『巨神ゴーグ』からSMP「ラブル・ガーディアン」をポイントをおさえた工作によるレビュー作例をお届け!【サンライズ・メカニック列伝】
2023.11.14サンライズ・メカニック列伝 第58回 ラブル・ガーディアン【バンダイ】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2023年12月号(10月25日発売)
ラブル・ガーディアン(『巨神ゴーグ』より)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は本コーナーでは初となる『巨神ゴーグ』のメカが登場。SMP「ラブル・ガーディアン」のレビュー作例をお送りしよう!
南太平洋オウストラル新島では、故郷の星を失い3万年前に地球に降り立った異星人たちが、人類の成熟を待つために地下遺跡で永い眠りについていた。彼らを護衛する巨大人型ロボットがラブル・ガーディアンである。異星人の人数に相当する多数の機体が眠っていたが、地球人に幻滅し掃討を決意した異星人の指導者マノンの手により覚醒、遠隔操作され大軍で進撃を開始する。マノンのガーディアンやゴーグより能力は劣るものの、素手で戦車を破壊する攻撃力と、現用兵器の攻撃を受け付けない装甲を有した、人類にとって脅威となる存在である。
作例は田仲正樹が私物を投入して製作。キットの良好なフォルムと可動機構を活かしつつ、完成度とプレイバリューをより高めるためのアイデアを各所に盛り込んだ。ポイントを押さえた工作と塗装は読者諸氏がお手持ちのキットを製作する際、大いに参考になることだろう。
[製作途中状態]
21世紀にまさかのプラキット化となったSMPラブル・ガーディアンは、設定画や本編の作画にある独特の体型が再現され、同シリーズのゴーグ、マノン・ガーディアンと同等の広い可動範囲も有した、『ゴーグ』ファン期待どおりの出来。作例はキットのフォルムはそのままに、HGガンプラのボールジョイントや30MMシリーズの関節機構を移植して可動部を改良。同時に各部の隙を軽減させて、完成度をより高めることを目標に製作されたもの。初レビューということもあり、普段の田仲氏の作例と比べるとやや控えめで抑制のきいた工作内容となっている
[胴体]
脇のダクト状の部分は特に合わせ目を消すのが難しいため、くりぬいてプラ板で作り直すのがいいだろう。腰の各装甲は裏面の空間をエポパテで埋めて隙を軽減させている
[腕部]
キットでは肩装甲がフリーな構造で動きすぎてしまうため、肩関節軸と同径の穴を設け、差し込んで固定する仕様に変更。「可動範囲もフォルムもほとんど変わりません」とのこと。肩ブロックには30MMアルト上腕のロール機構を移植し、上腕を後ハメ化。ヒジ関節は引き出し機構を活かすなら後ハメ工作をせずにキットのままにしておくほうがいいだろう。手首関節は市販のバーニアとエポパテで加工し隙を軽減した
[脚部]
太モモ上部に30MMアルト上腕のロール機構を移植し、股関節の球体部を後ハメ化。太モモ外装は上部エッジにプラ板を貼って形状を微調整している。ヒザ関節はヒジと同様、引き出し機構を活かすなら後ハメ化はさけるべきだろう。ふくらはぎ下部はエポパテで設定画の角ばった形状に近付けている。足首関節はHGギラ・ズールのボールジョイントを移植して可動範囲を拡大。足の甲の上部には可動軸を隠すために1.5mm厚のプラ板を接着している
[武装など]
砲身付け根下部のディテールを流用パーツでそれらしく再現。砲口内は劇中作画を参考に市販のレンズパーツを接着した。コードはキットの固定式のほかにリード線に真鍮パイプの輪切りを被せた可動式のものも用意して、腰だめに構えるポーズもできるようにしている。「グリップの形状が独特で握り手から外れやすいので、固定したほうがいいと思います」とのこと。拳は関節軸を隠すためバーニアパーツを加工し接着。握り拳はより立体感を強調するため、親指の先を削って凹部を彫り直し、作り直した親指を接着。平手は指の付け根を深く彫りこんだ
