【極鋼ノ装鬼 外伝】 第3話「ベンヤミンと三澤」【境界戦機】
2023.08.03境界戦機 極鋼ノ装鬼 SIDE STORIES 月刊ホビージャパン2023年9月号(7月25日発売)
紡がれる物語
その先にあるものは…
SUNRISE BEYOND×BANDAI SPIRITS のタッグで2023年8月の配信が決定した映像最新作『境界戦機 極鋼ノ装鬼』。本編公開に先んじて、公式外伝『境界戦機 極鋼ノ装鬼 SIDE STORIES 』が「月刊ホビージャパン」本誌にて展開中だ。
南海に浮かぶ孤島を舞台とした本編に対して、本作はそこにリンクしたストーリーがいくつかの視点で描かれる。篠塚智子氏が手掛けるシナリオに本編スタッフが参加することで描かれる新たな物語。ビャクチをベースとした次世代機開発計画は最終段階に突入。その前夜、ふたりの男が語り合う…。
STAFF
企画
SUNRISE BEYOND
シナリオ
篠塚智子
キャラクターデザイン
大貫健一
メカニックデザイン
海老川兼武
協力
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン
ホビージャパン
境界戦機 極鋼ノ装鬼
公式サイト https://www.kyoukai-senki.net/kyokko-no-souki
公式 Twitter @kyoukai_senki
BANDAI SPIRITS 「境界戦機」プラモデル公式サイト https://bandai-hobby.net/site/kyoukai-senki/
第3話「ベンヤミンと三澤」
「点検の結果、ジョーハウンドの機体本体には何の問題もなかったわ」
模擬戦の翌朝、工場の一角に集められて報告を聞いた技術スタッフ達の大半は安堵の表情を浮かべたが、中には怪訝な表情をする者もいた。ビャクチ検証機ver.3の前で土がついた格好になったとはいえ、ジョーハウンドは外的衝撃は何も受けていない。それなのに何故突如停止してしまったのか、さんざん議論になっていたのだ。
「論理的にはAIの──ミャアの通信経路が急にショートするはずがない。引き続き調査はするけど、おそらく偶発的な、バグのような症状だと思う。ビャクチに関しては、テストパイロットの三澤から幾つか改善のアイディアを貰ったので当面はそれを担当者と協議……。で、いいわね。シャーリー?」
腕組して静観していたシャーリーは頷くと、ビャクチの仕上げに関わるスタッフ数名の名を呼びあげた。
「他の奴らは一旦手を止めていい。招集がかかるまで休んでいろ」
突如訪れた休息の一報に、人々はどよめいた。
三澤は賑わう彼らを横目に見ながら、いつもは入り口付近の定位置にいるベンヤミンの姿がないことが気にかかった。
辺り一面、真っ暗な闇で覆われている。目を凝らすと棘のある見知らぬ植物が生い茂っており、触れてもないのに全身がヒリヒリと痛む。違和感を覚えて足下を見ると、重力に逆らうように泥土がせり上ってきている。このままだと飲み込まれると直感し、咄嗟に叫ぼうとするが声が出ない。近くに掴まるものは何もなく逃げ場もなく、棒立ちのまま半身が土に埋もれてゆく……。
「助けて!」
声を発したと同時にベンヤミンは悪夢から目覚めた。
小さな窓から薄く西日を感じながら、彼はベッドに伸びる自分の両足をさすって確かめた。
あの時、一歩も動けなかった。
三澤との模擬戦を前に、事前に地形の特徴を調べ、重点的に接近戦のラーニングをし、ぬかりはないはずだった。しかし、追い込んだと思った三澤の反撃を全く予測出来なかった。投げられたマチェットを掴んで相手の武器を封じれば──そう思ったがしかし、ミャアには通じなかった。否、ミャアは武器を避けるべきだと判断していたのだ。実行しようとしていたことと相反する指示がきたミャアは混乱した。ルビーは『バグ』だと説明したが、ベンヤミンはもっと根本的な理由が潜んでいるような気がした。
