HOME記事スケールモデルプラッツ/BEEMAXより1/12「ロータス 99T」野本憲一氏のコダワリをたっぷり詰めて80年代当時を再現して製作!

プラッツ/BEEMAXより1/12「ロータス 99T」野本憲一氏のコダワリをたっぷり詰めて80年代当時を再現して製作!

2024.02.23

ロータス T99 1987 モナコGPウィナー【プラッツ/BEEMAX 1/12】 月刊ホビージャパン2024年3月号(1月25日発売)

ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー 正面

 80年代F1ブームの絶頂期を象徴するマシンのひとつ、ロータス 99T。これを待望の1/12スケールで再現するということでカーモデラーの注目を集めていたプラッツ/BEEMAXの「ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー」を「ノモ研」でおなじみ野本憲一が製作。リアルタイム世代ならではのこだわりをたっぷり詰め込んだ見ごたえある一台を野本氏の詳細な解説とともにご覧いただこう。
※記事中の途中写真と解説は製作者による。

ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー マーキング アップ
▲1987年モナコGPを制したアイルトン・セナが搭乗したロータス 99Tを1/12スケールならではの緻密さで再現。なお、今回の作例で使用している「CAMEL」関連のマーキングは市販のデカールを使用。キットには同梱されていないのでご注意を

ロータス99Tコダワリポイント ─カウル編─

ボディカウルは“フチ”
▲ボディカウルは“フチ”の表現にこだわりたい。ラジエター前の開口部では縦のエッジを丸め内側にも回り込むように整形。コーナー部も角丸になるように修正
ロールバーの開口部
▲ロールバーの開口部も平らな面を削って薄く見えるように。隣の丸い穴では内側に厚みを足し、山の部分が厚めに見えるようにしている
カウルを留めるビス
▲カウルを留めるビスをキット(+)から市販の(-)ネジに変更。平頭のものを丸頭に切削した。ノーズ用はリング付きなので洋白線を曲げてハンダ付けした
フラップ端のリベット
▲フラップ端のリベットがキットではL型の立っている面に付いているので、これは下の面に付くように修正。写真は金属ピンを刺すために穴開けした状態
車体 正面
サイドミラー基部
▲サイドミラー基部。成型の都合で下側が斜めになので、そこを切り込んで取り除く。エッチング製のディテールアップパーツに貼り替える選択肢もある
サイドミラー パーツ
▲ミラーは、上のフチが少し高くなっているところをプラ板を貼り足して表現。外周は上下も緩い曲面でカドを落とした形なのでそれに近づくように修正している
サイドミラー アップ
Fサスアームを挟むカバーを先に接着しておくための加工
▲Fサスアームを挟むカバーを先に接着しておくための加工。カバーで隠れる棒を一部切り取り、穴に通せるようにし、切った箇所はパイプを刺して補う。ウェーブの3.0mm肉薄パイプがちょうど良かった
サスアームを加工し、取り付けたところ
▲サスアームを加工し、取り付けたところ。ココの目処がつくことで、カバー部の仕上がりが高められるとともに、ピトー管のステーもしっかりと取り付けられるようになる
自作したピトー管
▲自作したピトー管。付き方はレースによって違っていたりするが、モナコGPでは途中のステーはカバー先端に重なるように固定されている。実車では薄い板で挟んでいるようだが、作例は1mm角棒を加工し内側から棒が填まるようにしている
取り付けたところ
リアウィング後面のステー
▲リアウィング後面のステーは三日月型で段差のない形状をプラ材で自作。それに合わせるためフラップ裏の突起も少し延長している
タミヤカラーTS-34キャメルイエロー、サーフェイサーエヴォ フレッシュ
▲ボディ色はタミヤカラーTS-34キャメルイエローを選択。中身をビンに出してエアブラシ塗装。下地はサーフェイサーエヴォのフレッシュを使用
車体背面

