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【ゾイドワイルド戦記 外伝】
第5話「共同戦線」

2021.09.15

ゾイドワイルド戦記外伝 月刊ホビージャパン2021年10月号(8月25日発売)

【ゾイドワイルド戦記 外伝】第5話「共同戦線」

原作:『ゾイドワイルド』シリーズより/企画:タカラトミー/構成:アーミック/執筆:近村英一[エッジワークス]/協力:ホビージャパン

 YouTubeのタカラトミーチャンネルにて配信中『ゾイドワイルド戦記』より、アニメに描かれなていない裏側や前日譚をまとめた『ゾイドワイルド戦記外伝』。両軍の戦いの最中突如現れたゼログライジスを排除するため、一時的に協力する共和国と帝国。アニメ6話に続く戦闘をストーリーとともに見ていこう。

第5話「共同戦線」

「今だ! XAモード!」

 リュークの力ある言葉が引き金となり、ゼノレックスのコアエネルギーがさらに増加。体表面が鱗状の光に包まれたかと思うと、黒い装甲へと変化する。
 ゼノエヴォリューションアサルトへと進化したのだ。
 アサルトエクスバスターに空気が歪むほどのエネルギーが充填されていく。
「アサルトエクス……バスタァアアアアアア!」
 発射された巨大な光弾は、空気を圧し潰しながらゼログライジスの胸部へと命中。
 巨大な爆発と共に胸部装甲が大きく破損し、巨体がビルを崩しながら倒れていく。
「行くぞ、ゼノレックス!」

ガォオオオオオオオオン!!

 追い打ちをかけるべくゼノレックスは咆哮を響かせビルの屋上から跳ねた。

ゼノレックスバスターXA

 共和国軍のゼノレックスと帝国軍バーニングライガー隊の戦闘の最中、突如として現れたゼログライジス。
 共通の脅威の前に、両軍のゾイドは急遽共闘を展開するに至っていた。
「まさかとは思うが、地球外ゾイドの因子がヤツを引き寄せているんじゃないのか……」
 上空から状況を監視する共和国飛行母艦の中で、ボルト技術主任が呟くように言う。
「俺たちの戦いが、地球外ゾイドの開発競争がゼログライジスを活性化させているというのか?」
 クエイド中佐はモニタを見つめたまま、ボルトへと返した。
「可能性は充分にあるだろうな……」
 船内の空気が重くなった。今するべき話ではなかったかもしれない。
 だが今はそんな失言を反省している場合ではなかった。
 モニタの向こうでは、仲間がゼログライジスに対して必死の抵抗を続けているのだ。
「ボルト技術主任。ゼノエヴォリューションアサルトは、あとどれくらい維持できる?」
 クエイドの言葉を受け、ボルトは頭を急速に回転させる。
 ゼノレックスのあの形態は、リミッターを解除した大火力を得る代わりにエネルギー消費の激しい短期決戦型になっている。それはつまり、攻撃をすればするほど稼働時間が短くなる事を意味していた。
「今のペースで戦い続ければ、20……いや、10分保つかどうか……」
 クエイドが表情を厳しいものへと変える。
 たったそれだけの時間で、アレを片付ける事など不可能としか言えなかった。
 しかし、自分たちがここで退けば、市街への被害は避けられない。最悪、消滅することも視野に入れなければならないだろう。

