あきまん氏に直接取材!『ゴッズオーダー』という新たなる美少女プラモへの想い
2022.10.02イラストレーター・あきまんインタビュー 新たなライフワーク『ゴッズオーダー』で挑むプラキットの世界 月刊ホビージャパン2022年11月号(9月24日発売)
新たなライフワーク
『ゴッズオーダー』で挑むプラキットの世界
イラストレーター・あきまんインタビュー
『ゴッズオーダー』の生みの親であるイラストレーター・あきまん。世界中で愛されるキャラクターを生み出している彼が、マックスファクトリーとタッグを組んでプラキットシリーズを始めるというアナウンスは大きな話題を呼んだ。そしてついに2022年9月、発表から3年以上の月日を経て第1弾「ユリ・ゴッドバスター」が発売となる。それを記念し、編集部はあきまん氏を直撃取材。「『ゴッズオーダー』とは氏にとって一体何なのか?」をうかがった。
PROFILE
あきまん/1964年生まれ。北海道出身。株式会社カプコンのイラストレーター時代にデザインした『ストリートファイターⅡ』のキャラクター達は、今でも世界中で愛されている。ガンダム作品や『コードギアス』などでもメカやキャラクターデザインを多数手がけている。
始まりは2018年のバレンタインデー
─『ゴッズオーダー』という企画がfigma(マックスファクトリーを代表するアクションフィギュアシリーズ)があるにも関わらず、なぜプラキットという形態になったのか、改めて教えていただいてもいいでしょうか?
あきまん(以下あ) MAX(渡辺)さんのところに『ゴッズオーダー』の企画を持ち込んだのが2018年のバレンタインデーだったんですが、ネタ自体はその前から考えていたんです。そろそろ完全に自分のオリジナルで成功した作品を作らないと、寿命がきちゃうと思ってて(笑)。持ち込んでからの経緯は、キット付属の小冊子にも書いてあるんですが、MAXさんに話を持っていく前にコヤマシゲトさんに聞いてみたら「今立体にするなら美少女プラモですよ」って言われて、MAXさんにもそう言われて「あ、今ってそうなんだ」と。
─あきまんさんとしては、最初からプラキットにするつもりではなかったんですね。
あ 勝手に「やるならfigmaなのかな」と思ってたんです。でもみんなに美少女プラモだよって言われて、そこで初めてフレームアームズ・ガールとかメガミデバイスとかを調べました。みんないいデザインで、例えば胸の大きさのデフォルメにしても僕が描きたいけど描けないフォルムになってて、「あ、これはちゃんと欲望産業になってるんだ」と驚きました。
─2018年ということは持ち込んでから4年経過しているわけですが、その間の監修なども大変だったかと思います。
あ もう全部苦労しかなかったというか(笑)。バックパックの接合は背中からか腰からかとか、スカートの長さはどこまで長くしていいのかとか。作り始めた時は他の美少女プラモを見て「脚を曲げるためには股間が出るくらい短くないと無理なのかな」とか思ってたんですが、MAXさんが僕の好きにやってもらったほうがいいって言ってくれたんで、かなり勝手にやってます。前垂れにしても、早い段階でここは軟質素材にするから関節のことは考えなくていいって言ってもらえたりとか。他の部分にしても、プラキットの都合というよりは完成品のフィギュアの枠で考えていいんだなと。僕の勝手をどうとでもしてやるという、MAXさんの心意気を感じました。
─全体的なボリュームも、近年の美少女プラモよりもグッと大きいものになっています。
あ そもそも体がちょっと大きめなんです。最初の僕のイラストは足が長かったんでそれに忠実に原型を作ってもらったんですが、「胴が長いほうがエロいな」と思って、デコマスを作る時に胴体を長くなるよう調整をかけてもらったんです。その時MAXさんに「この大きさでいくんですか?」って言われて、今思えばあそこで全体のボリューム感が決まったと思います。
本当はメガミデバイスとかと同じような体型にしたかったんですけど。売れているものの力がほしかったので……(笑)
売れている物、トレンドにあるアイデアを研究して生まれる新たな発想
─本当に、先行する美少女プラモをすごく研究されていたんですね。
あ 僕はオリジナリティがあるって時々言っていただくこともあるんですが、自分の気持ちとしては今売れているものやすでにあるアイデアを横にスライドさせてFIXさせているだけなんです。富野(由悠季)さんとのお仕事では、「レジェンドの富野さんがまたすごいことをしたぞ」って言われてほしくてユニークなデザインもしていますけど。例えば『コードギアス』でも、割とみんなの意見を取り入れた調整型のやり方をしてます。今回の『ゴッズオーダー』のデザインにしても、実は『∀ガンダム』の設定の考え方を流用しているんです。
─そうなんですか?
