HOME記事キャラクターモデルボークス伝説の「L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム」に桜井信之がすべてを注ぎ込む! 珠玉の作例をご堪能あれ

ボークス伝説の「L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム」に桜井信之がすべてを注ぎ込む! 珠玉の作例をご堪能あれ

2023.09.23

L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム【ボークス 1/100】 月刊ホビージャパン2023年10月号(8月24日発売)

ボークス伝説の「L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム」に桜井信之がすべてを注ぎ込む! 珠玉の作例をご堪能あれ
L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム イメージカット

ボークスIMS史上最大級・最高峰キットの魅力を繊細な塗装と研ぎ出しで極限まで引き出す

 L.E.D.ミラージュ−星団史にわずか7回しか姿を見せたことのない、ミラージュ騎士団の旗騎。3159年のアドラー星侵攻では、たった15騎でアドラーの大地を火炎放射器「インフェルノ・ナパーム」で焼き尽くし、「史上最強、星団最悪の白い悪魔」の異名で星団中を震撼させた。
 こちらの記事の式典仕様の作例に続き、ボークスIMS史上最大ボリュームのキットとして伝説を残したインフェルノ・ナパーム仕様の作例をお届けしよう。全長780mm、パーツ点数806、全身を覆う乳白色の半透明パーツ……そんな怪物キットに立ち向かうのはこれまたレジェンド級、数々のMH作例を手掛けてきた桜井信之。グラデーション塗装やスーパー・イレーザー・エンジンの焼け表現、デカールの段差をなくす繊細な研ぎ出し処理など、エースモデラーが持てるノウハウのすべてを注いで製作した珠玉のインジェクションキット版L.E.D.ミラージュをご覧いただきたい。

L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム 正面
▲2014年発売の本キットは、半透明装甲に換装したバージョン3と呼ばれる状態を完全再現。長大なフレームランチャーとリアヘビーなフレームタンクの完全再現はもちろん、外装の隙間や半透明装甲越しに透けて見えるブルーバイオレットの骨格、禍々しい輝きを放つ「血の十字架」、脚部を彩る鮮烈な炎のエフェクトなど本騎のアイコンのすべてをインジェクションプラスチックキットのランナーへと見事に落とし込んでみせた。模型史に残る逸品であることは疑いようがないだろう
L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム 左側面
▲フレームランチャー先端からフレームユニットの後端までを含めた全長は780mmと圧倒的な迫力。L.E.D.ミラージュ本体は各関節が可動するように設計されているが、安定したディスプレイを可能にするために作例では下半身の関節はすべて非可動タイプを使用している
上半身アップ
▲外装は成型色を活かして製作しているが、仕上げにガイアノーツ 蛍光クリアーをコートしている。蛍光クリアーをコートすることで、パーツが自然光に含まれる紫外線に反応、成型色をよりクールな白にシフトさせることができる。スカートのクロームはガイアノーツ プレミアムミラークロームを塗布しているが、本来の性能よりも反射を抑えて輝度が落ちるよう、派手になりすぎないよう塗布量を加減して使用している
大型ベイル
▲大型ベイルは左腕や左副腕など、取り付ける部位を3ヶ所から選択することができる。ベイルを持った場合は支えなしでも一応自立は可能だが、ディスプレイする場合はベイル用スタンドで支えるほうが良いだろう
フレームタンク アップ1
▲フレームタンクは成型色→蛍光ホワイト、外側の黒い部分はパールホワイト→クリアーブラックによるガンメタル。マニホールド等の各種パイピングはパールホワイト+パールグリーン→クリアーブラックでニュアンスの違うメタリックで仕上げている。放熱マントのブラックは本作例で唯一のツヤ消し仕上げにした箇所だ
ベイル裏側
▲ベイル裏側の有機的にうねるディテールも抜かりなく再現されている
右肩のベイル
▲右肩から伸びる副腕には小型のベイルが装着されている。そのベイルからさらに副腕が伸び、フレームランチャーに繋がる構造となっている。左肩も同様の構造となっており、その先端には大型ベイルが装着されている
脚部アップ
▲クリアーレッドのスネパーツには付属の炎のエフェクトを再現したデカールを貼り付けた。デカール貼り付け後、クリアーを3回コート。乾燥後に研ぎ出しを行いデカールの段差を解消している。その後さらにクリアーを2回コートし、カーモデルのように段差やムラが一切ない仕上げにしている
フレームランチャーの側面
▲フレームランチャーの側面にはさまざまな紋章が描かれているが、これらはデカールで再現されている。このフレームランチャーの内部にもブルーグレーのコアパーツが入っており、光の加減で透けて見えているのが確認できる
脚部 裏側
▲ヒザ裏や足首の隙間から見える内部フレームは、パールブルー+パールパープル→クリアーブラックで仕上げている。ふくらはぎのスーパー・イレーザー・エンジンのカバーはガイアノーツ プリズムメタリックホログラムを上掛けし、エンジン熱による焼けを感じさせる仕上げにした

インフェルノ・ナパーム製作の備忘録

塗装中のL.E.D.ミラージュ
内側の骨格 正面
内側の骨格 背面

▲塗装中のL.E.D.ミラージュ。外装の内側には設定形状に限りなく近づけられた骨格が存在するため、フレームも丁寧に磨いてブルーメタリックの塗装を済ませておく。半透明装甲で内部が透けて見えるため、軽んじてはいけない部分だ

フレームタンク パーツ1
フレームタンク パーツ2
フレームタンク アップ2

▲フレームタンク本体はなめらかな曲面で構成されているので、光沢仕上げにする際は塗膜表面を平滑に仕上げることで、より巨大な雰囲気を強調することができる。このユニットは完成後はかなりの重量となる。作例では運搬を考慮し取り外し可能にしているが、可能であれば本体との接続部分は強固に接着することをオススメする

