!

横山宏氏の全未発表作品で構成された個展「横山宏 from 1982」を本人のコメントとともにレポート!

2024.06.06

Ma.K. in SF3D/横山宏個展アフターレポート 月刊ホビージャパン2024年7月号(5月24日発売)

 2024年4月27日から5月12日にかけて東京・青山のビリケンギャラリーで横山宏氏の個展「横山宏 from 1982」が開催された。2019年の北九州市漫画ミュージアム、八王子市夢美術館での大規模展覧会「横山宏のマシーネンクリーガー展 立体造形でみせる空想世界」とはまた違った表現で構成された個展となった。高解像度3Dプリントで出力されたデッサン用フィギュアにSFテイストのマスクを組み合わせた立体作品、購入した既存の絵画作品に『Ma.K.』のメカニックを加筆した絵画、デジタルからの回帰をフィジカルにペイントオンキャンバスにしたタブローなどダイレクトなメッセージを発信する全未発表作品で構成された個展になっていた。
 今回の「Ma.K. in SF3D」はこの個展を本人のコメントともにたっぷりレポート!! 『SF3D』連載開始の1982年からSFビジュアルを“ミキシング”によって創造してきた横山氏の新境地をぜひ目撃していただきたい。


ミキシングビルド、ミキシングペイントによるSFアートの新境地

「横山宏 from 1982」レポート

開催/2024年4月27日(土)~5月12日(日)
※月曜、火曜休館(祝日の場合は営業)
会場/ビリケンギャラリー
東京都港区南青山5-17-6
https://billiken-shokai.co.jp/

ビリケンギャラリーは1976年創業、日本初のアンティークトイ店でソフビキットを製造販売するビリケン商会が運営するギャラリー。これまで「美術部展」で横山氏の作品を展示・販売してきたが、横山氏単独の個展は今回初となった。

パラサイティックVRヒューマンガールA

3Dプリントフィギュア/ミックスドメディア

▲「最初に作ったマスクです。頭に被れるように箱組みしたプラ板にガチャガチャやその日に買った車のシャシーなどを組み合わせてます」(横山)
▲グレーの部分が箱組みした試作のプラ板。頬に手を添えているフィギュアなので、手も収まるマスクになっている
▲同じシャシーをBのマスクにも使用
▲タミヤ1/24マツダ ロードスターのシャシーを分割した

バンパイアセンター3番受付

3Dプリントフィギュア/ミックスドメディア

▲「ヘリコプターの本体とテール部を芯にして先端からチューって血を吸うオネエサンにしました。透明パイプを伝って血が一滴ずつタンクに溜まっていくイメージからコーヒードリップを逆さにしてそこに座らせました」
▲︎フィギュアにあわせコーヒードリッパーをカットし高さを調節
▲特異な形状のブルーグレーのマスクと裸体とのコントラストが鮮烈。パイピングも1982年から見られる横山モデリングの手法だ
▲ヘリコプターは古いフジミ1/48ちどりを使用
▲ヘリの本体が頭部にフィットするサイズ。ロッグマックのパーツも確認できる

スーパーエレクトリックガール(集電乙女)

3Dプリントフィギュア/ミックスドメディア

▲「吸血オネエサンに対峙する集電オネエサンです。ヒザを立てた仏像のようなポーズなので左手がノイスポッターのハッチなどにフィットします。集め続けていた使い捨てガスライターの部品を背中に挿してケーブルにつなぎます。その基点にはマシーネンのデカールを貼りました」
▲ノイスポッターに飛行機の爆弾やオプションパーツを接着し真ちゅうパイプと真ちゅう線で集電部を表現
▲電気は体を経由してアラジンストーブをイメージした椅子に溜まる設定

ワルキューレ蜂女バージョン

3Dプリントフィギュア/ミックスドメディア

▲「ビリケンギャラリーでの個展なのでソフビキットの蜂女のオマージュです。蜂女バージョンのワルキューレにしました。かつてひらおかとしえさんのフィギュアを芯にした「竜の時代」のグリフィーネの魔女に通じる部分は真空管です。ノズルはスペースシャトル用のレジンアフターパーツです」
▲マスクはぜんそく治療薬の吸入器。真空管の流用はグリフィーネの魔女でも見られた手法

パラサイティックVRヒューマンガールB

3Dプリントフィギュア/ミックスドメディア

▲「VRヒューマンガールA、Bのヘルメットはどちらもガチャガチャが芯になってます。Aと同様にマスク後部から伸びるビニールコードは長さを揃えないほうが予定調和にならない。端にネオジム磁石を付けて高い位置にある釘や金属からケーブルを垂らした展示ができる」
▲側面は正面とは異なる印象
▲セミ人間やハエ男など昆虫系モンスターを意識したマスク。タミヤ1/12ドゥカティ900のパーツなどを使用

