HOME記事ガンダム伝説のディオラマ「砂漠の駐屯地」を現代風アレンジでよみがえらせる

伝説のディオラマ「砂漠の駐屯地」を現代風アレンジでよみがえらせる

2022.05.12

砂漠の駐屯地2022【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2022年6月号(4月25日発売)

伝説のディオラマ「砂漠の駐屯地」を現代風アレンジでよみがえらせる

ZEON’S 砂漠の駐屯地2022

 小社「HOW TO BUILD GUNDAM 2」(1982年5月刊行※現在電子版発売中)に収録され、当時のファンに大きなインパクトを与えた、川口克己(バンダイ川口名人)氏製作の不朽の名作ディオラマ「砂漠の駐屯地」の現代風リメイク作品。製作は、以前も「HOW TO BUILD GUNDAM」に収録された川口氏のディオラマ「ジャブローを目指せ」を、HGキットでリメイクしたコジマ大隊長が担当。使用キットを1/144から1/100にスケールアップ。さらに2022年だからこそ使えるマテリアルやテクニックを駆使し、現代によみがえらせている。

 アフリカ戦線駐屯地の様子を砂漠仕様への改修MSで演出

 アフリカ・サバンナの最前線にある駐屯地をイメージした川口氏の作品は、第二次世界大戦をモチーフに、アニメ劇中にはないシチュエーションを作り上げ、ガンプラにさらなるリアリティを付与した伝説の名作である。駐屯地での兵士たちのリアルな仕草はもちろん、現地改修されサンドカラーに塗り替えられたドムや各種車両など、AFVモデラーでもある川口氏ならではの“ガンダム世界のリアル”を感じ取れる一作といえる。


▲サムソン・トレーラーに横たわるザクIIや各種車両、テントなど、オリジナル作品でも見所となっていた構成要素もしっかりと再現。ドムの後ろの木陰で立ち小便をする兵士まで忠実に再現する徹底ぶりに、作者のオリジナルへの愛とリスペクトを感じる

▲川口克己氏によるオリジナル作品は、1/144スケールを基準としたものだったが、今作は、作り込みのしやすさなどを鑑みて1/100で製作。そのためベースも大きくなり過ぎないようにモビルスーツは3体に止めている。ディオラマサイズは横47cm×縦44.5cm×高さ30cmほどとなる

▲ドムの胴体は胸部と腹部で分割し、S字の立ち姿になるように改造。頭部もいったん切り離して塗り分けを楽にしている。ハンドパーツも元キットをポリパテなどで穴埋めして握り手を製作。元のドムの紫と黒の塗装の上からアクリル塗料でサンドイエローを塗り、溶剤で剥がすことで地色が露出する演出を行った

▲グフは頭部をクサビ形に切り欠き形状を調整。ランドセルは四方に4mm拡大。左手の5連装75mm機関砲は、元キットを改造してひと関節増やしている。肩アーマーは5mmほど上に付くようにしてイカリ肩を再現している

▲ザクは定番の胴体ハの字切りで幅詰めし、靴裏はMGザクIIF2型のソール部を移植。ザクを覆っているキャンバスや兵舎のテントは、ティッシュペーパーに塗料と木工用ボンドを混ぜたものを染み込ませて製作している

「大尉殿! 無茶ですって! いくら新品のザクと言ってもランドセルの換装にどんだけ急いでもあと15分はかかりますって!」
「なら何か? 連邦の戦闘ヘリ相手にガキの乗るグフ1機と被弾してろくに動けねえドムだけであとはタコツボに入ってやり過ごせってのか? クソの役にも立たねえ口を動かすヒマがあったらとっととこいつに火を入れる準備しろって!」
「わかりましたよ! でも大尉殿ノーマルスーツくらいは着てくださいよ、その格好じゃ戦闘機動の横Gには耐えられませんからね」
「へっ恩に切るぜ曹長」
 到着したばかりのザクの傍らでこんな会話が聞こえてきそうな情景。「HOW TO BUILD GUNDAM 2」から、永遠の名作「砂漠の駐屯地」をモチーフにしたリメイク作品を担当しました。オリジナルでは1/144(グフのみ1/100)でモビルスーツ5体を配した作品でしたが、今作はすべて1/100キットを使用するため、3体配置で40cm×45cmの画面の中でアップデートしたディオラマになるよう進めていきます。とはいえ関節はすべてハメ殺し構成のため、3mmのアルミ線を使っての接続に変更して、合体後のポーズの微調整ができるよう加工しています。この時に元のパーツに直に接着するより針金の太さに合わせたプラパイプを差し込んで接着面積を稼ぐのも手かと考えて一手間かけています。
 この分割で影響のないパーツはすべて瞬間接着剤を使って接着し、不要な穴はポリパテで強引に塞いで形状を整えて製作しました。
 オリジナルではオプション装備にも注力がされていて、これらを再現することも今回の重要なポイントになります。ドム、ザクのランドセルやグフの脚部スラスターはプラ材を使ってのスクラッチ。これはおそらく当時も同じような製作手法であると思われますが、現在ではバーニアノズルは豊富なアフターパーツが購入できるのでいい時代になったものだと(笑)。同様に動力パイプも当時は糸ハンダを巻いて作ったとの記述ですが、今回はウェーブのA・スプリングを使っています。
 サムソン・トレーラーも基本はプラ板でスクラッチして、車輪は数が必要なのでハセガワの1/72 M-1エイブラムス戦車の転輪を使いました。載せているザクは定番の胴体ハの字切りで幅詰めしたのと靴裏が丸見えになるので、MGザクIIF2型のソールを移植しています。
 車両類はトミカのミニカーから、1/89自衛隊重装輪回収車と1/70高機動車をリペイント、ミサイル・ポッドやゴンドラをプラ材やジャンクパーツで製作してらしく配置。ゴンドラ上のパイロットだけはMGザクIIに付属のフィギュアを使用しました。他のフィギュアは合計42体。プライザーの1/87とハセガワのグランドクルーセット1/72を混在、輸送用トラックもハセガワのキットに付属のものです。案外微細なスケールの差もこの範囲であれば気にせず混在させて使えるという作例になるのではないでしょうか? またフィギュアを複数人まとめて配置するときは向きやポーズを吟味して対話しているようにするか、共通の目的のために移動しているようにするとストーリーを感じられます。
 ザクを覆っているキャンバスや兵舎のテントは、ティッシュペーパーに塗料と木工用ボンドを混ぜたものを染み込ませて製作しています。テントは内部に真鍮線で骨を入れているため、実際のもののように重みで布が垂れているような形状も作ることができます。
 あとは駐屯地らしくさまざまな物資をかき集めて集積している様子をAFV系のパーツを駆使して、地面に直置きというのは今っぽくないのでパレット的な板を敷いて配置しています。
 最後に地面の造作ですが、オリジナルは起伏のないものであったのに対して、今作では奥行き方向の傾斜を作ることで、天然の地形を利用した駐屯地をイメージし、土留の鉄板や車両用のスロープで工兵の活躍を想起する情景としました。散りばめている植栽は2種類の色違いの水苔をハサミで細かく裁断して、水溶き木工用ボンドで固着させています。

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキットグフ+ドム 使用

砂漠の駐屯地2022

ディオラマ製作・文/コジマ大隊長

この記事が気に入ったらシェアしてください!

©創通・サンライズ

コジマ大隊長(コジマダイタイチョウ)

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2022年6月号

ご購入はこちら

月刊ホビージャパン2022年4月号

ご購入はこちら

HJメカニクス10

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー