紫電改を超える幻の日本海軍戦闘機

　第二次大戦後期、川西航空機が「紫電」「紫電改」などの局地戦闘機とともに開発中だった甲戦闘機（敵戦闘機撃墜を主とする戦闘機）「陣風」は、20mm機銃6挺、13mm機銃2挺という重武装を持ち、2200馬力の強力なエンジンで最高速度685km/hを出す高いパフォーマンスが期待されていたが、モックアップが完成したところで戦局悪化により昭和19（1944）年7月に開発中止が決定された。第二次大戦の試作航空機・計画機をラインナップするガレージキットメーカー、ウシモデルから登場した1/72キットは、この幻のスーパーファイターの姿を現代に顕現させた！

■真の姿を現わした幻の戦闘機
　日本陸海軍の試作／計画機のキットを精力的に開発されているウシモデルより、1/72試製「陣風」が発売されました。実機は高度1万mで最高速度685km/hを出す高高度戦闘機「十八試甲戦」として、局地戦闘機「紫電改」などで有名な川西航空機で開発が進められました。しかし、搭載予定の誉エンジンの馬力強化型NK9-0の開発の見込みが立たず、戦局の悪化も加わり、昭和19年7月の第二次モックアップ審査後に開発中止となりました。
　「陣風」のキット化は知名度の低さもあってか、資料の乏しい時代に描かれた怪しげな三面図を基にしたレジンキットが数種類発売された程度でしたが、1993年に試製「陣風」の全容を伝える膨大なモックアップ写真が公開され、それから20年、ようやく引き締まった力強い姿の試製「陣風」を手にすることができました。
　ウシモデルのキット内容は、レジン製の胴体と主尾翼に、3Dプリント製のプロペラやカウリング、脚や機銃、キャノピーという構成です。また風防のマスキングシールも入っており、スタイリッシュな説明図やボックスも含めて、きわめて完成度の高いものとなっています。

■製作の注意点
　製作の注意点は、3Dプリント製部品のゲート処理をていねいに行うことと、収縮率の違いから胴体とカウリングに若干の段差が生じるのですり合わせが必要です。今回は損傷予防からアンテナ柱とピトー管は金属で作り替え、機銃は真鍮線を仕込んで強度を確保しました。そのまま組むとプロペラが突出してしまうので、モックアップ写真を参考に空冷ファンを若干奥に引っ込ませました。
　塗装は実機が完成していないのでお好みで構いません。個人的には実施（実戦）部隊そのままの塗装にすると嘘っぽさが加速してしまうと感じるので、評価テスト中の増加試作機のイメージで横須賀航空隊戦闘機隊といたしました。機番号と主脚の荷重表示以外はキットのデカールを使用、フィルムが薄くめくれやすいのが難点ですが、その分表面に馴染んでくれます。
　ウシモデルは1/48でも「陣風」と「閃電」の開発も進めているとのことですので、今後の展開が楽しみです。