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日本の戦闘機「零戦」“三二型”と“ニニ型”の違いは? 【いまさら聞けないすごいヤツ】

2024.01.16

いまさら聞けないすごいヤツ!!/●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2024年2月号(12月25日発売)

日本の戦闘機「零戦」“三二型”と“ニニ型”の違いは? 【いまさら聞けないすごいヤツ】

イラスト/大森記詩

 「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は前回からスタートした「零戦スペシャル」の2回目。零戦バリエーションから三二型とニニ型をピックアップします!


 三菱A6M3 
 零式艦上戦闘機三ニ型 


三菱A6M3
零式艦上戦闘機三ニ型

全幅/11m 
全長/9.06m
全備重量/2,535kg 
エンジン/「栄」二一型エンジン 

馬力/1130馬力 
最高速度/544km/h 
航続距離/2134km(増槽装着時) 
武装/ 20mm機銃×2、7.7mm機銃×2

零式艦上戦闘機三ニ型
▲台南航空隊所属機 昭和17年 ニューギニア島 ブナ基地
零式艦上戦闘機三ニ型下面
零式艦上戦闘機三ニ型上面

▲三二型最大の特徴が、主翼端を左右50cmずつ短縮し、角形としたこと


 三菱A6M3/3a 
 零式艦上戦闘機二二型 


三菱A6M3/3a
零式艦上戦闘機二二型

全幅/12m 
全長/9.121m
全備重量/2,679kg 
エンジン/「栄」二一型エンジン 

馬力/1130馬力 
最高速度/540km/h 
航続距離/2134km(増槽装着時) 
武装/ 20mm機銃×2、7.7mm機銃×2

零式艦上戦闘機ニニ型
▲三二型の航続距離不足問題を解決すべく開発されたニニ型。主翼が全幅12mに戻されました
零式艦上戦闘機二二型下面
零式艦上戦闘機ニニ型上面

▲第582海軍航空隊 進藤三郎少佐搭乗機 ブーゲンビル島/ブイン 昭和18年6月。こちらのイラストは、主翼機銃を長銃身としたニニ型甲


型番のねじれに隠された零戦の苦闘

解説/宮永忠将

 空戦性能を強化した零戦三二型 

 太平洋戦争の初めから終わりまで使われた零式艦上戦闘機には、さまざまなサブタイプが存在し、二桁の数字で分類される。十の位は機体の開発順序で、一の位はエンジンの種類を示す。だから最初の零戦は一一型で、これの主翼をエレベーターのサイズに合わせるため折りたたみ式にしたのが二一型というわけ。基本的には数字が大きくなるほど新型で、性能も向上すると見なしてよい。
 真珠湾攻撃以降、零戦二一型で暴れまくった日本海軍だけど、いくつか不満も出てきた。まずは主翼の大きさ。大きな主翼だと運動性は抜群なのだけど、空気抵抗が大きくて速度が上がらない。それにいちいち折りたたみするのも面倒だ。
 そんな時、ちょうどエンジンも空気を圧縮して燃焼効率を上げる二速過給器付きの新型、栄二一型が導入されたので、機体の設計ごと一新。主翼先端の折りたたみ部分を50cm分カットして角形に整形した「零戦三二型」を導入した。開戦から5ヵ月後の1942年4月のことだ。
 この導入で、速度、上昇性能が目に見えて向上し、さらに横転速度と急降下の鈍さという弱点もある程度改善された。そのぶん、燃料タンクが小さくなり、航続距離が短くなってしまうけど、元々の航続性能がすごすぎたので問題にはならないはず、であった。

 零戦二二型はレトロな新型機? 

 ところが「零戦三二型」は思わぬつまずきをしてしまう。実戦配備の直後、日本軍はガダルカナル島の戦いに突入するが、前線の飛行場を米軍に奪われた結果、三二型の航続距離不足が問題となってしまったのだ。頼みの空母がミッドウェー海戦で4隻も撃沈されてしまい、陸上基地から出撃するしかない状況も三二型には不利に働いた。この時、日本軍機はラバウルを出撃拠点としていたのだけど、航続距離が減ったぶん、三二型ではガダルカナル島上空で充分な戦闘時間が得られないのだ。
 そこでエンジンとプロペラ、胴体設計は三二型のまま、主翼を前の形に戻して燃料タンクを追加した新しい零戦が作られた。これが「零戦二二型」だ。開発順では新型なんだけど、設計がひとつ前に戻っているから、三二型→二二型という、ちょっとおかしなねじれが起こってしまったというわけ。
 これで航続距離問題は解決……したのだけど、二二型が出てくる1942年の終わりまでには、中継基地となる飛行場がブインなどに作られていたので、三二型でも問題ないという状況になっていた。
 一方、敵のアメリカ軍は、空戦でキビキビ高性能を発揮する三二型を見て、主翼の形が違うことに気づくと、これが同じ零戦だとは思わず、新型戦闘機だと警戒して恐れた。それだけ高性能機であったのに、三二型は早々に生産中止となったから、総生産機数1万機を超える零戦シリーズの中で343機しか作られていない。この時期、アメリカに生産力で劣る日本なのに、かなり無駄足を踏んでしまったわけ。
 1942年から翌年にかけての南方での航空戦は零戦のハイライトだけど、激闘に身を置いたパイロットとは別の、型番のねじれに隠された零戦の苦闘のこともぜひ知ってほしい。


零戦とエース❷

西沢広義
(1920 ~ 1944)


 長野県出身、1936年に予科練習生となり、戦闘機操縦員のコースに進む。太平洋戦争直前に千歳海軍航空隊に配属され、南方を転戦。後に台南空に転属となり、有名な坂井三郎と撃墜数を競う。1942年10月には30機撃墜を公認された。以降、同僚が相次いで戦死する南方での激戦を生き延びて、1943年9月には100機撃墜で海軍を代表する大エースとなる。翌年10月25日、関行男大尉率いる神風特別攻撃隊敷島隊の直掩という辛い任務を務めた翌日、輸送機に乗って移動中、敵機に襲われミンドロ島で戦死した。


1/72 スケールで作り比べよう!

 タミヤの1/72スケール零戦シリーズはどれも傑作揃い。手のひらサイズのボリュームなので、作り比べにも最適です。ぜひ三二型と二二型を作り比べて、型番のねじれに隠された各部の特徴を味わってください。

零式艦上戦闘機三ニ型タミヤパッケージ

1/72 三菱 零式艦上戦闘機三二型

●発売元/タミヤ●1540円、発売中●1/72、約12.6cm ●プラキット

零式艦上戦闘機ニニ型 タミヤ パッケージ

1/72 三菱 零式艦上戦闘機二二型

●発売元/タミヤ●1540円、発売中●1/72、約12.6cm ●プラキット


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