ゼログライジス

 剥き出しになったゼログライジスのコアに、バーニングライガーが攻撃を集中させる。
 すると、それを嫌がるようにゼログライジスが体を傾けた。
「効いているぞ! 攻撃の手を休めるな!」
 ブレイズの声に、ポーラとハンスが素早く散開するとビルの壁面を飛び跳ね、四方から射撃を続ける。
 そんなバーニングライガーを追い払うように、ゼログライジスが腕を振るう。
 暴風を伴う凶悪な一撃。だが、見えていれば、避けられないような速度ではない。
 ハンスは余裕のある動きでその腕を飛び越そうとするが……!
 ゼログライジスは地面を大きく削り取ると、破片をハンス機へと向かって飛ばした。
「ハンス!」
 空中で破片を受けバランスを失うハンス機。そこに、ゼログライジスの巨大な腕が迫る。
「させるかああああ!」
 衝撃に身構えた瞬間、飛来したアサルトエクスバスターの光弾が爆ぜ、腕の軌道が跳ね上げられ、バーニングライガーを掠めながら空を切り、近くのビルを粉砕した。
「……助かった、礼を言う」
「なに、気にするな」
 言って、リュークはそびえ立つ巨竜を睨みつけた。
「あんな攻撃、まともに受けたらひとたまりもないわね……」
 彼女たちの攻撃は、微量ながら確実にゼログライジスの体力を削り取っていた。
 しかし、ゼログライジスは街をも一瞬にして消し炭へと変える強力な一撃を有している。この圧倒的な差にポーラは背筋に冷たい物を感じるのだった。

 追い詰められていく彼らの姿に、クエイド達共和国母艦の中の面々に動揺が走り始める。
 ヴィー! ヴィー! ヴィー! ヴィー!
 そんな中、通信の受信音がけたたましく鳴り響いた。すぐにそれを受ける通信士だったが、どうにも様子がおかしい。
「なにがあった?」
 クエイドの言葉に通信士は歯切れ悪く返答する。
「それが、帝国軍を名乗る回線からの通信でして……」
「なんだと……?」
 クエイドは通信を変わると、真剣な表情で話し始める。
「ゼログライジス協定の5条は理解している、だが……」
 クエイドの困惑した顔にボルトが目を向ける。
「なに、そんなことが可能なのか……? わかった。こちらも可能な限り協力させてもらう」

 ゼログラジスが放ったテイルレーザーがレジェンドブルーをかすめ、背後のビルを崩した。地面はクレーターだらけになり、気を緩めればそれに足を取られ致命になりかねない。時間の経過とともに状況はみるみる不利なものとなっていた。
 ゼログライジスの動きが止まる。こちらがどう動くか観察しているのだろう。それは強者の余裕か、それともこちらの攻撃を誘っているのか。どちらにせよ、リュークにとって腹立たしいことには変わりなかった。操縦桿を強く握りしめ、呼吸を整える。一瞬でも隙を見せれば、その瞬間が最期になりかねない。息と共に過剰な緊張感を追い出していく。

 今もこうして全員が生きていることは、奇跡に他ならない。それ程までに敵との戦力差は圧倒的であった。これを覆す方法は未だ見えていない。それどころか、ゼノレックスのエネルギーは既に切れかけ、まともに動くことすら適わなくなってきている。それは、あの3機のバーニングライガーも同じことであった。
 一方、ゼログライジスはといえば胸部装甲を破壊されコアが剥き出しになりながらも、その力は微塵も衰えていない。

 汗がバイザーの中を伝う。死がすぐ傍まで迫っていることが否応なしに感じられる。こちらがいつまでも動かないことに業を煮やしたのか、ゼログライジスは深紅の瞳でこちらを睥睨すると、胸部を展開させる。原始解放を行うつもりなのだろう、コアにエネルギーを充填し始める。
 それを阻止するべく、ゼノレックスは体を起こそうとするが、力を失ったかのように再び地面へと伏してしまう。ここまでか、とリュークが奥歯を噛みしめたその時であった。

「待たせたな」
 通信と共に、青いライオン種のゾイドが姿を現す。
 それは、ここにいるはずのないレジェンドブルーであった。
「なぜ、お前が……?」
 リュークはまだ状況を呑めていない。
「ゼログライジス協定5条の緊急共闘が適用された。両軍補給を受け取られたし!」
 レジェンドブルーは背面に搭載していた5本の筒を射出した。
 ミサイルのように飛翔するそれを見てブレイズは理解した。
「バイタルチャージャーか……!」
 それは未曽有の事態を前にして帝国軍が提供したものであった。共和国軍はレジェンドブルーによる強行輸送を担当した。

