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明日から使える?!プロモデラーに学ぶスジ彫りテクニック[前編]

2022.04.18

模型表現の幅を広げる「ディテールアップ」の世界 月刊ホビージャパン2022年5月号(3月25日発売)

明日から使える?!プロモデラーに学ぶスジ彫りテクニック[前編]

本記事では、 精密なスジ彫り工作を得意とするコボパンダが、さまざまなツールを駆使して解像度を高めるとともに立体物としての説得力を持たせるディテールアップを行います! 今回はスジ彫りカーバイトとBMCタガネを使用してさまざまなスジ彫り方法を解説します。


❶1/144パーツの直線を彫り直す

▲元々のディテールや段差を強調するために、比較的入手しやすいファンテックのスジ彫りカーバイトで彫り直しを行います。刃の径は1/100と1/144のパーツでほぼ共通に使える0.15mmをチョイスしています(スジ彫りカーバイト0.15)
▲まずは1/144パーツを彫っていきます。彫るポジションはディテールに対して垂直に、力を入れずに5回~10回で深さが均一になるように彫っていきます。彫る腕はヒジで固定して、指と手首を使って彫ります。パーツのほうを動かしながら角度を変えます
▲彫っていると、どうしても彫った部分の縁がめくれてきてしまいます。これを処理するため、小さく切った紙ヤスリで縁の部分をならしていきます。紙ヤスリは角がピンとしていると処理しやすいです

❷1/100パーツの直線を彫り直す

▲1/100スケールはパーツが大きく、ディテールも複雑です。写真の箇所は斜めにディテールが入っているので、指でパーツを斜めに固定し、垂直に刃を入れていきます。力加減やポジションは基本的には1/144と変わりはありません
▲彫る部分が曲面のディテールとぶつかっていますが、一度に彫ろうとするとズレたり、彫りすぎたりするので、ひとつの線に沿ってひとつずつ彫っていくときれいに仕上がります。彫る始点と終点に点を下書きしてもよいでしょう
▲こちらも彫った部分の縁を紙ヤスリで整えます。番手は1/144のパーツも共通で、400番~600番で磨いています。スジ彫りに対して一方通行にヤスリを動かすと、縁がゆがんだりせずにきれいに処理できます
▲距離の短い彫り直しは、彫刻刀やスピンブレードなどの刃を押し当ててV字に浅くカット(下彫り)、そこからスジ彫りカーバイトで任意の幅、深さに彫り直すときれいにできます。新しいスジ彫りディテールを彫るのにも応用できます

❸デザインナイフでエッジ出し、または面取りを追加

▲彫った部分をデザインナイフでエッジを出したり、面取りを追加することで、スミ入れしたときの見え方を変えることができます。装甲の分割ラインを強調したり、あえて面取りをつけることでスジ彫りの「ただ彫った感」がなくなります
▲適度な力加減で彫ると、細かい糸切れのようなカスが出たり、縁を処理した際のヤスリの削りカスで彫りの視認性が悪くなります。市販の歯ブラシなどでこまめにカスを除去します。歯ブラシは先が細毛でヘッドはやや大きめ、毛の硬さは硬めが使いやすいです

❹凹モールドの彫り直し

▲凹モールドは彫り直すと効果が出やすいので、ディテールアップにはオススメです。元々あるキットのモールドを、一段彫り下げる、枠の周りを彫って浮かす、プラ板を埋め込むなどいろいろできることがあります
▲太い径の凹モールドを彫り下げるにはその幅に合ったもので彫るのが早くて正確です。先に彫った0.15mmのスジ彫りラインを目安にして、モールドの幅を目分量で決めて刃を当てます。もちろんこのモールドよりも大きいもので彫っても大丈夫です
▲凹モールドの幅が0.3mmだったのでそれに合わせてスジ彫りカーバイトで彫ります。太い幅の彫り直しも通常のモールドと一緒で、ほぼ力を入れずに最初は引っ掻くように、削れてきたら始点と終点で深さを均一にします(スジ彫りカーバイト0.3)

❺極細ダイヤモンドヤスリで曲線彫り直し

▲ディテールは直線的なものから、写真のような緩いカーブを描いているようなものまであります。なるべく正確に左右対称に彫るために、スジボリ堂の極細ダイヤモンドヤスリ(丸 0.5mm)を使って曲線を彫り直していきます。今回はシャープペンに装着しています
▲ヤスリなので、彫るというよりはなぞるように削っていきます。0.5mmという細さなので力を入れると曲がってしまいます。扱いには注意が必要です。先端を活かしつつ、若干針を寝かせてディテールに沿って彫っていきます
▲このままだと線が均一の太さにならないので、極細ダイヤモンドヤスリで彫った部分に沿ってスジ彫りカーバイトでさらに彫っていきます

❻スミ入れで彫れ具合を確認

▲1/100と1/144とのパーツが彫れました。線の幅や、深さ、線同士が繋がっているかを確認するために、スミ入れを行います。白いパーツなどは特に見づらいので加工やサフなどを吹く前にスミを流しておくと後々楽になります
▲1/144のパーツはスミを少し多めに含ませます。エッジの部分に塗布するだけでスーっと溝全体にスミが流れていきました。彫りがゆがんでいたり、線が繋がっていないときはスミが完全に乾いてから、直していきます
▲1/100のパーツはディテールが複雑なぶん、スミを多く含ませると流れきらず溜まってしまいます。スミを少なめにしつつ、凹モールドの部分から全体に流していきます。上手く彫れていれば、少量でも毛細管現象で全体に流れていきます
▲スミ入れによってディテールがくっきりと彫れているのが確認できました。同じ幅、同じ深さでも、1/100と1/144のパーツではモールドの印象がパーツ分割に見えたり、細かいディテールに見えたりと違って見えてきます

❼刃幅の違いのスジ彫り効果

▲同サイズのパーツ(1/144)で、径の違ったスジ彫りカーバイト0.1mmと0.15mmでディテールの彫り比べをしてみました。彫る深さはほぼ一緒で、彫った縁はデザインナイフでC面を作り、少し立体的に見せています(スジ彫りカーバイト0.1) (スジ彫りカーバイト0.15)
▲こちらがスミ入れをした状態です。0.15mmは別パーツのような雰囲気が出ており、0.1mmは線が細く繊細な印象を受けます。好みが別れるところですが、どちらにしても密度感が高まり、情報量を増やすことができます

❽刃幅の違いを彫り比べてみる

▲スジ彫りカーバイトの各種刃幅を彫り比べてみます。0.05mmから1mmまでの7種類を試してみました。スジ彫りカーバイトは手軽に刃を変えられるホルダーが別売されているので、1~2本用意しておくと付け替えがかなり便利です(スジ彫りカーバイト)
▲均等に彫っていくため、ガイドテープを使用します。スジ彫りカーバイトはかなり鋭利なので、太い径のスジ彫りでもガイドテープを使えば、下彫りせずに直接彫ることも可能です
▲7種類を彫ってみました。0.05mmはかなり細く、刃が折れやすいので、いきなりトライするよりもほかの刃で慣れてからのほうがよいでしょう。0.1mm、0.2mmは既存モールドと相性がよく、太めの0.5mm、0.8mm、1mmは、凹モールドを彫るのに重宝しそうです

後編に続く

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