ベッドサイドのPCを見遣ると、モンドとメェのライトが明滅している。餌やりの時間はとっくに過ぎていた。
「ミャアは? いらないのか?」
声を掛けるとミャアも自分の存在を灯した。しかし音声での返答はない。
実際、少し前から彼らに異変があることにベンヤミンは気づいていた。とりわけ矛盾を含むような複雑なデータを読み込ませると、復唱する際に逡巡する様子が見受けられたのだ。それはこれまでになかったことで、もしかすると人間的な『心』のようなものが生まれ出る兆候かもしれなかった。そしていざ、自分の命令が受け入れられない事態に直面したミャアは心を閉じた。もしかしてミャアは自分に不信感を抱いている……? ベンヤミンは育ててきたAIのことが急に遠い存在のように思え、心許なくなった。
フィリッポはなんだかんだと理由をつけて、ほぼ毎日ベンヤミンの部屋にやって来た。三澤がミャアを搭載したビャクチで全ての演習をクリアしたこと。ルビーの先導で頭部に新たな高感度センサーが取り付けられること。工場のスタッフはバカンスに出たり里帰りしたりしているが、自分はシャーリーに雑用を頼まれて休暇を取れないでいること……。愚痴混じりに工場の様子を報告しながら、コーヒーブレイクをするのが常だった。
「……それじゃ、三澤も当分休みかな」
「三澤? あぁ。テストパイロットの役目は終わったけど、機体の完成までは居てくれるって話だ」
やはりベンヤミンは模擬戦のことを気にしているのかとフィリッポは思った。
「言っとくが、あんなのは失敗でもなんでもない。シャーリーだって気にしてないぜ」
「うん……」
一間あって、ベンヤミンは少し前から考えていたことを口にした。
「当面、三匹のAIの世話をしてほしい」──突然そう言われたフィリッポは愕然としたが、必要なことがあればなんでも頼めと話していた手前、詳細を聞かざるを得なかった。
鬱々とした気持ちが晴れないベンヤミンは、思い切って日々のルーチンである餌やりをフィリッポに任せ、ごく単純な計算やプログラミング作業を繰り返して心の安定を図ることにした。眠る間際に社交数の組み合わせなどを計算し続けていると、ようやく安眠出来るようになった。そもそもこの世界はとてもシンプルなのだ。子供の頃と同じように十個の数字と戯れていると、あっという間に日は暮れた。
部屋がノックされて、ベンヤミンはまたフィリッポが来たのかと思った。
しかし、声の主は予想外の人物だった。
「三澤だ」
ベンヤミンは思わず上ずった声が出た。
「どうして……」
尋ねると、三澤はトレーニングに付き合えと言ってきた。
肌着の上にシャツを被ってドアを開けると、廊下に立っていた三澤がくるりと踵を返して歩き始めた。
分厚い雲の浮かぶ夕闇の下を、三澤は黙って歩いていた。ベンヤミンはその後を追って歩きながら、もしかしたらこれから説教されるかもしれない……そんなイメージが不意に脳裏に浮かんできた。模擬戦の直後、指揮官車の中で動けなくなっていたベンヤミンの元に三澤が歩み寄ってきた際、ベンヤミンは差し出された手を拒否してしまったのだ。
施設を出ると森の方へと進んだ。一歩踏み入るたびに軋む小枝や枯葉の音が、気まずい沈黙の空気に響き渡る。
しばらく三澤の後をついて森の奥に行くと、そこにはビャクチが佇んでいた。
「ビャクチに乗ってみろ。ベンヤミン」
「え? 僕が……?」
「コクピットに入ったことないんだろう?」