数百個にも達するパーツ類1
数百個にも達するパーツ類2

▲各パーツに持ち手をつけて塗装をしているところ。数百個にも達するパーツ類で作業机が埋め尽くされてしまった。そのため小物入れの引き出しなど、机の周囲のあらゆる部分に持ち手を挿して一時的な置き場所に。今回のような怪物級キットの場合、塗装前は製作スペースの整理整頓が欠かせない

L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム

 月刊ホビージャパン2022年7月号に続き、再びF.S.S.特集ということでお声がけいただきました。通常はニューキットレビューを打診されることがほとんどなのですが、今回のような巻頭特集の場合、既発キットを月刊ホビージャパン誌面で製作する数少ないチャンスなので大喜びで参戦させていただきました。

 今回僕に課せられたお題キットは、L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム! 皆様もご存じのとおりIMSシリーズ中、最大の大型モデルで部品点数806。完成時のサイズは全高28.1cm・全幅26.5cm・全長78cmにもおよびます。商品価格とパッケージの大きさから物怖じしてしまうモデラーが多いというのも理解できる話です。しかし20世紀の最後に発表された設定資料集『ナイトフラグス』を見たあの日から、立体で見たい! もしくは自分の手で立体化したい! と思ったモデラーも数多く存在し、デザイン発表から約四半世紀を経た現在でも、その魔力は全く失われていません。実はワタクシ、このインフェルノ・ナパームを製作するのは、人生三度目でありまして(笑)、毎回製作が終了する度に「もう二度とコレを作ることはないだろうな……」と、しみじみ思いながら完成品を眺めたものですが、“二度あることは三度ある”とも言います。今回は「あの諺は本当のことなんだなぁ」と感じながらパッケージを開封することにしました。

 さて、久々の対面となったこのキット。そのランナーからのオーラは圧倒的で良い方向に造形本能を刺激してくれます。インストラクションを見ながら製作工程を確認していると、過去に二度も作ったというのに、構造的に全く記憶にない部分も多々ありました。単に僕が年を重ねた為に記憶力が低下しているのか?
 当時は無心に作り続けたために記憶していないのか? それは定かではありませんが、IMSモーターヘッド製作の通例として、フレーム部分からパーツを切り離していきます。L.E.D.ミラージュ本体は6回目の製作のため、さすがにサクサクとフレームを組むことができました。

 異なるのは巨大なフレームユニットを背負うための背部・腰部の接続部分、両肩に装備される小型ベイル周辺、右前腕のインフェルノ・ナパーム特有の外装部分です。ただでさえ膨大なパーツ数なので、不要な作業を省くため、選択パーツは事前に確認した上で製作していきましょう。股関節・ヒザ関節・足首関節は巨大な装備を支えるために、可動式と固定式の選択となっています。無謀にも若干のポージングを施した撮影もしたいと、これらの関節を交換できるように並行製作していたのですが、可動式関節ではどう頑張ってもこの重量を支えることができないと判断し、塗装直前に可動オミットを決断。ポージングを取らせたい場合は、その状態で関節の固定と、各サポート用支柱の長さを厳密に調整して製作することをオススメいたします。

 それとは反対に、以前製作した時に難儀した箇所は明確に覚えています。それはフレームタンクの周囲に取り付けるファンクションデバイスとそこから延びるマニホールドです。バイクのエキゾーストパイプを連想させるこのパーツは、複雑に曲がり各部に接続されているので、取り付け位置の確認と微調整を行いながら作業を進めてください。塗装後の微調整では、せっかくの塗装を傷つける恐れがあります。問題は塗装前にクリアしておきましょう。フレームタンクとフレームランチャーを繋ぐエネルギーチューブも接続位置の確認だけでなく、接続部の補強もしておくと、完成後の安定感が全く異なってきます。今回はφ2mmのアルミ線で補強。材質がアルミのため、真鍮と異なり軸を曲げての角度調整が可能になるのでオススメです。

 組み立て中、もう一点注意する箇所があります。左右の肩から伸びる副腕です。右側は副腕→小型ベイル→副腕→フレームランチャーの順に接続されるため、予想外のベクトルで荷重がかかります。この箇所も構造をよく理解した上で、塗装前に強固に接着できる部分は固定しておくとよいでしょう。左側の副腕は少々パターンが異なります。まずベイルを、a)小ベイルから延びる副腕先端に接続する。b)右前腕に接続する。c)本体には未接続にし単体・独立で展示する。の3つから選択する必要があります。オフィシャルの完成見本ではc)タイプとなっており、任意の位置にベイルを展示、左手を裏側から添えている感じにセッティングしています。今回はa)タイプの副腕に接続するパターンで製作してみました。理由は簡単。この方式で製作したことがないのと、フレームランチャー&ベイルの大型火器は副腕に取り付け、両腕がフリーになる状態で製作してみたかったためです。
 こうして組み立て工程が終われば、あとは塗装工程です。今回はIMS新作の1/144L.E.D.ミラージュも同時に製作し、本企画に合わせ同じレシピで塗っているので、塗装レシピや工程はそちらを参考にしてください。
 最後に余談ですが、我が家には初回特典付きインフェルノ・ナパームが、まだひとつ保管されています。果たして人生四度目の製作機会は訪れるのでしょうか……(笑)。

ボークス 1/100スケール プラスチックキット“INJECTION ASSEMBLY MORTAR HEADD SERIES”

L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム

製作・文/桜井信之

IMS 1/100 L.E.D.ミラージュV3 インフェルノ・ナパーム
●発売元/ボークス●24200円、発売中●1/100、約28.1cm●プラキット●原型/造形村F.S.S.プロジェクトチーム

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桜井信之

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