ロシアが誇る多用途戦闘機「Su-35S フランカー」ってどんな飛行機?【いまさら聞けないすごいヤツ!!】
2023.04.18ロシア空軍 多用途戦闘機
Su-35S フランカー
イラスト/大森記詩
「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのも恥ずかしいなぁ…」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、ハセガワから2023年3月末に再販された超傑作キット「1/72 Su-35S フランカー」に合わせて、ロシアが誇るこの戦闘機にフォーカスしてみましょう。ツルのような美しいシルエットが多くのモデラーを惹きつけています。Su-35Sとはどのような飛行機なのか? 早速見ていきましょう。
Su-35S フランカー
全長/21.9m
全高/5.9m 全幅/15.3m
エンジン/AL-41F1S(117S)推力偏向ノズル付きターボファン×2
最高速度/マッハ2.25
航続距離/3600km
武装/30mm機関砲×1
今、もっとも注目されるロシア製戦闘機
解説/宮永忠将
旧ソ連が生み出した美しき戦闘機
独断と偏見、しかし支持者も多いと確信するけれど、旧ソ連が生み出したSu-27「フランカー」は、人類史上もっとも美しく、セクシーな戦闘機であると断言したい。登場した1980年代前半にはMiG-29「フルクラム」のほうが脅威視されていた感覚だけど、双発大型機という設計の余裕が、その後の発展余地を残し、現代にも命脈を繋いでいる。今回紹介のSu-35はこのSu-27の発展系なのだけど、同じ名前の機体が2種類あるのでちょっと説明から。
初代との違い
最初のSu-35は、旧ソ連時代の1980年代後半に開発されたSu-27の輸出バージョンだ。初飛行の成功直後にソ連が崩壊したこともあり、販売、運用実績がゼロで終わった不運の機体で、これを一般に「初代」とも呼ぶ。
そして今回紹介するSu-35は、2008年に初飛行したロシア政権下の新型機のほうだ。1990年代末期、ロシアのスホーイ社ではアメリカが実用化させた第5世代戦闘機=ステルス戦闘機に対抗すべく、PAKFAなる名称で第5世代戦闘機の開発に着手した。しかし実用化までには長い時間がかかるため、旧式化しつつあるSu-27とのギャップを埋めるつなぎの戦闘機を用意した。それがSu-35である。
初代の初飛行から約20年後の2007年にその開発が公表され。翌年に初飛行を成功させた新生Su-35。その開発コンセプトはSu-27の最新バージョンをベースとする機体にPAKFAの技術を先行搭載するというものだ。Su-27には多くの派生型があり、技術蓄積の量も凄い。巡航速度での音速突破──スーパークルーズ能力も獲得している。その上で、余裕のある機体に、近未来の完成予定の分も含めて、最新電子機器を詰め込みまくろうということ。
ロシア空軍関係者はこのSu-35を「第4世代++」戦闘機と呼んでいる。ステルス性能を大前提として開発されたのが「第5世代」機なので、第4世代機のSu-27フランカーを踏み台に、第5世代機にかなり近づいた機体という含意。「ステルス性以外はもう第5世代機なんだぜ!」っていう主張が「++」にはっきりとあらわれている。
Su-35Sの将来
Su-35はロシア空軍にも採用されて、量産型がSu-35Sの名前ですでに運用されている。こうした実績もあり、量産型のSu-35Sについては当初から海外セールスも順調であった。特に中国は現時点で24機購入していることが公にされている。
しかしSu-35Sの将来はかなり危ういのが実情だ。2014年のクリミア侵攻によってロシアは西側諸国から経済制裁を受けた。これによりロシアは戦闘機用の核心部材の入手が困難になり、量産にブレーキがかかっている。さらに2022年2月のウクライナ軍事侵攻以来、ロシア兵器への評価は低下する一方であり、戦争に伴う国際環境の変化もあって、Su-35Sの導入国はなくなりそうだ。むしろSu-35Sをベースに、中国が性能向上型を開発し、ロシアの市場を奪ってしまうなんていう可能性もある。そんな視点からも、Su-35Sはもっとも注目されるロシア製戦闘機なのだ。
美しいアウトラインに精密なディテール! 武装もてんこ盛り!!
今回「Su-35S」をお届けしたきっかけが、本キットの再販です。パーツを見るだけでも楽しい超傑作キット。これまで月刊ホビージャパンでもこのキットを使用した作例が多数掲載されました。
優美な姿に、機体表面の美しいディテール。そして超豊富な武装と非の打ち所がないプラモ。絶対に組んでほしいので、この機会にぜひゲットしてください。
1/72 Su-35S フランカー
●発売元/ハセガワ●3960円、発売中●1/72、約30.6cm●プラキット