今の水性塗料の性能を知ろう!
水性塗料は、過去のものとは比べ物にならないほど進化を遂げました。ここでは「これだけ分かれば今の水性塗料を楽しく使える」という基本をまとめました。今回ご紹介する塗料を使うにあたって共通するポイントも記事の下にまとめましたので、ここを読んでからそれぞれの水性塗料の別記事をチェックしてください。またアクリルガッシュだけは模型用水性塗料と少々異なるので、別記事で詳細に紹介します。
それでは水性塗料の扉を開けてみましょう!
1 ラッカー塗料との最大の違い!! 刺激臭よさらば
水性塗料最大のアドバンテージ。それが匂いです。今回ご紹介している塗料は、すべて低臭なのでリビングやお部屋の省スペースで塗装を楽しめます。自分だけでなく、家族やパートナーにも優しく、環境にも優しい塗料なのです。
月刊ホビージャパン2023年11月号P.40で水性塗料の塗装環境づくりをご紹介!
▲このようにリビングの一角で筆塗りを楽しめます。エアブラシ塗装の環境づくりも簡単にできます。そちらは月刊ホビージャパン2023年11月号P.40でご紹介しています
2 乾燥後は下地の塗装を溶かさない! 筆塗りが快適
▲ラッカー塗料は、強い溶剤成分により下の塗料を溶かして筆塗りがぐちゃぐちゃになってしまうことがあります。水性塗料は乾燥すると耐水性となり、水性塗料どうしなら下の塗料を溶かすことはありません。これによってきれいな筆塗りが可能となります。ラッカー塗料で基本塗装をして、その上から水性塗料で部分塗装をするという方法もとても有効的です
3 乾燥時間もしっかり早くなっています!!
▲水性塗料に対して「乾かないんでしょ?」というコメントが多く寄せられます。そりゃぁ、ラッカー塗料のように吹いた側から乾燥するような速乾性はないですが、普通に塗装してたら苦にならないスピードで乾燥します。3分〜5分だとまだ半乾き。9分や12分待つと重ね塗りできるくらいに乾燥します。パーツを順繰り回して塗っていけば、全く問題なく塗装が可能です
4 水だけでコントロールできる塗料もある!
▲アクリジョン、シタデルカラー、ファレホといったエマルジョン系塗料は完全に水に溶けるので「水」だけあればコントロールが可能です
▲少量の水で非常によく伸びます。シタデルカラーとファレホにおいては、別次元ともいえる伸びと塗りやすさがあります
水性塗料といっても種類がある! 水溶性とエマルジョン系
水溶性
水にもある程度溶けるというのが水溶性。ですので塗料もある程度水で伸びてくれますが、性能をフルに発揮するには「専用溶剤」が必要となります。こちらの2種は一緒に専用溶剤も揃えておきましょう。
▲筆を洗ったりするのに水は使えます。塗料の性能をフルに発揮させたいなら、専用のうすめ液を準備してください。水でも希釈できないことはないので(セイラマスオは水を使用)試してみて、特にご自身のなかで問題なければ水を使用してください
エマルジョン系
水溶性よりも匂いが少なく、ほぼ無臭。塗料成分も水に近いものとなっていて、水に完全に溶けます。エアブラシ塗装は専用の溶剤があると便利ですが、筆塗りなら水だけで問題なしです。
▲近年模型業界に見事に定着したエマルジョン系。水溶性塗料とは使い方や使い心地が異なるので、別記事を読んでその違いをチェックしてください
水性塗料と他の模型用塗料の相性
模型の塗装には「下地」と「上塗り」という考え方があります。下地というのは主に一番最初に塗る塗料。上塗りはその塗料の上に違う色、もしくは同じ色を塗り重ねること。これで各部の色を塗り分けていきます。この上塗りのときに、各模型塗料の特性を知っているのと知っていないのとでは、塗装の快適さが大きく違うのでぜひ覚えてみてください。
主な3種の塗料で、下地色に塗った塗料に、どの塗料が重ね塗りできるのかという観点で見ていきます。
▲ラッカー塗料は最強の下地。下地塗料として販売されているサーフェイサーのほとんどもラッカー塗料で、模型用塗料を受け止める最高のベッドです。ただし、ラッカー下地にラッカーを塗り重ねる時は注意。溶剤の力が強いので、強く塗ったり何度も同じ所を筆でペタペタすると下地が溶け出します
▲水溶性・水性塗料は、ラッカー塗料を上塗りすると、ラッカー溶剤の力によって溶けてしまいます。水溶性の水性ホビーカラー、タミヤカラー アクリル塗料はエナメル塗料や油彩ベースの塗料にはしっかりと耐性があるので、上塗りするときはエナメル塗料を使いましょう。ファレホやシタデルカラーのようなエマルジョン系の時は、水性トップコートで保護してから上塗りします
▲エナメル塗料を一番最初に塗っていくことは稀。この塗料は主に細部塗装で活躍するので、上塗りのほうがメインになります。しかし、各塗料の相性を覚えるということで例を挙げました。気をつけたいのはエナメル塗料にエナメル塗料を塗り重ねる時。エナメル塗料は、エナメル溶剤にとっても溶けやすいので、同じ塗料で重ね塗りする時は注意が必要です
水性塗料を使用する時の共通ポイント!!
ここでは水性塗料で塗装する時に、各塗料で共通するポイントをまとめました。これは絶対に覚えておいてほしいものばかりなので、よく読んでから塗装にチャレンジしてください。
1 薄めすぎない!
▲水性塗料はラッカー塗料のように2倍・3倍と薄めたりしないでください。基本は塗料1:うすめ液1で塗っていきます。アクリジョンだけは塗料1:うすめ液0.3というシビアな比率になります。希釈を間違えると本当に色が定着しにくくなります。筆塗り時に水を使用する時も、水を入れすぎないように注意しましょう。筆に少量含ませた水で希釈する程度で全く問題ないです
▲水溶性塗料の水性ホビーカラーとタミヤカラー アクリル塗料をエアブラシで吹く時は、必ず専用溶剤を用意してください。こちらで薄めればきれいに塗装ができます
2 しっかりと乾燥させてから重ね塗り!
▲水性塗料はパーツ表面を溶かして食い付いているわけではないので、しっかりと乾燥してない状態で上塗りすると、下の塗料が動いて溶け出してしまいます。ラッカー塗料も乾燥させてから重ね塗りするように、水性塗料はよりそこに注意して塗装してください
3 エアブラシ塗装はエア圧を高めに設定
▲ラッカー塗料よりも塗料を押し出すためにパワーが必要になります。エア圧は0.1MPa〜0.15MPaが適しています。塗料の量はエアブラシの絞りを効かせてコントロールしていきましょう
4 一気に大量の塗料を吹き付けない
▲力技は厳禁です。いきなり大量の塗料を吹き付けると塗料が大暴走します。1回目はフワッと軽く乗せる程度に吹き付けます。2回目から本塗りしてみてください。1回目に塗った塗料がよいつなぎになって、一気に色が発色します。この塗り方を掴めば、もうどんな模型も水性塗料で塗装可能です!
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