そのとおりだった。搭載するAIのユニット自体には何度も触れて確認しているが、あくまで部品の強度や接続の調整をするためで、ビャクチの操縦席に足を踏み入れることはなかった。
ベンヤミンは三澤の手引きで恐る恐るコクピットに入った。ミャアはいなくても簡易自動操縦は出来る仕様になっている。シートに腰かけると、機械的な起動音と共に周囲が明るくなった。
「いいか。目を閉じずに前を向いていればいい。お前のデータは既にインプット済みだ」
インカムから聞こえる三澤の声に耳を澄ませる。
操縦席を立体的に囲む周囲のVR空間に無数のデータが走りベンヤミンの全身がスキャンされると、手元に黒いグリップが現れた。
「これ……触っていい?」
「ああ。それを使って機体を操作出来る」
そうしてベンヤミンはゆっくりとグリップを握りしめる。
途端に視界の解像度が上がり、文字通り五感が研ぎ澄まされるように感じた。
「持ったまま右に意識を向けてみろ」
三澤の声のままに意識を集中させてグリップを動かすと、ビャクチが右を向いた。
大きな機体だがコクピットはしっかり守られているようで、ごく僅かな振動しか感じなかった。
「上出来だ。次は屈んでみようか」
他にも、振り返ったり後退したり、ぎこちないながらにビャクチを動かすうちに、ベンヤミンは次第にコツを掴んでいった。
「まるで自分の体のように動かせるだろう」
「うん……」
「だいぶスムーズだがそれでもタイムラグはある。パイロットは様々な訓練を重ねてそのラグを少なくし、自分の手足のように機体を動かすが……──」
三澤は、ゆっくりと両腕の可動域を確かめるビャクチをじっと見上げている。
「ここにAIが介在すると、全然違ってくるんだ」
「……!」
「自律思考型AIを搭載すると、自分が右手を動かしたいと思い浮かべた時点でもう腕が上がっているはずだ。そして、右ではなく左が最良だと判断すればそう伝えてくる。それも人間よりもずっと冷静なタイミングで」
認識としてはわかっていたつもりだったが、実際に動かしてみてここまで繊細に意識が伝動するのだということにベンヤミンは驚いた。自律思考型AIがいれば更に精緻になるという……。
「どれだけ腕のあるパイロットでもAMAIMと一体とならないと十全な操縦は出来ない。AIはその連動を繋ぐ糊のような役目を果たす。そしてどちらが使役するでもなく共存するには、何が重要だと思う?」
一呼吸おいて、三澤は呟いた。
「信頼だ」
「……!」
「俺は、機体の能力を信じるのと同じように、AIのことも信じたい」
言い切る三澤の声は、それに足るものを作ってくれ、という懇願が込められているようだった。
ベンヤミンの冷えていた胸の奥が、メラメラと燃え上がるのを感じた。少なくとも三澤は、自分にまだ期待しているのだ。
「三澤。ジャンプするにはどうすればいい?」
「……ジャンプ?」
「模擬戦の時、跳躍したろ? あれをやってみたい」
三澤が方法を教えて、ベンヤミンはビャクチを跳躍させたが、重心の移動に失敗して尻餅をついてしまった。悔しがるベンヤミンは、まだまだ……! と食い下がって何度も挑戦する。
気づいたら真夜中になっていた。
地上は風が冷たい。ビャクチから降りたベンヤミンは、コクピットがいかに快適な環境下にあるかを思い知りながら、立ちっぱなしでいた三澤の横顔を見た。三澤は平然とした顔で、腹が減ったなぁと苦笑した。
寝静まった宿泊所が見えてきた。食堂の明かりはとっくに消えている。
「仕方ない。売店でパンでも買うか」
「僕の部屋に食べ物があるぞ」
粉末化された栄養素と水を攪拌するスムージーを常食にしていると告げると、三澤は微妙な顔になった。
「なんだか味気ないな」
「よっぽど効率的だよ」
「ふーむ……」
