製作時間は通常の倍!? 小隊長機「1/144 ダイン」のフォルム&可動を徹底改修!【機甲戦記ドラグナー】
2023.06.21サンライズ・メカニック列伝 第53回 FMA-04A ダイン【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2023年7月号(5月25日発売)
FMA-04A ダイン(『機甲戦記ドラグナー』より)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『機甲戦記ドラグナー』から、統一帝国ギガノスの戦闘型メタルアーマー(MA)「FMA-04Aダイン」の1/144作例をお送りしよう!
ダインは主に小隊指揮官が搭乗する量産型MA。ギガノス軍戦闘型MAの原型と言える機体であり、その攻撃力は地球連合軍戦闘ポッドの3倍。地上用に改修された04B型、月面戦略防衛軍に配備された最新の04C型など、多くの派生機も存在し、ギルトール総統直属のSP隊や親衛隊でも使用される。劇中では第1話で初陣のドラグナー1型と対決し、見事な「斬られ役」を演じたことで当時の視聴者に強い印象を残している。
「機甲戦記ドラグナー セット1」として2022年4月に再販されたキットの作例は、田仲正樹が私物を4セット投入して製作。「小隊長機らしく、ゲバイやドラウよりも強そうにする」ことをテーマにフォルムを全面的に変更し、可動部も刷新。通常の倍以上の製作時間を費やした徹底作例をご覧いただこう。
製作途中状態
一見まとまりがよく感じられる1/144ダインだが、頭身が低くやや力強さに欠ける印象。秀作が多い『ドラグナー』プラキットシリーズではかなり手強い部類のキットと言えるだろう。作例は田仲氏が普段の本コーナー作例の倍以上の手間と時間をかけ、キットを徹底改修したもの。スネの前面以外の各ブロックのボリューム変更と可動機構の刷新により、完全な別物へと変化させている。製作途中画像からはその膨大な工作量とともに、キットへの敬意を忘れず、腰部やつま先などのパーツ形状は最大限に活かした氏の製作スタイルも読み取ることができるだろう。
頭部
首を切り離したのち、接着面をくさび形に削って前面が細くなるように形状変更。外装を削り込んだEG νガンダムの頭部を内蔵させてヘルメット部を後ハメ化した。フェイス部はMGガンダムVer.2.0の顔にキットのダクトと市販のパイプパーツ、スプリングを接着したものに交換。右カメラアイには市販のレンズ状パーツをはめ込んだ。首はEGνのものにキットの首を被せている。
脚部
太モモはプラ板でくさび形に幅増ししたのち、側面にエポパテを盛りボリュームアップ。上部にはHGザク(ORIGIN版)の股関節部を移植。ヒザ関節はHGガンダム(No.191)のものに交換し、後ハメ化しつつ可動範囲を拡大。スネはプラ板を貼り足して上下に延長。後面のムーバブル・フレームのディテールはプラ板で作り直した。つま先は接着面で0.8mm幅を詰め、裏にディテールを追加。かかとのパイプはスプリングで再現した。足首関節はHG(FC)シャイニングガンダムのものを移植して接地性能を向上させている。
武器
ハンドレールガンSSX-5型は2セット分を貼り合わせて厚みを増し、前後に7mm強延長して大型化。銃口は真鍮パイプでシャープ化し、グリップはHGガイアガンダムのビームライフルのものに交換した。レールキャノンはBB弾発射機構をオミットし、砲身を同径のプラパイプに交換。肩越しに構えやすくするため、HGガンダム(No.191)のバズーカグリップ可動部を移植した。レーザーソードは付属していないため、HG(CE)エールストライクガンダムのビームサーベルで再現。なお、背中に手を回してソードを取り出す第33話の描写を参考に、作例オリジナルのラックを自作し、腰の後部にネオジム磁石で装着できるようにしている。
胴体
キットの胸部を上下左右にプラ板で大型化し、これをEG νの胴体に着せることで、首と腹部の可動範囲を拡大。ポーズに合わせた頭部の前後位置調整や腹部のひねりを可能としている。側面のコックピットハッチは市販のリベットパーツを組み合わせてシャープ化。肩関節はレールガンを両手で構えられるようにボールジョイント化した。腹部のパイプはスプリングと市販のパイプパーツを組み合わせたものに交換。腰部はHGジムのリアアーマー、HGザク(ORIGIN版)の股関節、EG νのボールジョイントを組み合わせてフレームを製作し、これにプラ板とエポパテで大型化した前面のブロックと各装甲を取り付けている。背中の2連ノズルはより小型でモールドがシャープなものに交換。左右の推進器はプラパイプで延長して大型化し、後部に市販のノズルを埋めこんだ。本体とはHIPS樹脂製ボールジョイントで接続し、将来的にはM.A.F.F.U(メタルアーマー・フィックスド・フォルグ・ユニット)や地上用の武装と交換できるようにしている。「今後、ドルチェノフ機はもちろん、SP隊機や地上用の作例も登場させますので、気長にお待ちください」とのこと。
