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外伝小説『勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル』1話 【期間限定公開】

2024.05.23

勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル 月刊ホビージャパン2024年6月号(4月25日発売)

──ハワイ:マウナケア火山付近──

 サタケたちATFのTS部隊がセグニティスと戦いを繰り広げている頃、〈デスドライヴズ〉貧食のポーパルチープムを倒したブレイバーンとイサミ・アオは残る最後の〈デスドライヴズ〉憤怒のイーラと一歩も引かず戦い続けていた一進一退の攻防を繰り広げていた。


『うおぉぉぉぉぉっ!!』

『それじゃあてんで駄目だね、ブレイバーン』


 どれだけ剣を交えても、ブレイバーンとイサミの一撃はイーラには届かない。決定打のないまま続く戦いに、イサミ・アオは消耗し肩で息をしはじめていた。


「一度距離を取るぞ!」

『ああ!』


 後ろに飛び距離を離すも、イーラは追いかけてはこない。それが余裕の現れのようで、悔しさにイサミは唇を噛んだ。


「く……な!?」


 だが、視界の隅──イーラの後方に落ちていく航空機が見えた。それが自分たちをサポートしてくれていたJ-STARSなのは疑いようがない。


「クソッ! どうしてだ!」


 スミスの死を無駄にしないため、これ以上犠牲を出さないため、イサミはブレイバーンと二人で決着をつけるためにここに来た。
 だがその選択は、かえって仲間たちを危険に晒すことになってしまっている。


『どんなに苦しい戦いでも、共に戦うのが仲間……だからこそ、彼らもここに来たんだ!』

「わかってる! さっさとあいつを倒して、助けにいくぞ!」

『もちろんだ、イサミ! ……私は誇りに思っている。キミと、キミたちとこうして世界の命運をかけ、戦えていることを!』

『ああ、見せてやるぞブレイバーン! 俺たちの勇気を!』


 イサミはどこからか力が溢れてくるのを感じていた。
 今なら、攻撃が届くかもしれない──そう直感できるほどの胸の高鳴りを。


『勇気? 怒ってるんじゃないのかい? ……まぁいいや。ようやく、僕の願いを叶えてくれる気になったんだね!』

「俺達はお前のために戦うんじゃない! 明日を護るために戦うんだ!」

『いいからさっさと来なよ、ブレイバーン!』


 そう言うと、イーラはカプセルから〈ルル〉を補充してみせた。身体からエネルギーが溢れ、先程までより強大な力を感じられる。
 だが、イサミとブレイバーンは動じない。目の前の敵がなんであろうと倒す──それだけだった。


「いくぞ、ブレイバーン!! 俺たちが、この世界を護るッ!!」

『ああ!! 私とイサミでこの世界を救うんだ!!』


 ブレイバーンの剣の煌めきが二人の勇気に呼応するように増していく。


『うおおおおぉぉおおおっ!!』


 そして、渾身の一閃が放たれ──


──ハワイ:ATF旗艦コンステレーション:格納庫──

 戦いが終わり、半日が過ぎた。
 空母コンステレーションは〈デスドライヴズ〉の攻撃を受け座礁してしまい、航行不能となっている。しかし内部の機能は生きており、現在格納庫の一部は臨時の救護施設として使用されていた。
 戦闘中に負った傷の処置を終えたリュウジ・サタケは、先程報告を受けたばかりの負傷者リストを眺めていた。
 〈デスドライヴズ〉との戦いは、結果だけ見れば人類の勝利だ。
 地球に飛来した全ての塔は破壊されており、確認された〈デスドライヴズ〉も戦いの末、撃破されている。
 だが、その代償は大きかった。


「アオ・イサミ……」


 サタケはリストを眺め、ブレイバーンのパイロットだった男の名を呟いた。
 負傷者は数え切れないほどだが、奇跡的に死者は一人だけだ。
 リストにはこう書かれている。

 ──Second lieutenant Isami Ao :K.I.A

 限界まで力を振り絞りイーラを倒したブレイバーンとイサミはそのまま〈デスドライヴズ〉を全滅させ、力尽きたのだ。
 戦いの最中、ブレイバーンがイーラから受けた一撃は彼らにとって致命傷であった。それでも仲間を護るため、剣が折れ、さらなる傷を受けようとも──コクピットから投げ出される最後の瞬間まで、戦い続けたのだ。


「……お前のおかげだ」


 ダイダラのメンバーも、不時着の後に大破したJ-STARSの搭乗員も、みんな生きている。
 だが、ヒーロ−だけが、そこにいなかった。

勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルルエピソード1-2

──ハワイ島:マウナケア火山付近──

「どうして……」


 そんな言葉を零したのは、不思議な雰囲気で愛らしい容姿を持つ少女──〈デスドライヴズ〉の『ルル』。
 本来〈ルル〉とは、〈デスドライヴズ〉が瞬発的なエネルギーの解放を補助するため体内で運用する人間の形をした有機生命体を総称する名前だ。だが、その名は今、彼女だけのもの。
 ATFに保護された彼女は、彼らから様々なことを学習した。人間としての営みや、それに付随する感情──今までただのモノとして扱われてきたひとつはみんなから少しずつ、でもたくさんのものを貰って『ルル』というひとり・・・になった。