あ ∀ガンダムって、設定的には「下半身が移動用の装置、上半身がウェポンキャリア」っていう考え方なんです。だから普通のモビルスーツみたいに背中に推進器がついてなくて、スラスター・ベーンと言う形で脚に推進器がついてる。最初に見た時にすごく納得して、「モビルスーツは全部こうするべきだよ!」って思ったくらいインパクトがありました。両手に噴射口がついてて空を飛べるアイアンマンみたいなスーツがありますけど、あれは人体の中で腕が一番微調整できて安全だからですよね。もしもAIで推進力を制御できるなら、両手を自由にするために脚に推進器を付けるべきだと思っています。だから、エンジェルブーツでヒザに羽根をつけたのは妙なアイデアではないと、自分では思ってるんです。
─膝から羽根が生えているというアイデアは、そういう発想から生まれたものだったんですね。
あ 自分でもこれはけっこう好きです。ここは部品を入れ替えたり、他のタイトルとコラボレーションしたりできるかな、という形でデザインしてますね。あと、まだデザインも出てないうちから言うのもアレですけど、鳥だけじゃなくてトンボの羽根とか妖精の羽根とか、違うものもやりたいんです。羽根の位置に関しては、敵側のオーバーロードは頭から生やすようにしていて、できるだけそこは統一したいと思っています。
プラキットの箱絵は通常のパッケージのその先を描かなければならない
─そういったデザイン面に加えて、インパクトのある箱絵もあきまんさんが担当していますね。
あ 箱を描くにあたっては、まずプラキットとオモチャのパッケージはどこが違うのか、ずっと見比べたんです。オモチャのパッケージって、箱絵というよりは中に入っているものの写真とかがそのまま使われているんですね。だけどプラキットはイラストで、背景とか別のキャラクターまで細かく描いてあったりする。つまり、プラキットの箱というのは、オモチャなど通常の「パッケージ」のその先を描かなくちゃいけないんだなと思ったんです。ただ、僕は背景描くの嫌なんですよ(笑)。だから顔で勘弁してくれと。その代わり髪も細かく描写して、ユリちゃんの顔ってどんなだっけというのを思い出しながら、「これはこれで一番正しい」というものを描いたつもりです。
─プラキットのパッケージは通常のパッケージの先を描いているというのは、あきまんさんならではの着眼点だと思います。
あ 昔はプラキットの箱絵って、実際のモデルよりロマンが大盛りだったりということがあるじゃないですか。でも、例えば高荷(義之)さんが描いたバルキリーのプラモの箱とか、当時真似して描いたりしてたんですよ。あのバルキリーに対するオマージュとして、『ゴッズオーダー』でも脚の奥に影を濃く入れたりしてます。あと箱絵、顔アップのユリちゃんはプラキットに比べて目がちょっとちっちゃいんですが、これは『エスパー魔美』現象ですね。『エスパー魔美』って漫画の中では目が大きいんですけど、扉絵とかだと目がちっちゃくなるんです。あのふたつの絵柄が両立しているのがすごく好きなんで、あえてパッケージではこういう絵柄にしています。
みんなのアイデアをどんどんプラモに注いでほしい!
─このプラキットでこういうふうに遊んでほしい、というアイデアはありますか?
あ 剣戟で傷がついた状態とか、砲撃で黒ずんでるとか、そういうダメージが入った形で作ってもらってもいいと思います。『ゴッズオーダー』はテーマパーク型コロニーとそこに設立されたファンタジックな仮想世界が舞台なんですが、そのゲーム中の服装として例えば別の色のユニフォームを着てたりとか、そういう改造もできるんじゃないかと。とにかくまだ『ゴッズオーダー』の世界が知られていないんでどう改造していいかわからないと思いますが、キットについている冊子などで設定面を見てもらえれば、いろいろと「じゃあこれができるんじゃないか」というアイデアも湧いてくるはずです。
─そういった仕上げの幅の広さも含めて、息の長いシリーズになりそうですね。
あ 『ゴッズオーダー』は、僕としてはライフワークにしたいと思っている作品なんです。こういう言い方がいいかはわからないけど、僕が死んだ後でも残って続いていくような作品にしたいし、そのためには生きている間はずっと続けていきたい。いろいろと構想があると話した後なのに、いきなり途切れちゃうとユーザーの皆さんとしても「なんだよ〜!」ってなっちゃうと思いますし(笑)。なので、もしよろしければ末長くお付き合いしてくださるとありがたいです!
Ⓒakiman/Maxfactory