豊川のファルケ

油彩に加筆

▲「この絵は大西信之にもたいへん褒められたんだけど、元絵の光と同じような方向から光を当てるとどう影ができるか模型のファルケを屋外で撮影しています。撮影した何枚もの画像をPC上で元絵と並べて、元絵とぴったりになるものをプリントアウトしてそれを見ながらファルケをアクリルガッシュで描きました。構図もPC上で写真を元絵に貼り込んで決めたものなので、構図的にも完ぺきに近いものになりました」
▲︎「光を意識して描かれた日本人画家の絵で、『豊川の春』という題名が付いていました。なお、『とよかわにあるとよがわ』が正しい読み方と地元を知ってる友人がギャラリーで教えてくれました」

フランスのキュスター

水彩に加筆

▲「装甲板を付けた海洋堂のキュスターを撮影してファルケと同じ手順で加筆しました。元絵は1963年にフランス人の画家ミッシェル・ド・ガラール氏が描いた水彩画。当時はアクリルガッシュがないからガッシュで描いてますね。製作の60年後にネットオークションで落札されて加筆されるなんて想像もできなかったでしょうが許してね」
▲「油彩画として出品していたので買ったけどなぜかアクリル絵の具をはじかない!? 水溶性絵の具で溶解したのでガッシュによる水彩画だと判明。おかげでスイスイ描けました」
▲︎「元絵の風景には一切手を加えないのが自分の中のルールです。だけどキュスターの後ろの木の根の影は強いので消しました」

会期中に追加されたアクリル画を紹介

 個展開催中に横山氏は張りキャンバスにアクリル画16点を描き下ろし追加展示した。開催初日の2024年4月27日から4月28日までの2日間はキャンバスに描いたアクリル画は展示されていなかったが、4月29日に「P.K.A.」と「Fire ball」を展示して以来、徐々にアクリル画の展示は増え最終的に16作品が展示された。

▲P.K.A.
▲Fire Ball
▲サイクロプスの目
▲ナッツロッカー
▲ランプオールグリーン
▲G戦隊プラウラー
▲ラプターパイロット
▲ダックスフント
▲Eddy1
▲Eddy2
▲フリードリヒ
▲ラクーン
▲beast in the snow
▲ghost on the moon
▲monster 01 in outer space
▲gladiator in the dark