「みんな、いっちゃった……」


 そんな彼女にある最も大きい感情は、悲しみだった。
 イサミもスミスもブレイバーンも──みんな、ルルを形作る大切な欠片たち。
 それが失われる未来が訪れることを想像もしていなかったから。


「スミス……イサミ……」


 いくら呼びかけても、彼らはもうこの世にはいない。
 ATFのTSパイロット、ルイス・スミス中尉が〈デスドライヴズ〉の一体『クーヌス』と相打ちになったことを契機に、人類と〈デスドライヴズ〉の戦いは一気に終局へと加速していった。
 ほぼ不死に近い命を持つ〈デスドライヴズ〉の悲願は、完全なる死を迎えること。彼ならば自分たちに相応しい死に様を与えてくれるだろう──そう考えた〈デスドライヴズ〉は『ブレイバーン』との戦いを望む。
 〈デスドライヴズ〉たちは長き旅路の末に見つけた終わりのため、『ブレイバーン』は正義のため、全ての生きとし生けるもののため、そしてイサミのために戦い──

「みんな、いなくなった」──

 最後の戦いの末、残されたのは『ブレイバーン』のエネルギーを司るコア部分のみ。
 優しく語りかけてくれた彼らの声は、ルルにはもう聞こえてこない。
 どれだけ叫び、訴えても、ルルの願いは届くことはなかった。ただ残酷な現実だけがそこにあって、無理矢理に自覚させられる。自分が、何も持っていないことを。
 いつか何かを返すことができたはずの人たちは、もういなくなった。待っていてはくれなかった。
 だが、ルルの心の火は、まだ消えていない。


「でも──ルル、やる」


 未知のエネルギーに満ちたブレイバーンのコアは、奇跡を起こせるかもしれない。その奇跡は死んでしまった人たちを助ける力になるかもしれないと、ルルは信じている。
 だから諦めない。諦めてなんてやらないと、ルルは心の奥で叫び続ける。〈デスドライヴズ〉も、『ブレイバーン』も消えた世界でも、まだ希望が残っていると。


『……よもや、〈ルル〉が意志を示すとはな』


 そこに、高慢な声が響いた。
 ATFの隊員とは異なるイントネーションでルルと発した声の主は〈デスドライヴズ〉の最後の生き残り『高慢のスペルビア』。
 幾度となくブレイバーンを苦しめた機械生命体であり──ルルが元々搭載されていた〈デスドライヴズ〉でもある。


「そう。ルルのいし」


 ルルはさも当然とばかりに即答した。


「イサミと、スミスと、ブレイバーンから、おそわった」

『ブレイバーン、か……我と推して参りもせず先に逝きおって……』

「まだ、ブレイバーンたち、いる……ここに」


 そう言って、ルルは自らの胸に手を当てた。
 彼らの勇気は、意志は、魂は──ルルの中に確かに灯っている。
 その言葉に、スペルビアの心は小さくざわめいた。


「……それで、人間の真似事か?』

「ちがう。ルルはルル」

『〈ルル〉ひとつで、何ができるというのだ』

「できない」

「……ぬ?」


 ルルの言葉にスペルビアは初めて関心を寄せた。スペルビアは『ルル』を知らない。自分を構成する部品のひとつとしか考えていなかった〈ルル〉が、物事の成否を判断するなど、到底考えられないものだったのだ。


「だから、てつだって」

『手伝う……? 今、手伝えと言ったのか?』


 続く言葉に、スペルビアは困惑をみせた。その感情は、彼女が自分の知らないルルだという確信めいた予感。


「そう。ルルとスペルビア、イサミとブレイバーン、なる」

『ブレイバーンになる、だと?』

「そう。ゆうきばくはつで、おしてまいる!」

『それが、〈ルル〉に宿った魂の選択か……ふっ……はははっ! 面白い、実に面白い! この身を討ち滅ぼす者が現れぬなら、自らがそれを成す存在となれと!」

「ん?」

「ふっ……はっはっは! 果てられぬ命の使い道は、ここにあったか!』

「スペルビア、うるさい」

『ぬっ!?』


 ルルはふふん、と満足気な笑顔を浮かべる。
 これからは誰かの──自分にとって陽だまりだった人を護るのだ。たくさんのものをくれた、ヒーローたちのように。いつかまたイサミと、スミスと、ブレイバーンに出会えたとき、胸を張れるように。
 そのために、まずは──


「とにかく、やる」

『そうだな……まずは一度、よいな?』

「ん」

「ならば、まずは我の中へ戻れ』

「わかった」


 ルルがスペルビアのカプセルに入り、スペルビアの内部──操縦席に近しい場所へと移動させられた。


「おー」

『驚きだな、こんなにもあっさりと……』

「ルル、もともといた」

『だとしても、それだけではなかろう』


 スペルビアの中では、それは若干ながら結論が出ていることだ。今現在も、スペルビアが抱いていたルルの情報は変化している。エラーが起きた道具ではなく人格を持った人としての認識が出来上がりつつあった。


『さぁ──眠るのだ』

「ガガピ?」


 わけがわからないまま、ルルの意識は闇へと溶けていく。
 そしてスペルビアもまた、海底へとその身を沈めていった。
 それは、戦うために必要な準備──ブレイバーンへと至る、最初の一歩。


©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

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