「コリンズ隊長の計らいか…流石だ!」
 ブレイズは満身創痍の機体を飛来するバイタルチャージャーに同調させる。火花を散らしラッチへ接続される。

「帝国軍の兵装が、こうもスムーズに……」
 自機にも滞りなく接続された事にリュークは驚く。元からゼノレックスへの接続も視野に入れて開発されていたのではないかとさえ思えた。エネルギーは急速に充填されていき、ゾイドたちは生気を取り戻していく。
 操縦桿を通して…いや、シートに座しているだけでゾイドたちが闘争心を高めていくのが伝わってくる。
「腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったもんだ」
 折れる寸前で支えられたことで心の幹が一回り太くなった実感に思わず笑みがこぼれた。それは“これからだ”といえる状況になったことに対する希望に対してこぼれた笑みと言えた。
「コアに向かって一斉攻撃! エネルギー充填中の奴は動きを止めている!」
「ヴォオォオオオオオオオオオ!」
 ゼログライジスの悲鳴が響く。剥き出しになっていたコア部、それも必殺の原始開放のためにエネルギーを充填している最中に直接攻撃を受けた。帝国共和国両軍の地球外ゾイドからの反撃が無くなるのをうかがってからの原始開放の発動であったはずだった。状況を理解し、対応する。無敵の巨竜が力に加えて知性を見せた行動だった。しかし、その知性は人間の方が一枚上手だったといえる。

 ゼログライジスが限界を迎えているのを認識したリュークたちは攻撃を更に激しくする。
 銃砲撃の雨にゼログライジスの体が削れていく。しかし、動きこそ鈍くなれど一向に活動を停止する気配が見えない。いずれまた自分たちも限界を迎える。

 その事に違和感を覚えたブレイズは、攻撃が生み出す煙の中でゼログライジスの体が僅かに光っている事に気付いた。その光は足元から全身に脈動するように登って見えた。その足元には先の戦闘で破壊され地に伏しているゼロファントス。仲間のゾイドの屍からエネルギーを吸収していたのだ。
「バイタルチャージャーの真似をしているというのか……」
 ゼログライジスの知性が人間のそれにもう一枚被せてきた。エネルギーを吸収したゼログライジスの瞳がもとの光りをとりもどす。

レジェンドブルーシザースユニット&
バーニングライガー

「まだいけるか、帝国の赤い獅子…?」
「当然だ。まだお前たちとの決着をつけていないからな」
 リュークの問いにブレイズが返す。
「青い獅子は専業の運び屋ってわけじゃないんだぜ…」
「ハッ! 笑わせるなよ」
 割って入るマンジェルの言葉をハンスが鼻で哂う。
「最初のゼログライジス戦役の時も運び屋のライガーが決め手になったっていうわね」
「なっ!」
 続くポーラの返しにハンスがたじろぐ
「砲撃では埒が明かん、奴のコアに飛び込むぞ!」
 これだけ軽口が叩ける大物揃いだ。いい仲間を持った。ブレイズはそう思う。
「俺に続け!」
 リュークはそう叫ぶとゼログライジスのゾイドコアに向かって跳躍した。

 ゼログライジスもすかさず迎撃をはじめる。全身の砲門をすべて開放なりふり構わず斉射する。インフィニティミサイルが、空から雨のように降り注ぐ中、リュークたちがその合間を駆け抜けながら距離を詰めていく。コアはまだむき出しのまま。これまでの攻撃が功を奏したのか、元の胸の中に戻せないでいるようだ。
 敵を翻弄するかのように多角的な攻撃を仕掛ける彼らと、圧倒的な力を以てそれを潰そうとするゼログライジス。
 死と隣り合わせの状況に晒され続けた彼らの集中力は極限まで高められ、それにあてられたかのように、ゾイドたちもまた本来の能力を超えた力を発揮し続ける。
 もうそれしかなくなってきたのか、威嚇なのか、単に興奮なのか、ゾイドたちの咆哮が鳴りやまない。個別に呼び合うようなそれはやがて聞き分けることのできない轟音となって空に大地に、地球に響いた。

© TOMY

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