【ROAD to RALLY JAPAN】introduction 3
シトロエン クサラ WRC’05
2021.06.12
ROAD to RALLY JAPAN 月刊ホビージャパン2021年7月号(5月25日発売)
「ROAD to RALLY JAPAN」は、今秋開催予定で10年振りの復活となる『Rally Japan 2021』応援連載企画。ラリーディオラマの連載進行中の小池徹弥が、それと絡めて開催時期まで毎月連載にしてしまおうとスタート。とはいえ、さすがに毎月一人で作り続けるのは無理なので、私小池が本誌カーモデラーに適材適所依頼。ラリーやラリードライバーの多彩さを模型を通して紹介して行きたいと思います。
また、加藤雅彦による「Commentary on the RALLY」ではラリーのことをわかりやすく解説していくので合わせてご覧ください。(小池徹弥)
CITROEN Xsara WRC ’05
「ROAD to RALLYJAPAN」連載も3回目を迎え、今回から私以外のライターによる作例が登場します。まずは加藤雅彦氏。アイテム選びは「セバスチャン・ローブ」。WRC最多勝利、最多ワールドチャンピオン獲得…まさに“KING of WRC”。
また、彼の多彩さを表現した小池製作のBOXディオラマとともにお楽しみください。
WRCのドライバーズ・チャンピオンを語る上で、やはりこの人は外せないでしょう。前人未到の9連覇を成し遂げているセバスチャン・ローブです。その9回のタイトルはすべてシトロエンのマシンをドライブして獲得しています。クサラ、C4、DS3の3車種のWRカーを駆ったわけですが、1/24スケールではエレールのインジェクションキットで揃えることができます。とはいっても現状ではなかなか入手困難なのが残念ですけど。
さて、そんな中から今回はクサラWRCをチョイス。2回目のドライバーズタイトルを獲得することになる2005年の開幕戦モンテカルロ仕様に仕立ててみます。デカールは別売のルネッサンス製をチョイスしました。
エレールのクサラWRCは2001年スペイン、2003年トルコ、2005年ドイツの3バージョンが発売されていますが、自分が持っていたのは2001年と2003年仕様のキットだったのでふたつのキットを合わせて使っています。
箱を開けての第一印象はちょっとダルめな感じですが、各部をシャキッとさせる方向で仕上げていくとどんどん良い雰囲気になってくれるのがエレールの魅力でもあります。何ヵ所かに使ったスタジオ27製のエッチングパーツも効果を発揮してくれました。
ターマック仕様の車高はキットのままでもまあまあいい感じです。作例ではタイヤをタミヤ製に替えているのでそのぶん低くなっています。
バケットシートもタミヤのインプレッサWRC05から持ってきています。これだけでも2005年頃っぽくなるのでおすすめです。手を加えようと思っていたのにすっかり忘れてしまったのがリアウイングのスプリッターとルーフ上のGPS発信機。ごめんなさい、後で直しておきます。
エレール 1/24スケール プラスチックキット シトロエン クサラ WRC’01&03 使用
シトロエン クサラ WRC’05
製作・文/加藤雅彦
「セバスチャン・ローブ History in a Shelf」
製作・文/小池徹弥
ローブのデビューから、ル・マン、F1までドライブしてしまう氏の多彩さを表現してみました。この構想のために年々集めていたミニカー類。本誌掲載は2009年6月号。前年のラリージャパンで初めて見たレッドブルのライト缶(日本未発売)。ここにサインを貰って完結、BOXにGOを出しました。
この時、ローブのインタビュー終了を1時間近く待ってました(笑)。もちろん仏語で全然分からず、また、ローブファンの女の子(スタッフ)が感激で泣き出してしまうハプニング(その部屋には4人しか居ないわけですから緊張してたんでしょうね)。何かいろいろ思い出しました。ディオラマとともにお楽しみください。
Commentary on the RALLY Vol. 003
文/加藤雅彦
「知っておきたいWRC“ドライバーズチャンピオン”の話」
今回はWRCのドライバーズ・チャンピオンについてもう少し書いておこうと思います。前回で書いたとおりWRCが始まったのは1973年、ドライバーに世界選手権のタイトルがかかるようになったのは1979年のことです。1977年にはFIAカップ・フォー・ドライバーズのタイトルがスタートしていたので、それが昇格したかたちと言えるでしょう。ともあれ競技である以上、誰が一番速いのかを決めておきたくなるのは自然なことですよね。またラリーという競技の特性上、コ・ドライバー部門も制定されていることを付け加えておきます。