ロータス99Tコダワリポイント ─モノコック編─

内部機構1
モノコック
▲モノコックでは表面の◎モールドが斜面では楕円穴になってしまう点、黄色い面の◎モールドは左右で異なっているといころを修正したい。またアッパーアーム基部を覆うフェアリングは前縁の合わせ目はないので、それを消したい
◎モールドをエッチングパーツに貼り替えるため、削り落とした状態
▲︎◎モールドをエッチングパーツに貼り替えるため、削り落とした状態。貼る位置にはガイドの凹みを付けておく。表面のヒケもならせるので全体の印象もよくなる
ディテールアップパーツのカーボンデカールを貼り、いったんクリアーでコート
▲︎ディテールアップパーツのカーボンデカールを貼り、いったんクリアーでコート。次にエッチングの◎を水性接着剤で貼り、保護に半ツヤクリアーでコート。サイズに見合った実感の高い仕上がりとなった
実車同様に◎の箇所でケーブル止めを追加
▲︎実車同様に◎の箇所でケーブル止めを追加。穴開けし、洋白線を通して裏から引っ張ればしっかり密着できる
追加した状態
モノコック側面のモールドとピトー管の配置図
▲︎モノコック側面のモールドとピトー管の配置図。赤いのがキット部分。▲(三角)印は消すモールド。水色が追加する部分
側面の◎モールド変更したところ
▲︎側面の◎モールド変更したところ。0.2mmプラ板をポンチ抜きして使っている。裏面からのビス穴(▲の穴)も表面側のみ埋めている
モノコック側面
▲モノコック側面はL型の金具で床と横板をビス留めする構造。側面に使うネジは表面のネジ穴を埋めた都合で、少し短く加工して使っている
ロールバーは側面の楕円穴
塗装後のロールバー

▲︎ロールバーは側面の楕円穴をポリパテを彫り込んで製作。アンテナはディテールアップの金属製を使用。それに合わせて基部の配置も見直し、修正している

モノコックのステー
▲︎キットで省略されていたモノコックのステーは3Dプリントによる自作パーツで再現した
内部機構2

ロータス99Tコダワリポイント ─コクピット・エンジンほか編─

メーターパネル部
コックピット内部

▲︎メーターパネル部。凸状バイザーの下には黄、青、赤のランプがあるので、各色のクリアーランナーで追加。トグルスイッチのツマミも伸ばしランナーで先太の形状や傾きを表現してみた。ハンドル裏にカールしたケーブルも追加

メーターの前方に付く部品 修正前
メーターの前方に付く部品 修正後
▲メーターの前方に付く部品は台形ではなく、曲面状に修正。丸穴は延ばしプラパイプを差し込んで表現した
シフトレバー
▲シフトレバーはグリップの基部部分の形状を修正。少し内側に傾いて付くようにもした。その前側に円盤状のキルスイッチを自作し追加
エンジン上部のチャンバー部分
▲︎エンジン上部のチャンバー部分。複雑な合わせ目なので、丁寧に整えたい。造形的にはボルト周辺の面取り、後端の丸みなどに手を加えた
エンジンのヘッドカバー
▲エンジンのヘッドカバー。プラグコードはモールドされているので、ケーブルを挿すためにはそれを削り落とす必要がある。モノコックへのブラケットは斜め板の追加、ボルトの貼り直しなど
ウェーブの1.0mm六角ボルトをマスキングテープに並べてチタン色に塗装
▲ボルト頭は塗装後に貼り足すと仕上がりがいい。ウェーブの1.0mm六角ボルトをマスキングテープに並べてチタン色に塗装。精密感と金属感がアップ
エンジン部 アップ
ギアケース上面の配管基部パーツ
▲ギアケース上面の配管基部パーツ。説明書指定は前後が逆なので注意。造形的には多方向に向いた抑揚を削り込んで再現した。ここはパッケージ画が参考になる
ダクト途中の配管
▲︎ターボ周辺の精密感はこのキットの見所のひとつ。ダクト途中の配管をスプリングパイプを使って追加。カタツムリ状パーツのフチは段付きに加工した
追加した内部機構
▲ギアケース横からリアのロアサスアームに重なる位置に小ダクトがあるので、プラ材で自作。その付近のステーとブラケットも追加。アンダートレイ側の凹みと位置が合う
塗装後の内部機構
アクティブサスのアクチュエーターの上部
再現したパーツ1
再現したパーツ2

▲ダンパーというかアクティブサスのアクチュエーターの上部は箱型形状や配管基部があるので、おおむねの形状をプラ材で再現

二枚重ねの遮熱板は間にスペーサーを挟み微妙な隙間を再現
▲二枚重ねの遮熱板は間にスペーサーを挟み微妙な隙間を再現
ドライブシャフトのパーツ
▲ドライブシャフトのパーツ。ブーツの造形が円盤なので丸みを付けたい。ここは小さい円弧に加工した刃先で削り込んでみた
ブレーキディスク
▲ブレーキディスクの合わせ目消し。貼る前に接着面を整形するとともに中に仕込むナットの凹みを少し深く彫っておく。接着は樹脂入りセメントをハミ出し気味に使い、充分乾燥させてから整形
前後アッパーアームにある円筒モールド
組み立てた際の様子