怪訝そうな三澤が工場敷地に差し掛かった瞬間、「誰だ!」という声と共に、強烈な懐中電灯のライトがふたりを照らした。声の主はランニングを終えて部屋に戻ろうとするシャーリーだった。
「なんだお前ら。こんな時間に何してた!」
ベンヤミンと三澤は思わず顔を見合わせる。
工場と宿泊施設を繋ぐ道の脇、緩い丘のような草っ原で、焚き火をしながらシャーリーが鹿の串焼きを炙った。シャーリーの趣味は狩猟で、時間のある時は工場近くの山々に出向いて熊や鹿を撃つのだという。解体した肉を香辛料と共に保存し、酒と共にちびりちびり食らうのが彼女の密かな楽しみだった。
「今朝仕留めた捌きたてを食えるなんて、運のいいヤツらだよ」
自慢気に喋るシャーリーだが、ベンヤミンも三澤も受け答えず、無言で肉に食らいついていた。
空腹の中で噛みちぎる鹿肉はジューシーで、ただ焼いただけとは思えないくらいに旨味が凝縮していた。
「美味いな」
「うん」
焚き火の煙が白く上ってゆく。空には星が出ていて、シャーリーが星の固まりを指してこの時期に見える星座の特徴を教えてくれた。へぇ……などと聞きながら、ベンヤミンは自分が星座の名前をひとつも知らないことに気がついた。いつも何かを調べたい時はミャアに聞いていたのだ。そんな心のうちを見透かしたように、シャーリーがミャアのことを尋ねてきた。
「AI達をフィリッポに預けたんだろ?」
「ああ。簡単なラーニングだけだから。僕じゃなくても大丈夫なはずだ」
「ふん。ああ見えてフィリッポは勝手をやらかすぞ?」
「そうなの?」
「ああ。いつだったか、ヤツは散らかった工場内を一斉に片付けると息巻いて、私の大事な葉巻コレクションを処分しちまった。西インド諸島から取り寄せた高価なのも入ってたというのに……」
昨日のことのように思い出して口惜しそうに歯軋りするシャーリー。
「しかし、彼のおかげでこの工場の秩序は保たれている……と、ルビーが言っていたが……」
シャーリーに睨まれて三澤は口籠った。
ふんっと口を歪ませて、シャーリーは吐き捨てるように言う。
「なんにせよちゃんと様子は見ておけ。お前の大事な相棒だろう?」
「明日にでも迎えに行くよ」
夜空を見上げるベンヤミンの瞳に、美しい星明りが映り込んで輝いた。
「おはようベンヤミン」
久しぶりに再会したベンヤミンを感知するとミャアは明るく挨拶した。
ベンヤミンはたじろいだ。これまでデバイスのミャアから話しかけてきたことはなかったからだ。
「なんで私を放っていたの!? フィリッポはね、餌やり以外何もしてくれないよ?」
「だから出来ないものは出来ない。俺は機械関係はさっぱりだと言ったろ!?」
闊達にフィリッポと会話するミャアに驚かされたのも束の間。
フィリッポと共に部屋にいたルビーが、「歌ってみせて」と言うとシンプルなメロディーを諳んじだしたのだ。それも、モンドとミャアも一緒にだ。
「すごいよね。ハモってるの!」
「フィリッポ……! 一体君はミャア達に何をしたんだ!?」
唖然となったベンヤミンが尋ねるが、フィリッポはキョトンと頭を掻くばかり。
「昨日からかな、餌をやろうと思ったタイミングで急に話しかけてきたんだ。俺もびっくりしたよ……」
「あ、もしかして、あなたが一日中音楽を流してるからじゃない?」
どうやらフィリッポは、部屋でだらだらと地元のカンツォーネを聴くのが趣味らしい。
わからない。自律思考型AIがどうやって完成するのかは謎なのだ。しかし今、自分達の目の前で歌ったり、互いに会話したりするAIがいる事実だけでベンヤミンは胸が高鳴った。間違いなく彼らは進化している。
そうして再びベンヤミンは開発に復帰し、スタッフ達と共に目まぐるしい検証の日々が始まった。
