表面の反射層作りと透明度のコントロールでHSGK「デモール・ゾロ」の半透明装甲を表現【ファイブスター物語】
2024.02.16デモール・ゾロ エトラムル型ファティマ搭載タイプ 【ボークス 1/72】 月刊ホビージャパン2024年3月号(1月25日発売)
表面の反射層作りと透明度のコントロールで半透明装甲のデモール・ゾロを表現する
ボークス1/72スケールレジンキット、HIGH-SPEC GARAGE KITシリーズ最新作デモール。キットはエトラムル型ファティマ搭載タイプのデモール・ゾロとファティマ搭載タイプのデモールの2タイプを同時リリース。今回は黒と白 装甲が印象的なデモール・ゾロを製作。特徴的な半透明装甲を表面の反射層作りと透明度のコントロールで表現。美しいグロス塗装かつうっすらと光を透過する透明感のある装甲を再現している。
一昨年から怒涛の勢いで新製品をリリースし続けるボークスのGTMシリーズ。今回製作したのは、最新作1/72デモール・ゾロ エトラムル型ファティマ搭載タイプです。キットの仕様は本シリーズをリリース順に追っている方ならご存知の通り、クリアーと不透明ベージュの2種類のレジンで成型されており、GTM特有の「触れるほど近付いて初めて透明と分かる」装甲を再現できる仕様となってます。
これまでも約2年、同社のGTMキットを製作してきましたが、この「触れるほど近付いて初めて…」という外装の透明感が、ようやく分かってきた気がします。よく美人女優やアイドルを“透明感のある肌”とか“透明感のある美しさ”などと形容します。しかし決して骨格や内臓が透けて見えているわけではなく“透明”ではありません。文字通り“透明”と“透明感”は全く異なるものです。
みなさんも蝋人形を一度は見たことがあると思いますが、なぜ人の似姿を造形するときに蝋を使用するのかといえば、人間の皮膚や筋肉と同様に光を透過するからです。アンパンマン原作者として知られる、やなせたかし氏が作詞した「手のひらを太陽に」でも歌われているように、太陽光を透過した透明感こそが人間の皮膚特有の質感です。GTMの装甲に関してもこれと同じ考え方で臨めばいいのではないのか? というのが僕の考えです。
一般的なメカ造形物の塗装は、光を透過することで重厚感が失われるため、サーフェィサーなどで完全に遮光。その上から塗装を施すのが通例となっています。この方法論でGTMの外装に塗装すると、地球上に存在する金属や合金と同じ表現になってしまいます。GTMはそんな単純で容易に想像できる素材で構成されてはいない、ということなのでしょう。そこで今回はさらに塗装前に脳内リハーサルを重ね、未経験の塗装工程を重ねてみました。
黒の外装には(以下すべてガイアカラー)
1層目=クリアーパープル(赤味)+純色マゼンダでコート
2層目=クリアー+ブラック+パールコールドクリアー(少量)
3層目=クリアーブラック+ブラック(少量)
白の外装には
1層目=クリアー+パールコールドクリアー(少量)
2層目=クリアーホワイト+蛍光ブルーグリーン(少量)
で基本塗装。クリアーを数回コート後に、中研ぎ⇒薄めのクリアーをさらに数回コートし外装を表現しています。基本色が黒系なだけに、表面の反射層作りと透明度のコントロールは今までにないレベルで繊細な調整を行いました。
この塗装の結果、全体のイメージは黒ですが、光が透過した部分のみ赤紫に見える外装に仕上げています。今回特に心掛けたのは“通常のプラキットのクリアーバージョン”のような透明度にはしないことでした。みなさんもこの機会に“透明感”について考えながら製作してみてはいかがでしょうか?
ボークス 1/72スケール レジンキット“HIGH-SPEC GARAGE KIT”
デモール・ゾロ
エトラムル型 ファティマ搭載タイプ
製作・文/桜井信之
HSGK 1/72 デモール・ゾロ エトラムル型ファティマ搭載タイプ
●発売元/ボークス●80300円、3月31日〜4月14日「ボークスF.S.S.シリーズ展 in 大阪SR 2024春」限定販売●1/72、約34.5cm●レジンキット●原型/造形村F.S.S.プロジェクト
▼ 関連記事はこちら
©EDIT ,All rights reserved.
桜井信之(サクライノブユキ)
著書「たった2日でできる! 週末ホビーライフ」が好評発売中。あらゆるテクニックに精通する模型の伝道師。