小池徹弥がARTPLAでつくる大自然 後編

　これまでPVCやレジンキットを主戦場としていた海洋堂が、近年精力的に取り組んでいるインジェクションプラスチックキットシリーズ「ARTPLA」。ラインナップもユニークで、ロボットや仏像、アニメキャラクターらバラエティ豊かな面々と肩を並べて、第1弾から「動物」シリーズが多数展開されているのがじつに海洋堂らしい。1/35スケールの動物たちは非常に精密かつリアルで、食玩やカプセルトイなどで培ってきた同社の造形センスがいかんなく発揮されている。今回は動物好きベテランモデラー・小池徹弥が、個々の動物の生態をヴィネット形式でスクラッチビルド。シチュエーションの異なる6つの小劇場を前後編に分けてお届けする。ぜひお楽しみいただきたい。

　前編はコチラ！

---

ステラーカイギュウ

　やはり、スノードームもないと私らしくないなと思い、ARTPLAシリーズではないのですが、22年発売の海洋堂のカプセルトイ「わけあって絶滅しました。」シリーズよりステラーカイギュウをチョイス。チョイスの「わけ」は、手頃な水中の生物だったから（笑）。いつも通りの製作ですが、スノードームを作る際の基本は、必ず耐水の素材を使用すること、特に地面ですね。頭に乗っかっている海鳥はもともと造形されていますが、一度切り落として金属線で足を作り直すなど調整しています。

アルダブラゾウガメ

　セーシェル諸島（アルダブラ環礁）に分布するゾウガメは生息地域によって個体差があるようです。ヴィネット上で、ふたつの異なる生息地のカメを表現してみました。ベースの下側にいるのは諸島西側、ピカール島の森の個体。ここで暮らすゾウガメは、片足を上げて木の葉を食していたりします。ベースの上の面は環礁の東側（グランドテレ島）の風景。日差しを遮る木々が少ない地域のため、ゾウガメたちは日中は洞窟に集まって暑さをしのいでいるようです。大きさも甲長60cmとやや小型なので、作例ではARTPLAのツチガメを複数使用し、塗装で1/80程度のスケールのアルダブラゾウガメに見立てています。製品のツチガメは手足を引っ込めた造形なので、1頭だけエポパテで頭と手足を付け足しました。枝木は本物の枝を使用。ゾウガメが食んでいる葉っぱはプリザーブドフラワー製です。

イボイノシシ

　イボイノシシのディオラマを作る機会があったら必ず作ろうと思っていたのが、この水辺のシーン、泥浴びです。沼田場（ぬたば）でのたうち回って体表の寄生虫を落とすこの行動、ヌーやシマウマ、ゾウなど多くの陸上動物に共通する仕草のようですが、イボイノシシで表現するとユーモラスなポーズになっていいですね。粘土で作った泥場にエポキシ接着剤を垂らして、濡れた泥のネチョネチョ感を表現しています。

ⒸKAIYODO