ビャクチに乗るのは三澤と、三匹のAI達だ。面白いのはメェはミャアよりも戦闘好きな側面があったり、モンドはうんと理論的だったりと、それぞれの潜在的個性が予想以上に強かったということだ。
「改めて思ったんだけどね……」
ルビーはモンドと呼吸を合わせる三澤の様子を管制室で眺めつつ呟いた。
「模擬戦でショートした時って、あれ、もしかしたら自律思考型になる為の転換点だったんじゃない?」
ベンヤミンはハッとした。確かにこれまでに種まきした様々なデータが、時間差で変化を促した可能性はある。ミャアが急停止したのは、幼虫が羽化する際に蛹化するような、たまたまそういうタイミングだったかもしれない……。
「だとしたら、やっぱりあなたが足掻いてきたことが全て繋がってるんだわ」
そうルビーに微笑まれて、ベンヤミンはくすぐったいような気持ちになった。
三澤はAIに対しても実にフラットな人間で、それぞれとの距離感や指示の仕方・され方も難なく会得した。三通りのラーニングとトレーニングを掛け合わせるのは物理的にも簡単ではなかったが、一切の弱音を漏らすことなくやりきった。トレーニングが終わると、ベンヤミンの企みで三匹は別々のデバイスに分かれ、フィリッポ、ルビー、三澤に割り振って時を過ごした。
「ずっとペットのようなつもりで……自分が保護しないと、と思って扱ってきた。でも、ひとたび手を離してみたら格段に成長したんだ。理屈はわからないけど、未知数の、いろんなやり方を試すべきだと思う」
ルビーは、ベンヤミンの心の内にも変化があったのだと感じ、心強く思った。
「協力するわ。ミャア達とやりとりしてると、なんだか自分が母親になったみたいな、悪くない気分になるの」
やがて、ついに頭部が完成したAMAIMは、ビャクチEX(エグザミネーション)と名付けられた。
「左25、敵機、旋回して急接近!」
演習用ドローンが遠くから迫ってくる様子を見極めると、素早くライフルをパージ。ハンドガンを構えたビャクチEXが迎え撃つ。ダンダンッ! 二発の重低音と共に近接したドローンを撃ち落とした。
「まだ次が来るよ。三澤」
「わかってるよモンド」
休む間もなく、今度は右前方から複数機が迫ってくる。背中のウェポンラックからグレネードランチャーを取り出したビャクチは、左右に分かれたドローンを続けざまに撃破した。
「やった!」
指揮官車のモニターから見守っていたベンヤミンは思わずガッツポーズする。
「今の見た!?」
後ろを振り返ってボスの顔を確認すると、シャーリーはふんっと微笑んだ。
「ったく……調子に乗りおって」
その数日後、シャーリーの元に一本の電話が入った。
とある地中海のレジスタンス組織からで、中長期の局地戦に耐えられる機体とパイロットを探しているとのことだった。
シャーリーが三澤を呼び、行く気があれば推薦すると告げた。
「ビャクチを連れて行っていいか」
「望むところだ」
三澤はふっと引き締まった表情になる。再び戦争の地へ向かうのだ。
その恐ろしい日々を想像しきれぬベンヤミンは、ビャクチの実戦投入を知ると素直に喜び、三澤を激励した。
ビャクチの完成後も研究を続けたいと、工場に残ることを決めた直後だった。
「三澤が一番やりやすいAIを連れて行ったらいい。本物の戦闘が一番彼らを成長させるし、学んだことを他のAIにも反映出来るはずだ」
「ああ、そうだな」
「体に気をつけて! 何かあったら連絡してくれ」
「そっちも元気でいろよ」
興奮するベンヤミンは華奢な手を差し出し、三澤はそれをしっかりと握りしめた。
(つづく)
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