『機神幻想ルーンマスカー』誕生秘話!誕生のきっかけとなった“海洋堂”主催のイベントとは!?
2023.11.24 『機神幻想ルーンマスカー』の連載が富士見書房の月刊ドラゴンマガジンの誌上にてスタートしたのは、1988年。それから遡ること約1年前の1987年7月、当時、渋谷の円山町にあった海洋堂の直売店舗「海洋堂ギャラリー」にて、あるイベントが開催された。
「Masquerade -出渕裕の世界-」と名付けられたそのイベントは、アニメや特撮に登場するメカやキャラクターのデザイナーとして注目を集め、イラストレーターとしても活躍することで大きな注目を集めていたクリエイター出渕裕の初の個展的な展覧会であった。
1980年代中盤頃、出渕は『聖戦士ダンバイン』に登場するオーラバトラーのデザインをよりリアリティのある解釈でイラスト化する「オーラファンタズム」を連載し、『機甲界ガリアン』のアナザーストーリーとして制作されたOVA『機甲界ガリアン 鉄の紋章』に登場する鉄巨人や邪神兵をはじめとする機甲兵のデザインを担当。その生物的なデザインは、当時隆盛を極めていたガレージキットの原型師たちに大きな影響を与えていた。
その一方で、出渕はアニメに留まらず、特撮番組のデザインにも進出。東映が送る戦隊シリーズの『科学戦隊ダイナマン』、『超電子バイオマン』、『電撃戦隊チェンジマン』、『超新星フラッシュマン』で敵キャラクターのデザインを担当していた。こちらも独創性のある表現力が大きな話題となり、子ども向け番組にハイティーンのファンを取り込むきっかけを作った。
当時の海洋堂もそうした出渕のデザインやイラスト表現に注目し、自社で展開するガレージキットで出渕デザインのメカやキャラクターを次々と立体化。有機的なディテールを取り入れ、大胆なポージングで造型されたオーラバトラーや機甲兵のキットをリリースし、ガレージキット業界において大きな影響を与える存在であった。
こうした繋がりを経て、出渕のデザイナーとしての活動開始から10周年を迎える直前のタイミングと、海洋堂ギャラリー初の本格的な展示イベントとして、それまで手掛けたデザイン画やイラスト画といった出渕の自身が手掛けた作品と、ガレージキットや撮影に使われたプロップなどの立体物を同時に展示するという構成で、出渕の個展である「Masquerade」が開催される運びとなった。
イベントでは、出渕がデザインを描き下ろし、出渕の盟友である特撮の撮影用着ぐるみなどを制作する特殊技術造形家の品田冬樹が手掛けた、大型の造形物なども展示されていた。
Ⓒ出渕裕/徳間書店