腕部
右肩装甲は1/144旧型ザクのものを加工し大型化。左肩のシールドはキットのパーツを2セット分組み合わせて上下に15mm延長。裏には作例オリジナルで小型のレーザーソードを取り付けた。肩ブロックには市販のHIPS樹脂製ボールジョイントで接続させている。肩ブロックと上腕はHGゲルググMのものに、ヒジ関節はHGガンダム(No.191)のものにそれぞれ交換。前腕は前後と上下に分割し、積層プラ板を挟み込んでボリュームと形状を変更。手首関節はボールジョイント化し、拳はHGジム改などに付属するハンドを加工したものに交換。今回は設定画の丸指ではなく、本編でたびたび描かれている角指とした。
■悪そうだけど持ってないバズソー
フロッピーディスクを64年後まで使い続けようと思っているサンライズメカファンのみなさんは、月刊ホビージャパン1987年2月号で「ダインは『レイズナー』の凶悪キャラクター、ゴステロに似ている」と指摘されていたのを覚えているはず。どちらも1985年日本公開の映画『ターミネーター』後半のT-800を彷彿させるカメラが特徴で、いかにも悪そうです。『ドラグナー』では序盤で一挙に5種類の敵MAが登場しますが、「ダインはゲバイよりも悪そうで強そう、でも正々堂々とした戦いをしそうなファルゲンよりは明らかに弱そう」「ドラウは旧式だろう」「ゲルフはなんか偉ぶっていそう」というように各機の性格や特徴、序列がひと目で伝わってくるので、「単に形の違うロボットがたくさんいるだけ」といった、散らかった印象にはなっていません。形にすることが難しい「悪そう」や「強そう」のレベルを明確に可視化させてしまうのが、大河原邦男先生の凄いところだと思います。
さてダインのキットですが、機嫌のいい日に素組みを眺めていると「それなりにまとまりもあるし、これはこれでまあいいかな」という気もしてくるのですが、相対的に頭部が大きく頭身が低いためどこか可愛らしく、「ゲバイやドラウよりも明らかに強そうで悪そう」な感じが足りないように思えます。そこで作例は、胸部、肩装甲、肩、上腕、前腕、腰、太モモをボリュームアップ。HGガンプラの可動部でつないで頭身を上げています。
そして8年の月日が流れました(急な展開だな)。とりあえず形になっていたものを改めて見直してみると、まだ弱々しい雰囲気があったため、いったん壊して全身のバランスを再構成。可動部はHGガンダム(No.191)、HG(FC)シャイニングガンダム、EG νガンダムのものに交換しました。肩関節はMA作例の定番である「ハンドレールガンの両手持ち」をさせるためにボールジョイント化しています。最終的には「第45話あたりのイメージに引っ張られて、スマートにし過ぎたかもしれないな…」とも感じるので、ドルチェノフ搭乗機の作例はもっとガッシリとさせて、より「強そう」な体型にしたいと思っています。
■ちょっと偉い戦闘員は赤い
バンダイ刊「METAL ARMOR DRAGONARモデル&デザイン集」に掲載のカラー画稿、キットの組立説明書、本編映像を参考に塗装。ドルチェノフ機の黄色やSP隊機のベージュも魅力的ですが、今回はお馴染みのこの色です。
本体赤=ハーマンレッドにシャインレッド、ピンク、クールホワイトを各少量、純色バイオレット微量
腕など=自作の赤紫系グレー
武器は自作の緑系グレー。カメラ・アイは左がGXメタルグリーンにクリアーグリーンを上吹き、右がクリアーブルー+クリアーレッド少量。背中のノズルは焼鉄色+シルバー。Gマークの黄色はビビッドオレンジ。スミ入れ後にツヤ消しと半光沢を混ぜたクリアーで塗膜をコートし、各センサー部に透明パーツとアルミ蒸着シールを貼って終了です。
次回も第1話から登場する敵側メカの作例でお会いしましょう。
BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット 1/144 機甲戦記ドラグナーセット1 使用
FMA-04A ダイン
製作・文/田仲正樹
ⓒ創通・サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
一応、月刊ホビージャパンガンダム班に所属しているはずのモデラー。「宇宙船」誌の映像倶楽部にも所属している。