1982年の『SF3D』から続く2D3DミキシングによるSFの表現

製作・文/横山宏

 今回は「横山宏 from 1982」の出展作品を見ていただくことにしました。ここ10年、ゴールデンウィークには青山のビリケンギャラリーで学生や後輩作家とともに「美術部展」の一員として出展していました。2024年は「横山宏展」としての出展です。2019年に北九州と八王子で開催された「横山宏のマシーネンクリーガー展」は全方位的な展覧会でした。今回の個展は展示スペースも小さく、また展示品はすべて購入可能としました。そこでどうすればそのメッセージを上手く見せられるか考えていくことにしましょう。
 結論を言えば「作品のつくり方」は村上隆の「芸術起業論」「芸術闘争論」を読むだけでいい。村上隆氏本人もタミヤ製フィギュアを使った作品でアーティストデビューしています。詳しくは前述の書籍に詳しく載ってますのでアーティストを目指すモデラーにはご購入を強くお勧めします。
 ということなどもあって今回既存の販売されているフィギュアを再構築する方法での作品をめざしました。最近は3Dスキャンのクオリティがどんどん上がって一般的にも認知されてきた。3Dプリントフィギュアを使うところからスタートします。
 使用したフィギュアは2023年からインターネットで入手した高さ30cmほどの3Dプリントされたものです。実際に3D出力している方いわく「12時間以上かけて出力したものですね」と言わせるだけあって積層跡が皆無!(よって下地処理や塗装も一切していません) 絵画や彫刻製作のためにプロのモデルさんが取るポーズで販売されているようです。美大生時代の裸婦デッサン、それに続く『SF3D』が始まった1982年へ繋がっていきます。それらのレイヤーがまさに重なっていくようなコンセプトで製作開始。これが「from 1982」というテーマに繋がります。
 また今回の立体作品は1982年から自分がとった手法を普遍的モティーフの女性の裸体とミキシングで構築していきます。当時から使ってきたガチャガチャのカプセルやログマックのコブ、ヘリコプターのキットなどを使ったミキシングビルドですね。恐ろしいことに最近のカプセルの透明部分が今はスチロール樹脂ではなく、PVCになっています。プラ用の接着剤が効かないので、引き出しに保管している40年前のガチャガチャを投入します。まずはラフスケッチを描いてからのスタートです。2023年このフィギュアを手に入れたときからVRシステムにマインドコントロールされた女性像を作ろうと決めていたのでDMの写真の作品から製作していきました。ヘルメットにはその日にセンムチャンネルで行った秋葉のレオナルドで購入したパーツを使ってのスタートになったことも大切な要素です。ヘルメットの形状やコード類の付け方もかつて描き続けた「サイバーパンク」を継承します。ふたつ目以降のヘルメットはドイツ表現主義の頃の演劇や舞踏の衣装みたいなマスクを目指します。
 すでに決まっているポーズゆえにそれに合うアレンジを施していくところが造形のキモとなります。40年ぶりに月刊ホビージャパンの原稿に出してきたシュビッタースという作家に思いをはせながらの製作は至福の瞬間ですね。ガチャガチャのカプセルやヘリコプターの空洞を利用してフィギュアが被れるマスクになります。塗装前の写真も載せたので見てください。
 次に絵の話をしましょう。これまでのビリケンの展覧会では自分が安価で購入した既存の額装中古絵画にUFOや『ねじ式』の主人公を加筆したものを出展していました。もちろんそれらの作品も大好評でしたが2023年の美術部展からはノイスポッターを描くことにしました。マシーネンのメカを加筆すると反応が桁違いに良いですね。それで2023年の夏ぐらいに「この風景画はファルケ飛ばしたい」とか「このフランスの心情画にはどんなマシーネンを加筆したら良くなるかな」と考えながら絵を購入していきます。
 そもそも人の絵に加筆するなんて行為はよい子は真似しないでねという感じでしょうか? でも作家の作品が額代にもならない値段で販売されていくことに疑問を持っていたのでこれを「勝手にコラボレーション 加筆派!!」と称して描いていくことにします。造形作家の山下昇平君はこれを「ミキシングビルドのペイント版」って言ってましたね。これからはミキシングペイントと呼ぶことにしましょう。
 数年前まで加筆するための絵は国分寺の質屋さんで買っていていました。その店では取り扱わなくなったのでネットオークションで探しています。絵を買う基準はまず構図が良いこと。次に額のコンディションの良いもの。風景を見ながら描いていない写実性の低い心情風景的な作品は特撮の作りものの背景に通じるものがあり悪くない場合もあります。その背景に何か置くことで特撮の画面のように見える絵が昔から好きなんです。『謎の円盤UFO』や『ウルトラセブン』のような“作られたシーン”が好きだからこそ自分の作った空想のメカに合う背景として絵を探していきます。
 もちろんいきなり加筆はせず、元絵と光の角度を合わせてキットの完成品を撮影したものを、描きたい角度から撮影します。コンピューターで、撮影した写真を元絵に貼り込みベストな1枚を決めてプリントします。それを見ながら加筆していきます。3Dと2Dを超えたミキシングペイントですね。美大時代、日本画で小下絵(こしたえ)という大まかな下絵を先生に見せて許可をもらわないと本画を描かせてもらえなかったことが懐かしい。50年近く経ってミキシングペイントをしていると、小下絵のように構図をコンピューターで検討することで当時より小下絵の重要性がわかるようになりました。
 初日は立体作品5点と加筆絵画2点の展示でしたが、開催後にやっと小さめのキャンバスに描いたアクリル画を毎日2点ペースで製作展示し最終的にキャンバス画16点を追加できました。
 今回の個展ではこれまでのマシーネンやSFデザインを保ちながら今までとは違う新たな表現方法で作品をつくることができたと思います。何より来てくれた凄い数のお客さんがそのことを共有してくれたことが本当に嬉しかった。


静岡ホビーショー『Ma.K.』アイテムレポート

 2024年5月11、12日にツインメッセ静岡で開催された「第62回静岡ホビーショー」の『Ma.K.』アイテムを紹介!
 海洋堂は1/35カングールの製品化を発表!! 1/35ダックスフント、マスカレード、キュクロープ各1体のセットやグラジエーターG1/G2などを付属フィギュアとともに展示。
 マックスファクトリーは1/35ファルケを先行販売した。

▲︎初プラキット化となるカングール。LOVE LOVE GARDEN(FUJIYAMA ARTS BROTHERS)1/20レジンキットをもとに出力したサイズ検討用サンプルを展示

ARTPLA カングール(2機セット)&整備兵

●発売元/海洋堂●価格未定、2025年発売予定●1/35●プラキット●原型/サイトウヒール、村井太郎

ARTPLA ダックスフント/マスカレード/キュクロープ&ジェリ缶おじさん

●発売元/海洋堂●価格未定、9月予定●1/35●プラキット●原型/谷明、村井太郎

▲マックスファクトリーは通常版と異なるパッケージで1/35ファルケを先行販売した
▲海洋堂はマブQ グラジエーター[後期量産型]を限定販売 ※現在は海洋堂直営店、公式ECでのみ限定販売中(4400円)

レインボウエッグフェルクル再販

 レインボウエッグが1/35フェルクルを再販。フェルクルはシュトラール軍の宇宙用戦闘ポッドで、塗装カードやデカールが付属する。詳細は(http://blog.rainbow-egg.net/)まで。

フェルクル

●発売元/レインボウエッグ●35200円、6月下旬予定●1/35、約19cm●レジンキット

© Kow Yokoyama 2024

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横山宏

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