HOME記事キャラクターモデルMH(モーターヘッド)「S.S.I.クバルカン ザ・バング」重厚感を演出する塗装術を駆使してを製作!【ファイブスター物語】

MH(モーターヘッド)「S.S.I.クバルカン ザ・バング」重厚感を演出する塗装術を駆使してを製作!【ファイブスター物語】

2022.06.13

S.S.I.クバルカン ザ・バング【ボークス 1/144】 月刊ホビージャパン2022年7月号(5月25日発売)

MH(モーターヘッド)「S.S.I.クバルカン ザ・バング」重厚感を演出する塗装術を駆使してを製作!【ファイブスター物語】

モーターヘッドらしい重厚感を目指して色を重ねる

 クバルカン法国の法と秩序の象徴であり、国の名をそのまま冠する旗騎MH、S.S.I.クバルカン ザ・バング。フィルモア帝国のサイレン、ハスハのA・トールと並び、星団3大MHに数えられる名騎でありながら、一時代にわずか5騎しか生産されず、データの採取はおろかその姿を見た者も稀と言われる超秘密兵器だ。キットは、精密な彫刻やシャープな造形など、小スケールながら見事な完成度を誇る逸品。作例はHM初挑戦となるマイスター関田が担当。持ち前の塗装術を駆使し、MHの重量感・重厚感を演出している。

IMS 1/144 S.S.I.クバルカン ザ・バング

●発売元/ボークス●6380円、2019年7月発売●1/144、約25cm●プラキット●原型/造形村F.S.S.プロジェクトチーム

▲本体は17cmにも満たないが、頭部の角飾りを合わせると約25cmほどで、1/100スケールのMHと変わらない全高となっている。なお、デカールはコミックス5巻登場時の仕様を選択した
▲背部も丁寧に塗り分けている
▲キットそのままの状態。そのままでもディテールとして機能するが、クリアーコートも含めて5層以上重ねることが確定しているため彫り直しを行う
▲彫り直し後の状態。ここまで深く彫り直しておけば、層を重ねた塗装後もスミ入れがシャープに入り、仕上がりの精密感を高めることができる
▲右が段差彫り直し後の状態。本来であれば別々のパーツとして装甲を構成していると感じた部分は、分割や重なり合いを意識した方向からの彫り込みで別パーツのように見せることができる。これも完成後の精密感・密度感の演出に有効
▲全身各所に彫刻されたルーン文字は丁寧にスミ入れを施し、よりくっきりとさせている。また、腹部蛇腹モールドは一段ずつ彫り直しとヤスリ掛けによる面の取り直しを行い、密度感が高まるようにした。さらに他のフレーム色よりもシルバーを多めに吹き付けギラつきを強調している

▲エネルギーチューブの素材はPE(ポリエチレン)なので、塗装もマスキングも非常に困難。PVC被覆のリード線(φ0.8mm)にまずプライマーを塗り、メタリックグレーで塗装。乾燥後、節のひとつひとつをマスキングしてツヤ消しの黒を塗ることで、動力パイプ風にしたものをチューブの代用品としている。それぞれの基部はプラ棒からの削り出し

▲ベイルも丁寧に塗り分けている

■塗装解説

 それぞれの層に役割を持たせ「重さ」を感じさせつつ、MHとして「美しさ・デザインの面白さを活かす塗装を狙って吹き重ねている。

「重さ」を表現するのが主題となるため、一度下地を暗くする。ただ暗くしたいからと黒を使ってしまうと、重ねる色調に極端な濁りが発生してしまうので若干の青みと赤みを加えたグレーを使用
白を多めに加えた明るい青紫に極微量の黒を加えて、設定色に近い本体色を作り重ねていく
ホワイトパール(雲母堂本舗ビスマスパール)を薄く重ねてメタリック感・硬質感を加える
クリアバイオレットにシアンとクリアーを加えた発色の弱い青紫を、パーツのエッジや輪郭、影になりそうな部分に吹き付け、彩度を高める形でグラデーションをかける
クリアーに白と雲母堂本舗LGパールミルキーホワイトを混ぜた塗料を重ねる。全体的に上がった彩度を落ちつかせつつ、パールにより見る角度によって質感が変わる効果を加えた
▲後頭部から伸びるスタビライザーは支柱を金属線に置き換えて補強している
▲ベイルの基部はボールジョイントとなっており、角度が調整できる

 ドーモ、マイスター関田でございます。今回はIMSのザ・バング。キットはモーターヘッド(以下MH)の複雑なデザインを、パーツ単体でも魅力的だと思えるほど精巧かつ表情豊かに立体化しており、ひとつひとつの工程を丁寧に進めていけば、コンパクトながら迫力ある“破烈の人形”が組み上がります。
 製作にあたってはキットの持ち味である高密度のディテールを強調しつつ、重量感ある塗装と仕上がりを目指しました。
 工作面ではスジ彫りや段差を可能な限り彫り直すことからスタート。特に「実物ではおそらく別パーツであろう」と思われる部分は、その重なり具合をイメージしつつ彫り込む方向を変えていき、別パーツ感を演出します。また、成型時にパーツ表面に生じてしまったヒケやザラつきも、面構成を整えつつ丁寧に消していきます。もともとプロポーション面では文句のつけようがないと感じていたので、こうした地味な作業の積み重ねに時間をかけました。
 塗装はとにかく重量感・重厚感を出すことを大前提に考えているのですが、これはかなり前の話になりますが、永野護先生が月刊ホビージャパン誌上のF.S.S.プラモデルコンテストを評されて「MHの表現で重要なのは『重さ』!」と仰っていたのを強烈に覚えていためです。これはもう重くするしかない。
 塗装で重さを演出するもっとも手っ取り早い方法は「下地を暗くすること」。バングの本体色=若干灰色がかった淡い青紫を、ただ塗るのが目的であるなら極端に暗い下地は必要ないのですが、「重さ」の表現を確実にするため暗めのグレーからスタートしています。そこから各層に分割した役割を持たせて微妙に下の層を透かしていくように重ねていって「重さ」プラス奥行き・立体感の強調を狙いました。
 MHに関してはイメージ通りに完成させられる自信がなく、長いこと箱を積むばかりでしたが、今回のお仕事をいただき、生涯初のMH完成作品を作ることができました。結果としてもっと早く作っておけばよかったな、という後悔のほうが強いです。やはり完成させてしまえばほとんどの問題は解決するか解決の方向性が明らかになります。今回の作例が「上手くなったら作ろう」と製作を躊躇している方の背中を押す一助になれば嬉しいですね。

ボークス 1/144スケール プラスチックキット “INJECTION ASSEMBLY MORTAR HEADD SERIES”

S.S.I.クバルカン ザ・バング

製作・文/マイスター関田

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ⓒEDIT ,All rights reserved. 創作造形ⓒ造形村/ボークス

マイスター関田(マイスターセキタ)

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