▲︎前後アッパーアームにある円筒モールドはアクティブサスのセンサー。キットでは形状が控えめななので、部品を自作して付け直した。形状も涙滴型で、位置も彫り込んだ箇所となる

フランジ付きホイールナット
ホイール アップ

▲先細の車軸ネジ、フランジ付きホイールナットはディテールアップパーツの中でもっともありがたいパーツ。キャッチピンもエッチングパーツに含まれている

■待望の1/12スケールF1キット
「ロータス99T」は1987年のF1マシン。名門ロータスチームに当時最強のホンダターボエンジンの組み合わせ。シャシーにはかねてよりテストしていたアクティブサスペンションを実戦投入。ドライバーはチャンピオン“候補”であったアイルトン・セナ、そして日本人初のレギュラードライバー中嶋悟。この年から日本でのTV全戦生中継や鈴鹿での日本GPが始まる中でF1を知る人ならずとも注目を集めたマシンでした。優勝はセナによるモナコGPとデトロイトGPの2勝。特にモナコGPの優勝は「モナコマイスター」の始まり、そしてアクティブサスペンションという“ハイテク”の勝利として記憶されます。30年以上前のマシンですが、当時を体験している世代には今もその姿は鮮明で1/12スケールでのキット化は待望といっていいでしょう。

■キットについて
「プラッツ/BEEMAX 1/12 ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー」ということで、キットの仕様はセナ車のみ。外見はもちろん内部の精密再現と、大きさに対応した組み付けを取り入れた内容となっています。足周りやモノコック側面の固定には1.2mmの小ビスと金属製ブラケットが取り入れられています。モノコックの側面は黄色い面との境界が段付きになっているのは、カウルの肉厚や組み付けを考慮しての対応かなと(実車では一連の成型で黄色は単に塗り分け)。サスペンションアーム類は硬質な素材でガッチリ組めます。ターボ車では特に多いケーブル、配管類の再現ではコード類とともに汎用的なホースジョイント、コネクターのランナー枠が付属。別途発売の「ディテールアップパーツ」ではカーボンデカールやエッチング、金属削り出しパーツ。シートベルトのリボンなどが付属。すべて活かすかは別にして、細部にこだわるなら合わせて用意したいものです。今回の作例では効果的な箇所に使っています。そしてディテールアップ派の方には本キットのパッケージ画も参考になります。作例で加工したモノコック側面のモールドや追加したシリープレートの小ブラケット、ギアボックス上の配管基部などがしっかり描かれています。ロータス99Tは車体全体が大きな一体型カウルで覆われること、そしてイエロー単色であることから、カウルを付けた姿だけ限ってしまえば一段と完成させやすいともいえます。

■作例のコダワリポイント
 1987年当時から集めていた雑誌などを参考にディテール再現を行っています。主なところは途中写真のほうを参考に。特に行いたかったのはモノコックのカーボン模様を施した上での鳩目鋲「◎」のきれいな再現、これはディテールアップパーツを利用することで待望の仕上がりとなりました。そして左右のピトー管取り付けの再現。サスアームカバーに重なる取り付けをそれなりの見映えと確実性で実現するのはこのスケールでもようやくでした。各所に使う極小ビスはネジ頭は「+」なため、目立つ箇所ではより実車に合わせた形状に交換しています。エンジンとモノコック接続部分は六角の凹み頭のスクリューキャップに(ネジ専門店で入手)。カウル側面の箇所は写真のように「-」としましたが、最終的に組んでみるとこのネジなしでもカウルが浮かずにピタリと締まることがわかったので、結局ネジ頭だけを切って埋めこむ状態になっています。これが分かっていれば初めからネジ部の突起なしで、より実車に近く仕上げておけたと思われます。そこは一度組んでみての発見なのでやむなし。これから手を付ける方は考慮してみてください。興味がある方にはぜひ手にとって体験してほしいキットでした。

プラッツ/BEEMAX 1/12スケール プラスチックキット

ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー

製作・文/野本憲一

ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー
●発売元/PLATZ/BEEMAX●28600円、発売中●1/12、約35cm●プラキット


ロータス 99T 1987 モナコGP ウィナー用ディテールアップパーツ
●発売元/PLATZ/BEEMAX●10340円、発売中●1/12●エッチングほか

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