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CURTISS XP-55 ASCENDER
カーチス XP-55 アセンダー

2021.05.18

カーチス XP-55 アセンダー 試作戦闘機【モデルズビット 1/48】 月刊ホビージャパン2021年6月号(4月24日発売)

高速戦闘機を夢見たアメリカの「震電」

 レシプロエンジンによるプロペラ戦闘機の限界を突き破るべく、1940年代には各国で「前翼型」(カナード、エンテとも呼ぶ)の戦闘機が研究された。日本では戦争末期に初飛行した九州J7W「震電」が有名だが、アメリカでも1943年7月に「震電」によく似たカーチスXP-55アセンダーが初飛行していた。3機が試作されたが、低速時の失速特性の悪さに悩まされ、またジェット戦闘機の台頭により1944年後半には開発が中止されている。モデルズビットから発売された1/48キットは、この異端の試作アメリカ戦闘機を高精度で立体化した!

▲ XP-55アセンダーで採用された「前翼型」は、胴体前方に前翼、後方に後退角を持つ主翼、推進式のエンジン配置など、当時の主流であったプロペラ戦闘機とはまったく逆の形態を持っていた
▲ XP-55は最高速度約816km/hの高性能を予定していたが、X-1800エンジンの開発中止によりV-1710を搭載して完成。通常戦闘機と性能差はほとんどなく、ジェット時代の波に取り残されることとなった
▲ 胴体中央に位置するキャノピーはP-51初期型などによく似た横開き式。キットは開閉選択式で、それぞれの状態のパーツが用意されている
▲ エンジンはP-38ライトニング、P-40ウォーホークなどと同じV-1710を搭載。プロペラ直前のカウルフラップはエッチングパーツで再現
▲ 降着装置は前脚式で、扉は閉状態となっていることが多い。面積の小さい前翼は昇降舵として使われる
▲ 後方に胴体がなく推進効率が高い機体形式。スピナー周囲はラジエターからの排気が通るスリットがある
▲ プロペラをクリアするための長い主脚。後方にはラジエターのエアインテイクとベントラルフィンがある
▲ コクピットは多くのプラパーツおよびエッチングパーツ、デカールが用意され、詳細な出来映えとなる
▲ 前脚式の機体なので胴体前部にオモリを入れておく。キットの指示では4gだが、安全を見て6gをセット
▲ プロペラや脚カバーはていねいにモールドされているが、表面にヒケが出ているのでパテで修正しておく

■出来の良い試作機キット
 今回はちょっと変わったキットを製作します。一般的には簡易キットの範疇に入るものといえますが、最近のものは以前とはまったく異なり、通常のインジェクションモデルとほぼ同等です。確かに一部組みづらいところも見られますが、見事に合う主翼と胴体パーツなど、全体的にはおおむね良好です。また多数のエッチングパーツによるコクピットの再現性は素晴らしいものです。ただ極小のパーツなどもあり組み立ては少々面倒です。
 実機は先鋭的な機体設計で期待されたものの、搭載予定のエンジンが開発中止、代わって従来のエンジンを搭載したものの所定の性能が出ず、また機体の安定性不良が解決できず、3機の試作に終わってしまいました。キットにはこの3機のうちシリアルナンバーの2番目と3番目のデカールが付属します。
 試作機のため時期により機体の細部が異なっている場合があるので、できれば資料を用意したいですね。今回はギンターブックスのXP-55に関する書籍「Air Force Legends:Curtiss Ascender XP-55」が入手できたので大変参考になりました。

■胴体の製作
 最初はコクピットから。多くのプラパーツおよびエッチングパーツ、デカールにより詳細なコクピットができ上がります。コクピットブロックは内壁が箱組みで、安易に組み立てると胴体に収まりきらなくなるので、接着面をできるだけきれいにし正確に組むようにします。
 前脚庫も箱組みし胴体に組み込みますが、前脚柱は後からでも取り付けられます。また前脚扉を開く場合は、胴体に閉状態でモールドされている扉を切り取り、別にモールドされている扉のパーツを取り付けます。ただ作例のナンバーの機体は先端の扉以外閉じている画像が多いので、作例では閉状態のままにしてあります。
 この他、胴体上部のエアインテークおよび排気管は胴体左右接着前に組み込んでおきます。排気管は胴体側の取り付け穴が少々小さいので広げておきます。上部のインテークは少々合いが悪いので、充分なすり合わせが必要です。胴体下部のラジエター・インテーク部も少々合いが悪いので、擦り合わせやパテ整形が必要です。
 胴体前部にオモリを入れ忘れないようにします。キットの指示では4gとなっていますが、安全を見て6gほど入れてあります。

■主翼などの製作
 主翼部はきわめて精度が良く、上下の合わせ、胴体との合わせともにまったく問題ありません。主脚柱、タイヤなどは別途組み立て塗装しておきましょう。
 プロペラ周りの組み立てには注意が必要です。また胴体エンジンパーツF21の周りにエッチングパーツのカウルフラップを環状に取り付けますが、F21パーツが少し大きいので削って合わせます。
 キャノピーは閉状態と開状態の2種別々にモールドされているので大変ありがたいものです。片方をコクピットのマスキングに使用できます。また窓部分のマスクシートも同梱されているので非常に助かります。塗装後にこれらを取り付けて完成です。

■塗装およびマーキング
 マーキングと言っても試作機なので、シリアルナンバーの差だけです。作例では「278846」にしました。この機体がみっとも多く写真が残っているようですが、時期により細部に違いが見られ、排気管周りや前脚付近がとくに顕著です。
 塗装は下面ニュートラルグレー、上面オリーブドラブの当時の米陸軍航空隊の標準塗装です。試作機なのであまり汚れていないかと思いきや、実戦参加機ほどではないにしろ、テスト飛行でそこそこ塗装は傷んでいるのでそれらしくしてみました。まず全面をガイアノーツのサーフェイサーエヴォ ブラックで塗ります。以後はすべてGSIクレオスのMr.カラーを使用し、下面をC13ニュートラルグレーで塗装。パネルラインを気持ち残すようにパネルごとに塗ります。その後上面をオリーブドラブで塗りますが、まず緑味の強いC38で、その上から茶色味の強いC12を下地の色味を消さない程度に塗っていきます。上下の境界は少しぼかします。
 乾燥後タミヤのスミ入れ塗料でスミ入れし、デカールを貼ります。最後にC181半光沢とC182つや消しを6:4に混ぜたものでオーバーコートします。脚、プロペラ、キャノピー、翼端灯などを取り付けて完成です。

■まとめ
 モデルズビットのキットはハードルが高いかなと思っていましたが、思いのほか組みやすかったです。こだわりが強い分細部にも手を抜いていない、とても良いキットだと思いました。メジャーなメーカーでは絶対にリリースしないであろうアイテムを多く開発しているメーカーですから、今後の展開も楽しみですね。

モデルズビット 1/48スケール プラスチックキット

カーチス XP-55 アセンダー 試作戦闘機

製作・文/山田昌行

カーチス XP-55 アセンダー 試作戦闘機
●発売元/モデルズビット、販売元/ビーバーコーポレーション●7040円、発売中●1/48、約18.8cm●プラキット

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山田昌行(ヤマダマサユキ)

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