[頭部]
キットは8種の顔からひとつ選択して頭部を作る方式。作例は後頭部とアゴの部分を複製して頭部を8個製作し、差し替えて楽しめるようにした。内部の底面は市販のノズルパーツを接着して合わせ目をカバー。「頭頂部内壁側面の合わせ目は人類ではきれいに消せないので、適当に処理したあとで暗い色を塗ってごまかせばいいと思います」とのこと。首関節はボールジョイントを軸の抜き差しが容易な30MMアルトの足首関節に交換し、頭部を交換しやすくしている
■『ゴーグ』はじめます
サンショウウオが大好きなサンライズメカファンのみなさんは、『巨神ゴーグ』の本放送時にプラキットが2種類(と「Qロボゴーグ」4種類)しか発売されなかったことを今でも残念に思っているはず。私も当時、ゴーグとGAIL機甲部隊の戦いや、ダイノソアがゴーグにひっくり返されるシーンや、ロッドが500円札でくらげ弁当とみそ汁を買うシーンを立体で再現したかった…、いや今でも再現したい! ダイノソアやくらげメカの立体が欲しい! 作りたい! ということで、遅まきながら『ゴーグ』作例を製作していこうと思います。
まずはラブル・ガーディアンです。形も色もひたすら地味で、人気キャラクターが乗るどころか無人のやられメカ。でも、私は当時からこれのプラモデルが欲しかったので嬉々としてスーパーミニプラを購入しました。格好いいゴーグとは違う、どことなく不気味な独特のフォルムが非常に上手く再現されています。また、同シリーズのゴーグやマノン・ガーディアンと同様、ヒジやヒザの関節を引き出し式にすることで、その周辺の形状を大きくアレンジせずに可動範囲を広げているのも注目すべきポイントです。
一方でもっとも気になったのは、顔が8種類付属しているのに、その中からひとつを選んで作らなければならないこと。ここは頭部部品を7セット複製して、頭を8つ揃えるしかないでしょう。また、肩装甲が固定しづらい、足首の可動範囲が狭い、各部の後ハメが難しい、けっこう隙がある…、といった点も気になるので、各関節にHGガンプラおよび『30MM』アルトの可動部を移植し同時に後ハメ化する、部品裏側の空間をエポパテで埋める、市販のパーツ類で関節軸を隠す…といった具合にひとつひとつ処理して、完成度をより向上させています。
■茶色以外の機体があってもいいよね
タカラ刊「デュアルマガジン」と、新紀元社刊「巨神ゴーグ メモリアルアートワークス」に掲載のカラー画稿と本編画像を参考に塗装。本体色は本放送当時のブラウン管TVの画面を思い出してカラー画稿より明度を少し上げ、赤と緑を混ぜた色を加えて彩度を少し落としています。
本体=クールホワイト+タン+ブラウン+オレンジに、インディブルー、純色バイオレット、イエロー、ハーマンレッド、純色グリーンを各少量
黄=モデナイエロー2にクールホワイト、ビビッドオレンジ、本体色を各少量、ブラック微量
赤=ハーマンレッド+モンザレッドにブラウン、ピンク、純色シアンを各少量
レーザー砲=本体色+クールホワイトにオレンジ少量
頭部の赤く光る部分はシルバーの下地にエナメル塗料のクリヤーレッドを筆塗り。スミ入れの後、半光沢にツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートし、アルミ蒸着テープを裏面に貼ったレンズパーツをレーザー砲の砲口内に固定して終了です。
次回はライバルが乗る青い機体の作例が登場します。
バンダイ ノンスケール プラスチックキット“スーパーミニプラ”
ラブル・ガーディアン
製作・文/田仲正樹
© サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
本誌ガンダム班および「宇宙船」誌の映像倶楽部に所属。「バッソーとメルカバ93型も製作中です」とのこと。