2020年までの42年間に18人のワールド・チャンピオンが誕生しています。数字を見ればおわかりのとおり複数回チャンピオンに輝いているドライバーがいるわけですが、最多の9回、それも2004年から2012年まで9年連続でタイトルを獲得したのがフランスのセバスチャン・ローブです。通算優勝回数も79回と他のドライバーを圧倒しており、文字どおり一時代を築いたドライバーでした。ミスをすることはほとんど無く、ドリフトもあまり使わないグリップ重視のドライビング・スタイルはWRCの歴史を変えたと言っても過言ではないでしょう。もともとターマックを得意とするドライバーでしたがWRCにおいてはオールラウンダーとして成長し、2004年にはスノーラリーとして有名なラリー・スウェーデンで北欧人以外で初めて優勝するという記録も残しています。
WRCにフル参戦したのは2012年まで。本格的に参戦してからはシトロエン一筋のドライバーでした。2013年に地元フランスでいったん引退、セレモニーも行われました。その後やはりシトロエンからスポット参戦すると2018年のラリー・カタルーニャで優勝、これが現時点でローブのWRCでの最後の勝利になっています。ちなみにこのときドライブしたシトロエンC3 WRCはベルキットから1/24スケールのインジェクションキットが発売されることになっていますが、WEBサイト等で発表されている仕様があやふやなので続報を待ちたいところ。まあキットさえ発売されればローブ優勝車仕様の別売りデカールも発売されるでしょうけどね。
2019年と2020年はヒュンダイからWRCに参戦したのも記憶に新しいところ。2021年からは新しく始まったエクストリームEに参戦するため再びWRCから離れています。これまでにもル・マン24時間レースやWTCC、ダカールラリーなどで活躍してきたローブですから次のステージでも素晴らしい走りを見せてくれることでしょう。
そのローブの強さを引き継いだかのような活躍を見せているのがセバスチャン・オジェです。2013年から2018年までの6連覇、さらに2020年にはトヨタ・ヤリスWRCで自身7度目のタイトルを獲得しました。
2009年にシトロエンからWRCに本格参戦を開始したわけですが、チームには絶対王者のローブがいたこともありチャンピオンを目指すために2011年限りでチームを離れる決断をします。移籍先はフォルクスワーゲン。この時点でフォルクスワーゲンはWRCに参戦しておらず、2012年はシュコダ・ファビアS2000でWRCを戦いつつポロR WRCの開発を務めました。それが実を結び2013年から4年連続でダブルタイトルを獲得することになるのです。フォルクスワーゲンが2016年でWRCから撤退してしまい2017年は当時ワークスチームではなかったMスポーツに移籍。ここでもダブルタイトルを獲得しドライバーとしての実力を見せつけました。これにより翌年はフォードがセミワークスとして復帰、マニュファクチャラータイトルこそ逃したもののこの年もドライバーズチャンピオンとなり6連覇を達成したのです。
2021年も第3戦のクロアチア終了時点でポイントリーダーであり8度目の戴冠も期待されます。トヨタをドライブして日本で決める、なんてことがあるかもしれませんね。2人のフランス人ドライバーですっかり話が長くなってしまいましたが、WRCの歴代チャンピオンは魅力的なドライバーばかりです。それぞれ4回ずつタイトルを獲得しているユハ・カンクネンとトミ・マキネンは日本車をドライブすることも多かったので応援されていた方もたくさんいらっしゃることと思います。
元祖オールラウンダーとも言えるカルロス・サインツも日本には馴染みが深いドライバーですね。2回チャンピオンになっていますがもうほんのちょっと幸運だったらあと何回かタイトルを獲得していたことでしょう。
個人的にふたりのイギリス人チャンピオン、コリン・マクレーとリチャード・バーンズも忘れることはできません。理由は違えどふたりとももうこの世にいないのが残念でなりません。
2022年からは車両規定が大きく変わるWRCですがドライバーたちの熱い戦いはこれからも変わらずに続いていくと思います。お気に入りのドライバーに注目してもっともっとラリー観戦を楽しみたいですね。
加藤雅彦(カトウマサヒコ)
本連載のコラム担当。カーモデラーでもある。ホビージャパン誌では2011年8月号以来、久々の作品掲載であった。