ラッカー塗料で筆塗りウェザリングを楽しむコツ!トラクタープラモで実践
2022.07.03筆塗りTribe 月刊ホビージャパン2022年8月号(6月24日発売)

今回はトラクターで筆塗り魂を牽引しようぜ!!
プラモを筆塗りでガンガン楽しんでいるナイスなパイセンたちの作品とテクニックをみんなで読んで、テンションアゲアゲでどんどん筆塗りを楽しんで行こうという連載「筆塗りTRIBE」。お好きな筆にお好きな塗料と、パイセンたちの好みをドストレートにお届けします。
連載2回目は、きの助による「エレール 1/24 ファーガソントラクター」をお届けします。ラッカー塗料を使用した筆塗りで、模型の上で塗料同士が絶妙に溶け合って生まれる雰囲気がとってもかっこいいですよ!! 今回も筆塗り楽しもうぜ!!!(構成・文/フミテシ)
Point
1/ウェザリング仕上げを想定した、事前の粒子塗り!!
2/プラモの上でラッカー塗料とダンシング!!
3/ツヤ感のコントロールで使用感を演出!!
4/ボロボロの筆は、汚し塗装の最高のパートナー
ラッカーパテと砂と「粒子塗り」!
基本塗装に行く前に、経年変化で塗装がぼこぼこになった雰囲気を演出するために、粒子感のあるラッカーパテと砂、模型用塗料を混ぜたものを各所に塗って行きます。
ラッカー塗料で本体塗装スタート!!
きの助はラッカー塗料で筆塗りするのが大好き。ラッカー塗料は、上塗りすると塗面を溶かします。それによって生まれる作為的ではない色変化が楽しめます。近似色を重ねていくことで、絶妙なグラデーションが模型の上で生まれていきます。
混色した塗料を塗って情報量アップ!!
単色ベタ塗りよりも、混色した塗料を何色か模型に塗ってグラデーションを与えたほうが、情報量が増されてかっこいいです。今回は使い込まれた雰囲気を出すために、各所に明るい色を塗ってヤレた雰囲気を表現してみます。
ツヤ感は大事!! 各所で変えてみよう
きれいな箇所はツヤを残し、塗装が劣化している箇所はツヤ消しにしてみるとさらに情報量が増して雰囲気抜群の仕上がりになります。
先にサビを描いてしまいましょう!
サビ汚れはウェザリング用の塗料で行うことが多いですが、先にサビ色をラッカー塗料で作って、サビそうなところに塗っておきます。
機関部を塗ろう!
機関部はディテールも細かくて、きちんと塗り分けようとすると大変。でもそれを逆手にとって、あえてムラを残しながら塗ることで、使い込まれた雰囲気を演出してみます。
ボロボロの筆でチッピングしようぜ!!
ボロボロの筆は、筆先がランダムになっているので、作為的ではない自然なダメージ表現を施すことができます!
混色した塗料を塗って情報量アップ!!
最後はGSIクレオスのMr.ウェザリングカラーで、塗り重ねたグラデーションを落ち着かせたり、ディテールにスミ入れしたりします。
Finish
トラクタープラモは楽しいぜ!!
兵器にはない魅力が満載のトラクタープラモ。激しいお仕事をしてくれるからがっつりと汚れますね。その雰囲気は筆塗りにもピッタリ。働く車のプラモを、ぜひ筆塗りで楽しんでください!
きの助の筆塗り魂を熱くした「石焼いも」と「勢い」
水性ホビーカラーをペタペタ塗った楽しさ
──きの助さんって初めて作ったプラモは覚えていますか?
きの助:私は小学5年生の時に初めてプラモを作りました。あまりに楽しい体験だったので、今でも鮮明に覚えています。作ったのはイマイの風物詩シリーズの「石焼いも」です。石焼き芋を売る屋台と、台座、木、外灯、ベースがセットになっていてこの商品だけで簡単な情景ができるモデルでした。
──少年時代からネイチャー系だったんですね
きの助:今もアウトドアが大好きで、情景の模型というのは大好きです。きっと小さいころから目に入った景色や、それらしい雰囲気の物が好きだったんだと思います。ニッパーと接着剤を慣れないながらも使って、組み立てて、さらにそのまま水性ホビーカラーの筆塗りでペタペタと塗りました。プラスチックが自分の好きな色に染まっていく楽しさは、その時に知ることができたと思います。
その際、部屋にあったスニーカーの箱をプラモについてくるベースの大きさにハサミで切って、加工してケースも作ったんです。サランラップで透明のカバーを作って。自分が作った作品だぞ! って胸をはりたかったんでしょうね。
──筆塗りからディスプレイまで! それだけ楽しんだら、もう模型にどっぷりですね
きの助:そうですね。その後さまざまな模型を買ったと思います。とは言っても、高校生くらいの時にいったんプラモは卒業しました。良くある話です。しかし、卒業前にたまたま買っていたプラモが、また私を模型の楽しさに復帰させてくれるんですね。それが「マシーネンクリーガー」でした。今でも多くの人が筆塗りで楽しんでいるプラモです。
押し入れにあったファイアーボールSGの声が聞こえた
きの助:本屋で久しぶりに模型誌を立ち読みしたんです。きれいでかっこいいガンプラがたくさん掲載されていた中に、重厚なメカが載っていたんですね。「マシーネンクリーガー……? これは何だろう?」と帰宅してネットで調べまくりました。さらに調べると何やらプラモミーティングのようなこともやっていることを知りました。そんな風に調べていると、なんでもいいからプラモが作りたくなったので押し入れにしまったままにしていた、昔買ったプラモを覗いてみたんです。そうしたらそこに偶然茶色い箱の「ウェーブ ファイアボールSG」があったのです!! 小さい頃、全く知らずに買っていたのでしょう。こんなことがあるのか……「神のお告げ」なのか? と本当に思いましたよ。そのまま箱を開けて、速攻で作って塗って、さらにそのままの勢いでミーティングに参加したんです。筆塗りをしているときのテンションは、あの「石焼いも」の頃の自分と同じ。そしてちょっと大人になっていた自分は、あの頃よりもうまく塗れました。こんな体験をしてしまったので、もう模型の世界から出ることはできなくなりました。
筆の「勢い」は私の模型人生そのもの
──素敵な体験と、それを実行する勢いがまた素晴らしいですね!
きの助:ちょうど大学生になったばかりの頃ですから、怖いもの知らずでしたね。あの、「筆で塗って勢いで完成させた体験」が忘れられなくて今でも筆塗りメインで模型を楽しんでいるのだと思います。エアブラシも持っていますが、サーフェイサーを吹いたり、影色を吹いたりと足付けをするくらいです。筆塗りだから出る「勢い」みたいなのが、僕の模型人生そのものみたいな感じがするんですね。

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