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模型の“塗料事情”って今どうなっている?これからどうなる?メーカーに直接インタビュー!【GSIクレオス】

2022.09.12

塗料メーカーインタビューその1 自宅時間増加で塗料ってどうなってるの?どうなるの?GSIクレオスに訊いてみた 月刊ホビージャパン2022年10月号(8月25日発売)

模型の“塗料事情”って今どうなっている?これからどうなる?メーカーに直接インタビュー!【GSIクレオス】
 GSIクレオスホビー部の片山雄一氏と荒木太歩氏の写真
▲ GSIクレオスホビー部の片山雄一氏(左)と荒木太歩氏(右)

 今回、おうち時間の増加による塗料事情の変化や、これから10年後の塗料事情について、塗料を製造販売するメーカーに直接インタビューしました。まずは、ド定番塗料の「Mr.カラー」や「ガンダムマーカー」などを製造販売するGSIクレオスの担当者から伺いました。


—自宅時間増加に伴う昨今の模型ブームの塗料への影響はいかがですか。

 昨今の巣ごもり需要から始まったことと言えば、2020年8月ぐらいに在庫がほとんどなくなることがありました。想定していない動きだったので、充分な生産数を確保するのには時間がかかりました。その時期から海外からのオーダーも増えました。日本製の塗料がイイということが世界にバレたんですかね(笑)。それだけ世界的に「プラモデル」が巣ごもりの趣味に適していたんでしょう。
 ただ、昨今では各国それぞれ溶剤などの規制に変化があり、輸出においてはさまざまな障害もでてきています。例えば、台湾は「Mr.カラー」が主流だったのですが、ある日を境に模型用ラッカー塗料を店頭で販売できなくなりました。政府から即日施行の御触れという厳しいものでしたね。台湾のモデラーから本件についての問合せも殺到しましたが、現在は規制に触れない水性ホビーカラーの性能向上もあり、そちらが受け入れられています。

—需要増、出戻り、新規参入層増加による御社への質問などは増えていますか?

 以前は、どうしてそんな使い方をしようとするの?というようなアクロバティックな質問も多かったんですが…。最近は、この塗料はどこで買えますかとか、この素材には使えますか、といった初歩的な問い合わせが増えています。プラモデル以外にフェイクスイーツの作成やコスプレの塗装に使いたいという問い合わせもあります。
 模型に復帰された方も多いですね。お問い合わせ電話で社名を名乗ると、グンゼ産業(GSIクレオスの旧社名)さんじゃないんですか? という問い合わせもたまにあって。もう社名を変更してから20年も経っているんですが、20年以上空白だった人たちが帰って来ているのはとてもいいことだと思います。復帰された方は、まず便利な工具が増えたことに驚いている方が多いですね。この20年間、当社もいろんな製品を作りましたが、今まで手間だった作業が時間短縮できるようになり、今はもっとプラモ作りが楽しくなっていると思うんですよね。
 また、ご家庭を持っている方から塗料の体への影響に関しての質問は非常に増えました。模型ではラッカー塗料が中心ですが、世間のイメージはラッカー塗料といえば、工業用の強い溶剤を使用した塗料のイメージがありますよね。ですので、塗装は健康を害するのではとネガティブにとらえられがちです。当社は家庭内で使用することを念頭に、人体に影響を与えやすい強い溶剤をできるだけ構成せずに塗料化しております。それでもやっぱり溶剤の臭いがするので危ないのでは? とよく聞かれます。ただ、この“溶剤の臭い”には、この辺には有機溶剤が充満していますよ、という危険物のシグナル的な意味もあるんですよね。従って、有機溶剤の匂いが無くなるまで、塗装後もしっかりと換気を行ってください。臭いを軽減させることはできるんですが、臭いが減ったからといって、もともとの有機溶剤が消えるわけではありませんので、有機溶剤の匂いはそのままにしています。目では見えないですからね。強い溶剤を使用することで塗料としての性能は容易に上げることはできますが、弊社では新しい溶剤や成分に着目しながら、長く楽しく模型ライフを楽しんでいただくために、環境や時代に合わせて良い塗料を送り出すことを目指したいですね。

—それ以外に昨今の模型ブームで気づいたことなどがありましたら教えてください

 新規参入の増加で一番売れているのが、「ガンダムマーカー スミ入れ」の黒色とツヤ消しトップコートです。昔からこの2アイテムがトップなんですけれども、販売量が一気に上がっているんです。これらが売れるということは、ガンプラにスミ入れやトップコートをしてみる、といったライトなユーザーが増えたと推測できますね。初めての方がまず買ってみて、モールドにスミを入れてみて「わーすげぇ」と感動体験を得られるんでしょう。ツヤ消しも一気に作品感が出るので、やはり初めは簡単に一目で効果がわかるものがいいんですよね。

—今後、力を入れていきたい塗料(ラッカー、水性、エマルジョン系など)、ツールは?

 水性ホビーカラーとアクリジョン(エマルジョン系)ですね。
 Mr.カラーは長く模型業界で使われており、認知度も高いので、主軸であることは当面変わりませんが、先述のとおりに各国でさまざまな規制があるなど、今後を考えてのことです。まず水性ホビーカラーですが、やはり2019年の成分リニューアルで性能が向上したこともあり、旧製品の頃よりも動きがかなり良くなっています。時期的にも巣ごもり需要が追い風になって、初めて塗装する多くの人に使ってもらえた印象があります。もうひとつの水性塗料であるアクリジョンは、溶剤成分を極力含まないエマルジョン塗料なので、より安全にご利用いただける塗料となっています。塗料としての特徴が異なりますが、低臭、低溶剤でありながら、強い塗膜を形成する点を推せます。プラモデルだけはなく、クラフト分野でも応用が効きますので、そちらの分野にも着目したいところです。今後もぜひ期待してもらえればと思います。

—今後10年で塗装環境はどう変わっていくと思いますか?

 最初に話したように、溶剤主体のラッカー系塗料が10年後どうなっているかというのは全くわからない状況です。我々としては、10年後もそれ以後も楽しい模型作りと塗装ができる環境を継続させることを考え、取り組んでいく必要性があると思っています。例えばアクリジョンであれば、もっと色数を増やしたり、操作性を向上させる、といったところですね。
 今後の規制次第ではありますが、ご家庭でラッカー塗料が使用出来なくなる日が仮に来たとしても、代わりの水性塗料がありますよ、GSIクレオスの塗料は今も昔も変わらず誰でも使える、どこでも手に入る模型用塗料ですよ、と言えるように準備をしていきたいですね。なおかつ、コアユーザーさんにも喜んでもらえるような商品を揃えたいなと思います。
 もちろん、その時がくるまではMr.カラーにも力を入れていきますからご安心を。

—これから本格的に塗装をはじめてみようと思っている読者へメッセージをお願いします。

 最初はもう本当に気軽に組み立ても、塗装もやってほしいです。最初から完璧を求めないで、段階を踏みながら、ある程度妥協して完成させるのが良いかと思います。いきなり一番高いエアブラシ、コンプレッサー、塗装ブースで…って考えると、楽しむためのハードルが高くなってしまいます。まずはマーカーとか筆とかで始めてみてください。そこで楽しみを感じたら、いろいろな道具を買い足していってほしいですね。
 目標を決めてストイックにやるのもいいんですけど、まずは肩の力を抜いて気軽に模型を楽しんでください。少しずつ技術を付けて、失敗を経験に変えがら、長く続けられる趣味として楽しんでもらえればと思います。我々もその一助となれば幸いです。

—ありがとうございました。

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